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2 「第一村人発見、したけど……」

主人公アメリは早くスローライフを始めたいと思ってますが、私も早く始めてくれと思ってます。

よろしくお願いします。

 村の出入り口となるであろう場所に、リュカが馬車を停めた。

 別に柵で囲われた場所じゃない。木製の看板に『グレンゼ』と、ほぼ掠れて読めないけれどそう書いてあったから。多分ここが村の玄関なのかなぁ、という感じでリュカも停めたんだと思う。

 王都から書状は届いているはずだ。旅も順調だったし、予定より特別遅れた到着というわけでもないはず。だけど、誰もいない。村人からの出迎えを期待していた方が悪いんだろうけど。


「だ〜れもおらへんやん」

「そうね、というか……いなさ過ぎ?」


 グレンゼが保有する土地面積と人口から言えば、見当たらなくても不思議じゃない……と思う。

 オズワルド国の所有面積、それぞれの町や村の土地面積ランキングの中でもグレンゼは上位に位置している程だ。

 ここ数年はその記録もあまり更新されていないようだけど、領地面積が増減することなんて滅多にない。

 だからこの数字は確かなはず。それだけ広い土地を持っているんだから、村人達の家がぽつぽつと広範囲に点在していても、きっとおかしくない。

 だから住民はきっともっと遠くにいるか、仕事中で留守にしているだけなんだ。……と思うようにした。


「でもせめて村長さんとかがおらへんと、僕達がどこの家に住んだらええんかわからへんで? まぁ姫さんに対して、掘っ立て小屋を当てがうとは思えへんけど」

「リュカ、姫さんじゃないって言ったでしょ。せめて名前で呼んでくれない?」

「え〜? 僕、女性を名前で呼ぶんは彼女か嫁さんだけって決めてんねんけど……」


 ここで変なこだわり見せんな。でもまぁ、このリュカに名前を呼び捨てにされるの想像したら、流石に気持ち悪い。その辺は、つい同意してしまう。


「わかったわよ。別に名前で呼ばなくていいから、姫さんだけはやめてね?」

「しゃあないな……」


 それはそうと、本当にここから先どうしたらいいんだろうと途方に暮れる。

 村の中を駆け回って、第一村人を発見しなくちゃいけないやつ?

 イメージ的に、村に着いたらその辺を走り回って遊んでいる子供が、私達を見つけて「お姉ちゃん達は誰?」って声をかけられるのがセオリーだと思ってたんだけど。

 村人どころか動物も見かけない。過疎化寸前レベルの人口とは聞いていたけど、これは流石に……と思っていたら遠くから誰かが歩いて来るのが見えた。


『お〜い!』


 私達二人はやっと見つけた第一村人に向かって、大声を出して手を振った。

 やっと先に進めると安堵したのも束の間、村人の姿がだんだん肉眼で確認出来るようになってきて、私達は手を振るのをピタリとやめた。

 こちらへ歩いて向かっていた村人は、銀色の狼の毛皮を頭から被っている。毛皮と言っても、ジャケットのように着る物やマントのように羽織っているわけでもない。狼の頭が残った毛皮、つまり全身の毛皮を頭から被っているせいで、遠くから見れば不恰好な狼がゆっくりとこっちへ向かって来ているようで、とても異様だった。

 その村人がこちらへ向けて猟銃を構えたものだから、私達は今度は両手を真上に伸ばして降参のポーズをする。


「わああああ、ちょっと待ってください! 違うんです! 侵入者とかじゃありません!」

「王都から手紙来てへんかった? 僕達、ここに移住する為に来ただけやねん! 勘弁してや!」


 おい、護衛なんだから私を守りなさいよ。なんでリュカも真っ先に降参してんの。とか思っていたら、相手が猟銃を下ろしてくれた。通じた?

 それでも私達はビビったまま、相手がこちらへ歩いて来るのをしっかり目で捉えながら警戒を緩めない。

 すると狼の頭部で見えなかった相手の顔が、ようやく拝めた。村人は狼の毛皮の頭部を、まるで帽子を外すようにひょいと片手で上げる。若い男だった。少年と青年の間のような、それ位の年代。

 焦茶色の髪は無造作で、後ろ手に一つ結びしている。肌はしっかりと日に焼けていて、少し浅黒かった。キリッとした太めの眉毛と鋭い眼光をした眼差しは、只者じゃない雰囲気を帯びている。

 良く見ると頬や額には、うっすらと傷が残っていた。持っている武器とその格好から、恐らく猟師か何かの仕事をしているんだろうと推察出来た。


「あんたらは? 村長が言ってた移住者か?」


 声は少し高めだったけど、声変わりが済んだと思える程度には子供っぽさが無かった。

 私は慌てて問われたことに答える。


「はい、私の名前はアメリ。こっちの糸目で変な言葉遣いしてる人は、リュカ。グレンゼに移住する為に来ました。よろしくお願いします」

「糸目で変な言葉遣いって紹介の仕方、ひどない?」


 私は精一杯の笑みを浮かべて、敵意ゼロアピールをする。大体の男性ならば、この微笑みを向けられればコロッと騙されてくれる。まぁ、私の隣にいるこの男にはあんまり効果がなかったみたいだけど。

 やっぱり本人の好みとかも左右されるのかしら?

 ニコニコと微笑んでいると、相手は私のことを頭の先から足の先まで舐めるように見る。

 でもその目つきはいやらしいものじゃなくて、まるで品定め……。

 私が本当に信用出来る人間かどうか、それを見極めようとしているような感じだった。

 最初が肝心とはいえ、まぁ……あまり良い感じはしない。


 第一村人が持っていた猟銃を肩にかけて、それからぶっきらぼうに話しかけて来た。

 どうやら信用してくれた?


「村長から聞いてる。王都からここに移住したがってる変人がいるって」

「変人……」

「俺の名はカイル、じいちゃんと二人でこの村に住んでる」


 私はその自覚があるけれど、巻き込まれている自分まで変人扱いされたことにショックを受けているリュカは、残念そうに肩を落としていた。

 グレンゼ村の猟師カイルが、くるりと踵を返す。顔だけ振り返り、言葉少なだが案内役をしてくれるようだ。


「付いて来い。お前達が住む家に案内してやる」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「変人……」


 リュカはそうぶつぶつと呟きながら、重い足取りで馬車を引いていた馬がいるところへ歩いて行く。馬が咥えているハミに接続されている手綱を持って、馬車ごと馬を誘導した。

 村に入ってなお、悪路は続く。ある程度、平坦な道のりが幸いとでも言うべきか。

 

 私が待ち望んでいたのんびりまったりスローライフに、ほんの少しばかり暗雲が差し掛かって来たように思えて、内心バクバクだった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

アメリの外見は超絶美少女です。

あらすじで明かしてますが、アメリに一体何が起きてこれほど恵まれすぎる生まれとなったのか。

のちのちわかるようになります。

次回もよろしくお願いします。

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