02 0歳児の憂鬱
「おぎゃー!!」
(誰でも構わない!鼻穴に入れられた芋虫を排除してくれ!頼むのじゃ。)
泣き叫ぶ赤子を嬉しそうに見つめて居るのは…姉のドレアだった。
「おぎゃー!!」
(ココや!窓なんか汚れとらんじゃろ!掃除は良いから…儂を救わんか!)
何故…身体が上手く動かんのじゃ…毎日が拷問じゃ!
モラフがベルモンド公爵家の長男に転生して1週間が経過した。
ドレアは、すっかりお姉さん気分だ!毎日…時間を見つけては弟が寝て居る部屋を訪れる。
(弟の面倒を見るのは良い事じゃが、儂で遊ぶのを辞めなされ、お嬢様!)
「おぎゃー!!」
赤子の泣き叫ぶ声と共に二匹目の芋虫が鼻穴に投入されてしまった。
「こら!ドレア。鼻穴に芋虫は、赤ちゃんにはまだ早いのよ!」
(おお!ナイスタイミングですじゃ…流石クレア様。)
クレアは芋虫を取り出しドレアに返してあげる。
「お外に逃して来なさいドレア。芋虫にも芋虫の大事な役割があるのよ!」
「ハーーイ!」
部屋を出て行くドレアを見て、ほっとする赤子のモラフ
「あら?やっちゃったわね!」
そう言いながら、赤子のモラフを寝かせ服を脱がせるクレア。
(止めてくだされクレア様…儂の汚物を見んでくだされ!)
柔らかい布で赤子のモラフの大事な所を優しく拭いてくれるクレア。
「おぎゃー!!」
(儂の羞恥心を返してくれ!)
その日の夜。
公爵家の面々に使用人一同の前で、見覚えのある貴族達がクレアに抱かれた赤子のモラフの顔を順番に覗いて行く。
どうやら、赤子のお披露目会の様だ。
「皆様、今から名前を発表したいと思う!」
貴族達はダンドールに抱かれた赤子を見つめている。
「この名は私と妻で決めたのだが、不思議な事に2人共、同じ名を口にしたのだ!」
「この子の名は…モラフ・ベルモンド!!我が公爵家に長年仕えたモラフ・ニコライから頂いた名だ!彼の様に誠実で…そして…騎士の様に強い男になって貰いたいと想い名前を頂いた!心残りが有るとすれば……」
言葉が詰まるダンドールの肩を、クレアが優しく撫でてくれる。
「有るとすれば…亡きモラフに見せれなかった事だ!どうか、我が息子モラフを温かく見守って欲しい!宜しく頼む!」
拍手と共に晩餐会が始まった。
(ダンドール様、モラフは今の言葉だけで十分…幸せですぞ!)
「貴方…後は宜しくね。モラフを寝かして来ますね!」
部屋に戻って来たクレアはベッドに、腰を落とす。
「ハイ…疲れまちたね〜、ご飯ですよ!」
(ダンドール様!儂は…決してクレア様に恋愛感情なぞありませんぞ!しかし…食欲は生きる為に必要なのです。…………………ごめんですのじゃ!)
柔らかな物を口に含む赤子のモラフ。一生懸命に吸い上げる。
「あん!もうモラフは強引なんだから!そんなに急がなくても、貴方のご飯は逃げませんよ!」
(すまんのじゃ!)
翌朝…
「おぎゃー!!」
(油断したのじゃ!誰か…助けてくれ。手の平にバッタが…バッタがおるのじゃ!駄目だ…勝手に儂の手が握りたがるのじゃ!誰か助けてくれ!!)
今日もドレアのお遊びに付き合わされてしまうモラフ。
身体が言う事を聞いてくれない。叫び声は上手く伝わらない。排便も自動的に出てしまう。毎日何度も裸にされている。
(0歳児とは…何と憂鬱な歳なのじゃ!)