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08 簡単な食事会は味が濃い!

「ハッハッハ!懐かしいな。」


ダンドールとクラインが、騎士学園時代の話しで盛り上がっている。どうやらこの2人は同期の様だ。


「模擬戦のダンドール殿の、あの神速の抜刀術は忘れませんぞ!」


「あれか!刃が無い柄だけで振り抜いた試合か!」


クラインは懐かしむ様に話す。


「模擬戦だとしても、お前達に向ける刃など…持ち合わせておらん!」


この言葉に、公爵家の器の違いを感じたそうだ。もし反乱や戦争が勃発したら、クラインは公爵家に組いると、あのとき思ったそうだ。


だから、娘に公爵家領内で学問に励んで貰いたいと思ったとクラインは熱く語る。


「爺やが、教えてくれたのじゃ!力まかせの刃を向けるのか?先を見据える刃を向けるのか?貴方様が刃を向ける相手は誰ですか?ってな。」


「だから私は…友に刃は向けなかったのだ!」


どうやら、この2人の絆は固い様に見える。


女性陣は、2人の思い出話しを嬉しそうに聞いている。

公爵家の男と侯爵家の男の会話に双方の美しい夫人が

色を添えている。


コマはモラフ様の姿が見当たらないとキョロキョロしている。モラフの席は空席のままだ。


「コマちゃん!キョロキョロして、どうしたのかな?」


ドレアだ!モラフを軟禁した、主犯格のドレアがコマに接近した。


「あ!そうです。モラフから伝言がありました。」


大人達の会話に割って入るかの様な大きな声に広間が静まり返る。


「ドレアお嬢様、伝言とは?」


クラインは嫡子のモラフ様の伝言が気になる様だ。娘が何か失礼な事をしたのでは無いかと……。


「ドレア、伝言とは何じゃ!」


ダンドールの、この言葉のせいで簡単な食事会が一気に濃くなってしまった。


「姉上!コマって可愛くてさ…」


その言い出しにコマは顔を赤くする。


「何か見ていると…ムラムラするんだよね?」


コマはムラムラって何?と隣りの母に尋ねたが返答は無かった。


「でもコマは身体がさぁ〜、お子ちゃまじゃん!」


コマは自身の体付きと周りの大人達の体付きを見比べだした。


「姉上!お前の胸でも良いんだけどさ、やっぱり色々選べる…娼館に行ってくるぜ!」


クラインのナイフが床に落ちてしまった。


「私は必死に止めたのですが…ムラムラの5歳児は、まるで発情した猿の様で、私は怖くなって…」


静まり返る広間に小さな声がした。


「ママ……ショウカンって何?魔法?」


コマの言葉が突破口になれば、まだ良かったのだが……

カミラ夫人は下を向いて何も答えなかった。少し耳が赤く見える。


「最後にモラフは、皆様にこれだけは伝えて欲しいと言っていました。」


ドレアは、渇いた喉に水を流し最後の言葉を伝える。


「もう…我慢出来ない!!」


以上です。そう言って席に座るドレア。自身の演説に、納得した様な表情をしている。


母クレア以外の者達は食事の手が完全に止まっている。

やはり母は強い。モラフの発情にも、全く動じない。

出された料理に舌鼓をうつ。


「5歳児が娼館……。」


何処かで聞いた事がある言葉を発するクライン侯爵。

私が無知なのか?クラインの子は女子が2人。男子は今のところ恵まれていない。侯爵家の領内では男子を望む声も聞こえてはくるが可愛く育ってくれた娘2人に、満足している。


今の男子は…娼館に通うのか?


クラインは頭を抱えて悩んでしまう。


「ママ?……ショウカンってガマンするの?」


カミラ夫人は、引き続き徹底して防御態勢を貫く。耳が先程より、一段階赤みをましている。


食事会の場が混沌としてきた。


クレア夫人は、何も気にせずに料理を食べていく。

ダンドール侯爵は、「別に今日じゃなくても良いだろ」

と、我慢出来ない息子の幼さを悔やんでいた。


「俺なら、今日は我慢出来たが!」


クレア夫人の高速の叩きがダンドール公爵の頭を襲った。ドレアの剣術の才能は母方の血かもしれない。


クライン侯爵は、5歳児の娼館通いが理解出来ない。

(そもそも…入店出来んだろ。5歳児は。…待て待て、ここは公爵家の領内だ。公爵の嫡子なら…可能か!)


答えは…出ないだろう。


そして…1番の被害者は、カミラ夫人だ!

モラフに会いたいコマは「私を娼館に連れて行って!」

と夫人の袖を必死に揺すっている。


母として難しい局面を迎えている。


「バタン!!」


広間の扉が開いた。


話題の中心……モラフだ!


息を切らしながらドレアに詰め寄って来る。


「姉上!何なんですかあれは?酷いです!」


「ちっ…」


舌打ちをするドレアは、あの2人め…しくじりやがって

と、小さな声を出してしまう。


いきなり話題の人物が登場して、皆驚くのだが…そこは公爵が上手く流れを作ってくれた。


「モラフ!娼館で…もう発散したのか?」


この広い部屋で行われていた食事会…公爵家と侯爵家の面々が揃う中…娼館で発散と言う父上。


(お嬢様…またお転婆が炸裂しましたな!)


瞬時に状況を悟ったモラフは、お嬢様の立場を考えて、

自己犠牲の精神で返答する。


「お昼に娼館は営業していませんでした!よって僕は未だ我慢中です!」


(お嬢様や…これで良いのだろう?)


「まあ!」


嬉しそうに、コマが駆け寄りモラフの手を握る。

まだまだ幼い少女だが、その笑顔と優しい瞳は将来この

大陸に名前が響き渡るかもしれない。


あたたかい少女の手の温もりは、縄で縛られていたモラフの手を癒やしてくれた。


「我慢しないで…私で発散して下さい。モラフ様!」


無垢な娘から発せられた言葉に、下を向いていたカミラ夫人は、ブッっと吹き出して椅子ごと後ろに倒れてしまう。


「カミラ〜〜!!」


クライン侯爵の叫びが響く広間。


何とも濃い味の食事会になってしまった。

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