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11 「天与スキル・ドラゴンテイム」

不定期更新ですみません。

こんな風にモチベが少し上がった時に、書いて更新させてもらいます。

 どうして隣国エクレアールの国王がこんな場所にいるのか、グレンゼ村の住民と親しいのか。

 そういうのはひとまず置いておくしかない。

 ドラゴンよ、それをなんとかしないことには何も解決しない。

 今の私は村の住民に受け入れてもらうことが最重要なんだから!


 私は両目を閉じて、自分の所持スキルを確認した。

 この世界の住人が持つスキルは一人につき一つ。

 表向きには私のスキルも一つだけ、ということにしている。


「わかったわ。とにかくこの事態を丸く治めるには、そのドラゴンをなんとかしたらいいわけよね?」

「簡単に言ってくれるが、ドラゴン狩りからここまで逃げ回るような奴だぞ」

「一筋縄じゃいかないのはわかってる。だけどここは私に任せてくれない? 元々そういうつもりでここまで来たわけだし」


 私はエルに干し肉を出来るだけたくさん要求した。

 それはドラゴンを追ってここまで来たスヴェンが、ドラゴンをおびき寄せる為にと前もって用意していた干し肉と。

 ゴッツさんがドラゴン探しに必要になるだろうと、狩った動物の生肉をもらう。

 干し肉はまだしも、生肉は……さすがに色々とあれよね。

 みんなが見てない所で一旦凍らせて、ドラゴンにあげる時に解凍すればいっか。


「おい、本当にお前一人で大丈夫なのか? 護衛は?」

「必要ないわ。村人であるカイルやゴッツさんに、怪我を負わせるわけにはいかないもの」

「お前、ドラゴン相手にどうするつもりなんだ」


 当然だけど質問攻め~!

 詳細を話すわけにはいかないから、私はとにかく誤魔化しまくる。

 みんなの目がものすごい勢いで怪しんできてるけど、仕方ない。

 今は本当に説明する時間すら惜しいんだから。


「私が無事に戻ったら、全部説明するから。今はとにかく行かせてちょうだい。何かあっても人質としてリュカを置いてるんだから。好きにしたらいいわ」

「意外に薄情だな」

「そんなことないわよ? むしろ面倒な護衛相手がいなくなって、自由の身になったで~とか言ってそうだもん」


 本当に言ってそうでなんかムカつくけど、私は胸の奥に芽生えたどろどろした黒い感情を更に奥に引っ込めて、エルの家を出る。

 ドラゴンが潜んでいると思われる場所は、ここから更に山頂の方だという。

 私はそちらへ向かいながらちらりちらり。何度も後ろを振り返りながら、誰も後をついて来てないか確認した。

 見られるわけにはいかないものね。

 十分ほど歩き続けてから、私は一旦立ち止まってゴッツさんからもらった生肉を袋から取り出す。血の臭いが鼻につく。


「氷結魔法、アイスコールド」


 凍てつく氷が生肉を覆っていく。これで臭いも、腐敗の心配もない。

 ふぅと息を吐いて、また袋に入れ直そうとした時だ。

 背後でがさりと音がして、今の光景を見られたと瞬時に悟った。

 私は振り返りながら、即座に頭の中で言い訳を用意する。

 だけど草陰から出てきたのは、人間じゃなかった。

 ぬっと現れたそれは真っ赤な鱗をした巨大生物、蛇やトカゲのような鋭い眼光をしたドラゴンだった。


「……えっと、ドラゴンってこの子でいいのよね? まさかこの山に二匹も三匹もいないわよね?」


 外見的特徴を聞いておくべきだったと今更ながらに後悔!

 でももう遅いから、とにかくこの子かどうかはさておき!

 グレンゼ村周辺にドラゴンが頻繁に出没するのは良くない、非常に良くない。

 私ののんびりまったりスローライフに、ドラゴンの脅威は必要ない!


 私はさっきの生肉を早速解凍する。

 炎の魔法で瞬間解凍、とまではいかなかった。珍しく魔法に失敗。動揺してるせい?

 とにかくスヴェンからもらった干し肉と、ゴッツさんからもらった生肉だったもの……焼き肉を地面に置いて2、3歩下がる。

 ドラゴンは私の一挙手一投足に注意を払っているようだった。

 恐らく攻撃範囲に入ってないから?

 多分これ以上近付いていたら威嚇行動を取られるか、ドラゴンの吐く炎のブレスで攻撃されて一巻の終わりだろう。

 私は一泊置いて、再び自分の中にあるスキルを模索する。

 ……あった。今ここで必要なスキルが。


『私の名はアメリ、見ての通りただの人間。落ち着いて聞いて欲しい』


 私はドラゴンに話しかけた。

 見た所このドラゴンはまだ幼い。何百年、何千年と生きるドラゴンなら頭の中で思い描くだけでテレパシーみたいに対話が可能だったろうけど。

 このドラゴンにそんな能力はまだないはずだ。

 あればとっくにスヴェンと対話でもなんでもしてたに違いない。


『驚いた。ドラゴンと会話しようと考える人間がいるとは……』


 幼いとは言っても、人間の年齢に換算すれば百歳位は行ってるだろう。

 さすがに赤ちゃん言葉とまではいかない。


『私はあなたを助けに来ました。お困りならば力になります』

『人間風情が、我を? 冗談も大概にしろ』

『冗談ではありません。その証拠に、あなたへ献上品も持って参りました』


 目の前に置かれた肉の山を見て、ドラゴンの眼光が更に鋭くなる。

 これは逆に怒らせてしまったのかもしれない。


『餌付けしようと言うのか、小娘……』

『いいえ、友好関係を築く為のプレゼントです』


 威嚇の体勢に入ったドラゴンに、私は決して怯まない。

 両翼を大きく広げ、ばさりと突風を巻き起こす。

 周囲の木々がなぎ倒され、地面に置かれた肉は呆気なく吹き飛んでいってしまう。

 私は姿勢を低くして、魔力によるバリアを前方に張った。


『ほう、少しはやるようだ。小娘、貴様は魔術師か何かか……』


 私がドラゴン言語で話しかけ、更に防御魔法を展開したことによって、ドラゴンは私が魔法使いや魔術師の類だと当たりをつけた。

 私は笑む。その笑みがドラゴンには気に入らない笑い方に見えたらしい。


『ならばこれならどうだ!』


 そう叫んで、ドラゴンは喉の奥を鳴らして炎の息を吐いた。

 豪炎が私めがけて放たれ、それでも私は回避行動を取らずにその場で魔法を展開させる。


「水の精霊、ウンディーネ! 水の結界!」


 炎の相克は水だ。

 私はスローライフ計画を進行している間に、水の精霊ウンディーネとの契約をすでに済ませている。

 ドラゴンが吐くファイアブレスを防ぐことが出来るのは、水の元素を司るウンディーネの力以外にない。

 美しい女体が現れ、ファイアブレスをあっけなく弾き飛ばす。

 水は優しいイメージだ。回復や、バフといった補助魔法の基本となる事が多い。

 それ故、水の精霊ウンディーネも穏やかに、たおやかに、微笑みながら私を守る。


『バカな……っ? 貴様は魔術師だったはず。我が知る限り、人間が魔術と精霊術の両方を行使することなど不可能なはずだ……っ!』

『もう一度聞くわ。私はあなたを助けたい。それだけよ』


 今度は脅迫めいた言い方をして、ドラゴンに問いかけた。

 私はほんの少しだけ、自分の中にある魔力を開放する。張り詰めた空気になって、ドラゴンに緊張感を与えた。


『あなたが応じるまで、私はこの場から動かない。あなたが動くことも許さない』

『貴様……、何者だ? 人間じゃ、ないのか』


 その問いに私は笑いそうになった。

 人間かと聞かれれば、私自身は「ノー」と答えるだろう。

 自分でも有り得ないと思うもの。

 転生の時に授けられた女神の祝福は、私を人間という枠から最も遠い存在へと生まれ変わらせた。

 私自身が願ったこともそうなんだけど、それにしても盛り過ぎだ。


 あらゆる魔法を扱えること。

 あらゆる武器を扱えること。

 無限の体力に、無限の魔力。

 あらゆる知識を吸収する頭脳。


 それらを与えられた私は、もはや人間とは言えない。

 この世界の人間に与えられるスキルは、一人につき一つだけ。

 私はそれを生まれた時から、ひた隠して生きてきた。

 そうと知られれば、どうなるかわかったものじゃない。

 私はただ幸せに暮らしていきたいだけ。

 前世の時に夢見た、田舎でのんびりまったり、苦労することのないスローライフを送りたいだけ。


「ファイアドラゴン、悪いけどあなたのこと……手懐けさせてもらうわ」


 ドラゴン言語を捨て、私は素早く駆け抜け、ドラゴンに飛びついた。

 暴れるドラゴンだけど私はしっかりとしがみついて、ドラゴンの耳元に囁く。


『よしよし、いい子。私に全てを委ねなさい。今日から私が、あなたのママよ』

『……っ! 小娘……っ、ドラゴンテイマーでもあるのか!?』

『よーしよし、私が可愛がってあげるからね』


 テイムは魔力による強制と、慈愛による。

 相手がそれに身を委ねれば成功だ。

 本来なら正式な呪文だったり、お決まりの言葉があるんだけど。

 私は自己流で、このやり方でテイムする。堅苦しい言い回しは好きじゃない。


 威嚇していた両翼と尻尾はうなだれ、ドラゴンは地面に伏せた。

 私は地面に降り立ち、頭を撫でてやる。


『小娘……、いや……アメリよ。お前は一体何者だ……? これほどの力を持つ人間など、この世に存在しない……。いや……、存在してはならない程に強大な……』


 すっかり大人しくなったドラゴンに、私は自嘲気味な笑みを浮かべて答える。

 これは本音の、私の本心から出る笑顔だ。


『慈悲深い女神様から嫌がらせを受けた、ただの小娘よ』


 そう、全てはあの時……。

 私が日本のブラック企業で超激務会社員をしてて、過労死した後に出会った女神のせい。

 高望みが過ぎた私への罰かもしれない。


 私のことを哀れに思った女神様が、私に誰よりも恵まれたスキルを授けた。

 そしてそのスキルのせいで、新しく生まれ変わった私が……。

 アメリ・ルイーゼ・オズワルドが、一生休まらない人生を過ごさなければいけないという地獄を生きることになった原因になるなんて……。

読んでいただき、ありがとうございます。

のろのろしてますが、どうにか完結はさせたいと思います。

よろしくお願いします。

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