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3 「猟師カイル」

作者の悪い癖なのですが、本題がなかなか始まらないのはご愛嬌ということで。

アメリと同じ気持ちで「スローライフ早く!」と思いながら、読んでくださると幸いです。

よろしくお願いします。

 猟師だと思われる若者のカイルが、私達の住む建物まで案内してくれた。

 基本的には無口そうな彼に、私は色々と話しかけてみる。少しでも距離感を縮めようとする私の精一杯の足掻き、みたいなものだ。


「カイルさん、でしたっけ」

「カイルでいい」

「その毛皮、銀の毛色に大きな体躯……。オズワルド国でも珍しい品種の銀狼、ですね」


 私の言葉にカイルがピクリと反応した。

 銀狼、主に山地でしか見られない狼の類で、集団生活を好む普通の狼とは違い、銀狼はごく少数のコミュニティを作って生活している。数が少ないから統率もしっかり取れている為、銀狼に狙われた獲物は確実に仕留められてしまう。

 だからこそ銀狼を狩る、という技術は相当なもの。カイルが頭から全身にかけて被っている銀狼の毛皮には、銃痕の数が非常に少ない。

 それはつまり相当な腕を持っていないと、まず狩り取ることが不可能に近い。狩りの技術そのものが、相当な熟練者たる証となる。これだけ状態の良い銀狼の全身毛皮ともなれば、オズワルド国の都市部でオークションにかけたら、きっと五百万はくだらないだろう。


「すごいですね。カイルが狩ったんですか?」

「……じいちゃんだ」

「凄腕の猟師さんなんですね、カイルのおじいさんは。それ程の腕前をお持ちなら、是非一度お会いしたいです」

「……」


 銀狼の話になって反応があったということは、自分の職業である狩りに関する話題には食い付くタイプだと見て話を広げようとしたけれど。

 また無口になってしまった。もしかしておじいさんの話はタブーだった?

 まずい、ここで心の距離を開いてしまうわけにはいかないわ。

 私が猟師関係の話題で、他に何かないか考えていると、後方で馬を誘導していたリュカがあっけらかんとした口調で会話に入ってきた。


「え、もしかしてカイルのじいちゃん、亡くなったとか?」

「リュカ! 失礼にも程があるわよ!」


 びっくりした。なんでこいつ、いきなり爆弾投げつけて来るわけ? バカなの?

 私が何か言い繕う為にあたふたしていると、カイルはさほど気にしてないのか。初めて会った時と変わらない、むすっとした表情のままリュカの方へ振り向いた。


「生きてるよ。現役過ぎて、こっちの寿命が縮みそうになる程だ」

「そうなん? 急に落ち込んだ感じになるから、嬢ちゃんがやらかした〜って思ったわ」


 嬢ちゃん? あんたまさか、この先ずっと私のこと「嬢ちゃん」で通すつもり?

 そんなことより、リュカの言葉でカイルを不快にさせなかったことは幸いだ。


「落ち込んだわけじゃない。俺は猟師だって言ってないのに、猟師前提で話を進めるから……」

「え、だって。まずその格好を見れば、誰だって猟師かな〜って思いますけど?」

「せやな、狼の毛皮を被って猟銃持ってんねやったら、まずそう思うやろ?」


 なぜか、しばしの沈黙。あ、これ私達……何かやっちゃいましたか?

 沈黙の後、カイルが小さく息を吐いて、また前を見る。ボソリと呟くように、でも私達にしっかり聞こえるように口にした。


「そういえばお前達、都会人だったな。こんな格好、珍しいか」


 いや、珍しいとは言ってないはずだけど?

 ここで失敗しちゃったら、村での安心安全まったりスローライフに亀裂が!


「まぁ、でも……合ってるぜ。俺んとこは猟師をやってる。グレンゼは広いから都会の人間の感覚的にはどうか知らないが、俺の家とお前達の家は一応隣同士だ」

「あ、隣人さんでしたか。よろしくお願いします」

「ほな美味しいお肉とかも、お裾分けしてもらえるんやろか? 楽しみやなぁ」


 こいつ、また失礼なことを……っ!

 こっちは相手の顔色見つつ、機嫌を取りつつしてるってのに!


「……グレンゼでは基本、自給自足だ。自分達の家で採れた物を交換したりして、互いに支え合って生活してる。お前達が何を提供するのかは知らないが、交換する物があるならいつでも狩って来た獲物と交換してやるぜ」

「そん時は解体済みがええんやけど……」

「あぁ、交換する物がそれに見合うなら、しっかり解体しといてやるよ」


 助かったぁ〜、の顔してる場合じゃないわよ。

 リュカの終始無責任な笑顔でこっちはハラハラしつつ、グレンゼでの生活に必要な情報を得られたのは何よりだ。

 スローライフに自給自足は欠かせないわよね、思った通りだわ。こっちはそれも前提で移住を決意してるんだから、舐めてもらっちゃ困る。

 どうせグレンゼの人達は「自然の怖さを何も知らない、何不自由なく都会で暮らしてきた無知な若者が、のんびり暮らせると思って移住してきた」って思ってるところでしょうよ。

 でも私は、そんな移住ライフ憧れ都会人なんかとは違うんだからね。これから少しずつ、ここでの生活の様子を勉強しながら、のんびりまったりスローライフを目指す!


 私が心の中でそんな決意を固めていると、カイルが前方を指さす。

 指をさされた方向に注目する、私とリュカ。


「あれがお前達が住む予定の家だ。築数十年は経過してるが、これまでの悪天候にも耐えてきた頑丈な作りになってる」


 そこには二階建ての木造の家があった。

 私が想像していたより大きい。家の大きさだけで言うなら、()()()()()()()()それなりにお金を持ってる家庭位はあるだろう。

 王都にあった貴族の屋敷に比べたら相当に小さいだろうけど、こういった辺境の村では大きめの家になるんじゃないかな?

 リュカが言ってたような、もっと小さい家とか……。最悪、小屋とか想像してたんだけど。

 これはかなり高待遇な物件では?


 この家が、私の待ち望んだ『スローライフを送る為のマイホーム』になるわけね!

 幸先いいんじゃない!?

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

登場キャラの外見の描写、もう少しあった方がいいでしょうか。

やはり物語を読み進める上で、キャラの個性は大切だと私も思っております。愛着持ってもらえるよう、精進します。

次回もよろしくお願いします。

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