8 「魔女に嫌われる私と突然のイケメン登場で、もうわけがわからない」
8月になりましたので、月一更新です。
思いがけず時間が作れたので2時間ほどで書き上げたものですが、よろしくお願いします。
多方面での新キャラ登場です。
私とカイルは、魔女エルステッドの家に招待されて入って行った。
家の外観からわかってたけど、内装もとても素敵で私は思わずきょろきょろと細部を見て回ってしまう。
こじんまりとした木造一軒家の中身は、魔女特有と言ったらいいのか。棚がたくさん置かれていて、そこには本棚を始め、薬品の瓶類が陳列された棚や、植物専用の棚など様々。
しかもこの辺はエルステッドが女の子だからかな。
彩りとか、そういった色使いがカラフルで。しかも別に色合いで部屋のインテリアがガチャガチャと喧嘩をしてない配色がされていて、なんていうかこう、理想の部屋だ! さてはこいつ、センス良いな?
可愛らしい色使い、小物、絶妙な具合で配置された観葉植物。いやこれは仮にも魔女だから、調合とかに使うものなのかしら?
そんな風に私がきょろきょろしてる間に、二人はテーブル椅子席にすでに腰掛けていた。
「まぁ座ってよ。今、お茶出すから」
じゃあなぜ座った?
そう思った私の目の前でエルステッドはさっきまで持っていた杖から、持ち運びに便利そうな短い杖に持ち替えていて、それの先っちょを円を描くようにくるくるっと振った。
すると奥の方から物音がしたので視線をやると、テーブルの高さ程の機械人形が動き出してお茶の用意を始める。
「ゴーレム?」
「そ、私が作ったの。すごいでしょ」
「へぇ〜、動力は?」
「私の魔力に決まってるでしょ」
自分に出来ることは色々試したりして来たけど、ゴーレムを見たのは初めてだった。
丸っこい可愛らしいフォルムをしていて、動きもコミカルで、なんだかマスコットみたいに見える。
しばらくゴーレムの動きを眺めていたいところだったけど、お気に入りと化したオリハルコンを手のひらに収めつつ手で撫でたり頬擦りしていたエルステッドが話を戻した。
「んで? 話っていうのはミーアのこと?」
じろりと、私の膝の上でゴロゴロ言いながら丸くなっているアメショーグリマルキンを見ながら問うエルステッド。私はなんだかいたたまれない気持ちになりながらも、猫は大好きなのでついなでなでしてしまう。
いや別にこれは相手を煽ってるわけじゃないからね? もふもふで触り心地いいのが悪いんだから!
「えっと、グレンゼ村の村長さんや他の村民の方から依頼を受けてやって来ました。聞くところによると、このグリマルキン……ミーアに攻撃された村民が被害届を出しています。村の雰囲気から、これが一度や二度ではない様子でしたし。それにここにいるカイルのお祖父さん、ゴッツさんもグロッケン山にグリマルキン退治の為に入ってから行方が知れないーーということなんです」
神妙な面持ちで、真剣な口調で話したにも関わらずエルステッドは興味なさそうな顔で明後日の方向を向いていた。私が軽くイラッとしてるところに、ゴーレムが淹れてくれたお茶が来てすぐさま和んでしまう。ゴーレム可愛い。
「魔女様、じいちゃんがどこにいるのかわかりませんか」
「知ってても教えなーい。私、超絶イケメンの言うことしか聞かない呪いにかかってるからー」
菓子皿に入ってたクッキーをつまみながら、エルステッドは答える。
自分本位で、精神面はまだお子様。
聞きたいことは他にも山ほどあるけど、まずはゴッツさんの安否確認が最優先になるわよね。
「エルステッド、申し訳ないけど私達はあなたのわがままに付き合うほど暇じゃないの。ひとまずグリマルキンに関しては、私がテイムしたから解決ということにするけど。カイルのお祖父さん、ゴッツさんを無事に村へ帰さないと私の依頼は達成出来ない」
私がエルステッドの飼い猫であるグリマルキン・ミーアをテイムしたと聞いて、癪に触ったのか。
あからさまにむすっとした顔になったかと思うと、ゴーレムが淹れてくれたお茶を一気に飲み干して乱暴にカップを置く。イライラしてるのはお互い様なのよ。
私はもう一度、念押しした。
「オリハルコンをあなたに譲渡する代わりに、グロッケン山の探索中は絶対に邪魔しないでもらえるかしら」
「はぁあ? 私の家で話をする為にオリハルコンくれたんでしょ!?」
「私は、話を聞いてくれたらあげる、って言ったの。家に入ってちょっと会話した程度で、オリハルコンの価値と釣り合うわけがないでしょう? 私が提示する話には、おおよそでいいから受け入れてもらいます」
「……おおよそ?」
「そうです。すべからくと言わない辺り、良心的だと思いますが」
私はにっこり笑って愛想を振りまいたけど、やっぱり同性には逆効果なのかしら。
あからさまに不機嫌な表情になると、不遜な態度に早変わり。
「その気持ち悪い顔やめてよね」
気持ち悪い、はさすがにひどくない?
「なんていうかこう、上手く言えないけど。あんたの顔も何もかも、作り物な気がして仕方ないのよね。本能的に拒絶しちゃうのよ」
私はその言葉に心臓が飛び出そうになるほど驚いた。
今まで誰にも悟られることなんてなかったのに、ここに来て私がひた隠していた秘密の断片がエルステッドに言い当てられたように感じて、冷や汗が出る。
私が話題を逸らそうとした時、エルステッドの方から逸らしてくれた。一番言いたいことは、むしろそっちらしい。
「それに、あんたは私の恋のライバル! いいえ、天敵なんだから毛嫌いもするでしょ! あーっ、思い出しただけではらわたが煮えくり返りそう!」
「ちょちょっ! 待って、それこそ一体どういうことなの!? ちゃんと説明してくれないとわからないんですけど!」
慌ててストップをかけようとしながらも、私は心の中で「ナイス!」ってガッツポーズしてる。
すっかり話題が逸れて、カイルはクッキーとお茶を飲むだけの置き物と化していた。
「私の占いに出たの! あんたが! 私の愛しいスヴェン様を! 奪うって! このダブル泥棒猫っ!」
「スヴェンって誰ー???」
もうわけがわからない!
一人で勝手に話を進めて混乱させないでよ!
私はグリマルキンを大人しくさせて、ゴッツさんを無事に村に帰して、エルステッドの魔法を利用出来たらいいなぁって思ってるだけなのに! これじゃあ拗れる一方だわ!
ぎゃあぎゃあと女同士で言い争っていると、裏口と思われるドアが開いたと同時に男性の声がした。
「なんだ、お前が同性を家に入れるなんて珍しいな、エル。友達か?」
「おお、カイル! お前こんなとこまで何しに来た?」
二人の言葉に、場が一瞬静まり返る。
えぇっと、理解が追いつかない……。
「スヴェン様ああああ! こんな醜女、友達でもなんでもないですよおおお! スヴェン様のお目汚しになるから、可愛い私だけを見つめててくださあああい!」
「じいちゃん!? 無事だったのか、っていうか。スヴェン様も一緒だなんて聞いてないけど」
ゴッツさん? なんで?
ていうか、サラツヤ黒髪長身イケメンの人は誰えええ!?
読んでくださり、ありがとうございます。
やっとイケメン枠の登場です。
次回をお楽しみください。




