06 お見合い?
「お見合いですか?父上。」
ダンドールの自室に呼ばれたモラフは、唐突に言われた事に驚いてしまう。
「うむ。カダバール侯爵の娘が来年、我が領地のカザリア学園に入りたいそうで、我が屋敷に挨拶に来たいらしいのだが…。」
公爵の領地にある学園だからな侯爵家が挨拶したがるのは、分かるのだが…何故、お見合いが出てくるのだ?
政治的な要素が強い婚約は貴族社会では、良くある事だが…。
侯爵家と見合いするメリットって何なのだろうか?
「私より先に…姉上だと思いますが?」
そうだぞ!5歳児の儂より、お嬢様が先じゃ。15歳なら婚約者の1人位、普通は居るもんじゃ。
「ドレアは……クレアに似て綺麗だが…ほら頑固だろ?」
(頑固は分かるが娘を案じて下され!ダンドール様!)
「モラフが良いんだって言われたのだ!ハハ。お前じゃないぞ…亡くなった執事のモラフが良いんだと言われたよ。」
(お嬢様……儂は幸せもんじゃ!)
「モラフは…もう居ないからな…モラフ以上の紳士を探すには、世界が広すぎるのだ!」
(ダンドール様!儂は今…貴方様に抱きつきたいのじゃ!)
「父上の頼みなら仕方ありません。結果には期待しないで下さいよ!」
ダンドールは、承諾してくれたモラフの肩を掴み喜んでいる。
「分かっておるぞ!お前は、そっち寄りの男だからな!期待はしとらん。すまんが大人の事情に付き合ってくれ!」
(そっち寄り……お嬢様、儂の評価は娼館大好きになってしまったのです。まだ5歳児ですぞ!)
数日前の、夜中の冒険のお嬢様の言い訳を悔やむモラフだったが…本音を言えば…少し行って見たい気も無くはない。
その日の晩、ドレアの部屋に呼ばれたモラフ。
久しぶりに、ドレアの部屋に入ったのだが…何故か部屋だけは何時も綺麗だ。あんなにお転婆なのに…。
ポンポンとベッドの上を叩くドレア。隣りに、来なさいと言う合図だ。そして腕を背中越しにモラフの肩に回す。
「ねぇねぇモラフ。お見合いするんでしょ?」
頷くとドレアは、突然語りだした。
私は、結婚とか無理かな?爺や見たいな人って居ないものね。
(隣りに、おりますぞ!お嬢様。)
公爵家の娘が、これじゃあ…パパもママも悲しむよね?
はぁ…騎士学園を卒業したら、旅をしたいな。色んな所に行きたいの。
(お嬢様や、皆、悩む年頃と言うのがあるのですじゃ)
「モラフ!私が卒業したら…一緒に旅をしよう!」
「考え中にします。僕…5歳だから。」
(お嬢様!お供しますぞ!)
「考え中ね!」
はっきり答えは出さなかったのだが、ベッドに座るドレアは足をバタつかせ…何故か嬉しそうに天井を見ている。
「お見合い…断ってよ!私…1人は嫌だもん。」
なるほど…。お嬢様は、儂を側に置いておきたいのじゃな。儂も、お転婆に付き合えるのは自分だけと自負しております。安心して下され…儂はお嬢様の側にずっとおりますぞ!
「大丈夫だよ!僕は姉上とずっと一緒だから!」
「モラフ〜!」
力いっぱいモラフに抱きつくドレア。これでもか!と、モラフを自身に擦りつける。
(この柔らかさは…クレア様に似てきましたな!)
久しぶりに一緒に寝た姉弟。2人共、笑顔で寝て居る。
楽しい夢でも見ているのだろうか?
翌朝…。
「初めまして、クライン・カダバールの次女、コマ・カダバールです。」
水色のドレスのスカートを摘み。綺麗なカーテシーを公爵家の面々に披露する金髪の少女。
(見事なものじゃ…立ち振る舞いに容姿…ふむ!将来が楽しみな少女じゃ!)
ニヤけるモラフの顔を見たお転婆お嬢様は、モラフが奪われてしまうと1人臨戦態勢に入った様だ。
大人達が、部屋で話しをしている最中に屋敷の庭で5歳児達の、お見合いが始まった。