12 少女と決勝戦
「ポンポコ!!」
良く分からない言葉を叫び、起き上がるダンドール。
良かった…。公爵様が自力回復なされた!近くで、公爵を襲った悲劇を目撃した民達は安堵の表情を見せる。
「やっと起きましたの?」
お前がボコったんだろ!クレアの言葉に使用人のココ達や、近くに居た者達がツッコみたくなるのだが…そこは
自身の身の安全の為に喉元から先には決して言葉を出さなかった。
「ほら、貴方。モラフの決勝戦が始まりますよ!」
モラフ?ダンドールはステージで見合っている子供達を見る。10歳位の長い赤髪を両サイドで縛っている、ツインテールの女の子とブカブカの兜で顔を隠す、熟女大好きボーイ。
「おお!やはり熟女が勝ち上がったか!」
はぁ…。ダンドールの言葉に溜め息を付くクレア。
「分からないの?あの熟女君がモラフでしょ!」
ダンドールだけではない。使用人の2人も、そしてドレアも驚いている。
「モラフ?本当にモラフなのか!」
クレアは、あんなに穏やかで…静けさの中に強く光り輝く闘気を放つのはモラフと、亡くなった爺や位しかいないでしょ!何故分からないの貴方……と、ダンドールに呆れ気味に語る。
闘気?何ですか…それは?
ダンドールは闘気が分からない…他の者も分からない。
クレアの強さは恐らく、根本的に違うのだろう。血筋なのか?天性の才能なのか?誰も知る由は無かった。
「本当に…爺やそっくりなんだから!先代公爵の兜なんか着けて何がしたいのかしら?」
クレスは、そう言いながらステージのモラフを見つめている。
(やっぱり…似ているんだ!私は分かっていたもん。絶対…爺やの生まれ変わりなんだよモラフは!)
椅子に座り脚をバタつかせるドレア。
ステージを見つめるドレアの表情は、それはそれは嬉しい笑顔で溢れていた。
「始まるわよ!貴方。」
二刀の木剣を交差する様に構えるツインテールの少女。
他の選手達とは明らかに雰囲気が違う。
(研ぎ澄まされた構えじゃな…ふむ、子供には合わん闘気だのう。)
「やい!塾塾!負けないからなアタシは!」
(ジュクジュク?話し方は、まんま子供じゃな…)
「それでは決勝戦を始めます!」
歓声が沸き起こる中、ツインテール少女は勢い良くモラフに向い突撃する。
二刀…。モラフは初手が左右どちらから、放たれるか考える。
観察眼が冴えるモラフ。微妙に左右で柄の握り方が違うのを瞬時に見抜く!
左だ!
「ドガン!!」
衝撃音と共に後方へ吹き飛んでしまうモラフ。正体を隠す為にゴンタが準備した兜が宙を舞う。
頭を押さえるツインテールの少女。
「アタシの頭は硬いだぞ!」
一生懸命に頭を擦りながらニコニコ笑っている。
体勢を立て直し、片膝を着くモラフ。
(まさか、頭突きとは予定外じゃ…。)
素顔が曝け出されたモラフ。当然、周囲の民達が気が付き出した。
「おい!あれってモラフ様だろ?」
「はあ?他人の空似だろ!」
「いや…間違いねえ、俺は屋敷の門辺りで、話しかけら
れた事があるんだ。」
民衆達がザワつく中…来賓席から声がする!
「おお!間違いなく…我が息子のモラフだ!」
モラフ〜!私はここだぞ!と父親顔で手を振るダンドール。子供の試合で熱くなる親そのものだ。
「モラフ〜ぶっ飛ばせ!」
ドレアは、グラつく椅子の上で拳を握り騒いでいる。その椅子の脚を必死に押さえるココとレミア。
(お嬢様が転んだら…私達にトバっちりが!)
暴露系お嬢様を守る為に全力を出している。
「さぁ、私の息子よ…公爵家の戦いをしなさい。」
クレアは熱くなる2人とは逆に冷静に戦局を見守る。
(バレたのじゃ…)
正体がバレたモラフ…公爵家の人間は、民達が見守る中で、どう戦うのだろうか?