Disaster~sinfonia~
2話目です。よろしくお願いいたします。
昼休み、俺はメギャンとコックとは一緒に飯を食わず立ち入り禁止の屋上にいた。悩みがあると俺はよくここに一人で来る。屋上にはびっしりと糸が張っていて目がまだ慣れてないせいかなんだか気持ち悪い。
「なんか落ち着きにくいなここも……。」
あの後、あの女の子、流凪 命は普通に授業を受け、早々にクラスのみんなと打ち解けていた。コックは完全に惚れていたがまだ連絡先を聞けずにいるみたいだ。
「なんで……。糸が視えなかったんだ?みんなにあるものがなんであの子には……。とは言っても聞くわけにもいかないし……。」
すると後ろから声をかけられた。
「ちょっと、君!藍糸君だっけ?私に聞きたいことがあるんじゃない??」
後ろを振り向くと、そこには紫髪の美人、流凪 命がいた。というかこの子なんでここがわかったんだ?
「え?なんでここに?てか聞きたいことって……この糸について何か知って……」」
すると窓から見えるテラズタワーの糸が赤く点滅しだした。
「っ!なんだあれ……!?赤く光ってる!?昨日はこんなことなかった……!!」
すると流凪さんはかなり苦い表情になり焦りだした。流凪さんがつけている時計からピピッと音が鳴り、流凪さんはさらに表情を曇らせる。
「え!?変異地点はここ!?まずい……!!藍糸君も一緒に来て!」
そう言うと流凪さんは俺の手首を掴み屋上から文字通り飛んだ。
「うっそだろぉぉぉぉ!!!!!!」
地面に激突する寸前急に減速しまるで重力がなくなったかのように感じた。
俺は突然の落下体験に全くしゃべることができず、息をするのが精いっぱいだった。校庭でしりもちをついて座り込んでしまった。
刹那、後ろでドカン!!!と轟音が鳴り響く。俺は振り返りその光景に唖然とした。ガラガラと音を立て校舎が崩れていき、生徒たちがブチブチと音を立てて瓦礫に潰されていった。何故か瓦礫に潰されていった生徒たちの糸はプツンと切れていった。
「っ!!間に合わなかった!!このままじゃ……私たちも……。」
流凪さんは何やら呟いていたが俺の耳には全く届かなかった。気づけば校舎に張っていた無数の糸は3,4本程度になっていた。そしてみんなにあった糸とは違う、紫の糸が1本増えていた。
「な、何だよこれ……。何が起こってるんだよ!!コックは!?メギャンは!?」
流凪さんは俺の肩に手を置きゆっくり諭すように話し始めた。
「いい?聞いて。このままじゃ私たちもやられてしまう。私と絃響して、戦って!!」
俺は流凪さんが何を言っているのか全く意味が分からなかった。戦う?絃響?パニックと相まって状況は全く呑み込めていなかった。
「流凪さん?いったい何を……?コックもメギャンも早く助けに行かないと!!」
直観的に友達を助けなければいけないとそう感じた。俺は崩れ落ちた校舎に向かって思いっきり走った。待ってろよ!コック!メギャン!今、助けに行くからな!!
「待って!!そっちは危険……」
そう流凪さんが言い終わる前に校舎が再びドン!!!と爆発した。一瞬何が起こったのかわからなかった。
爆風で体が吹き飛びそうだ!!俺は体をかがめ何とかその場に踏みとどまった。すると土煙の奥でギラリと何かが赤く光った。
ドガガガガガガガギャオウ!!!!!!!!!!!!!!!!
突然響き渡った騒音に俺はとっさに耳を塞いだ。直観的に俺はこの騒音が何かの叫び声だと悟った。やがて土煙が散り、徐々に赤く光った何かが姿を現す。
うちの高校の制服を着ている。肌は黒く変色し手足は太く肥大し、両人差し指からは炎が噴き出している。全身に紅い筒のようなものを巻き付けていて、顔は赤い筒のようなものを3本束ねたものに端まで裂けた口がにやりと不敵な笑みを浮かべている。そのてっぺんからは紫の糸が空に向かって伸びている。
まるで化け物じゃないか……!!
「なんだこいつ……。ダイナ……マイト……?」
もう何が起きても驚かないと思ってたのにな……。腰が抜けちまって全く動けねぇ……!!
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
そんな感情が俺の中を支配する。もう何も考えられなかった。化け物はゆっくりと体のダイナマイトのようなものを引きちぎり導火線らしき場所に火をつける。
ドガギャウ!
そしてそれをこちらに向けて放ってきた。俺はあれがおそらく校舎を爆発したものだとわかっていても逃げることはできなかった。何だかスローモーションに感じる。これが死ぬ瞬間なんだと思った。化け物が放った赤い筒は炸裂し閃光をまき散らす。俺は思わず目をそらし閉じる。
「っ!!」
ドン!!!!!!!!!!!!
その直後、頬を叩かれ目を開く。そこは紫がかったドーム状のようなもの中で流凪さんがそこにはいた。やっぱりこの人は何かある。そう確信した。
「大丈夫!?死んでないよね!?」
「流凪さん……。あれは何なんだ……?君は一体……??」
「そんなこと後!!この障壁もいずれ破られる!あいつはクラスBの強敵よ!!校舎の方を視て!まだ糸が残ってるでしょ!!もしかしたら友達かもよ!!こいつを倒せば救える!!違う!?」
「助けたいよ!!でも倒すってどうやって!?あんな化け物倒しようが……」
「だから!!さっき言ったでしょ絃響するの!!手出して!!」
「絃響ってなんだよ!!わけわかんねぇよ!!」
そういうと流凪さんは拳を俺に突き出してきた。俺は意味が分からず困惑した。そうこうしているうちに化け物は二本目のダイナマイトを障壁?に放ってきた。バリンという音とともに障壁?は崩れ去った。
「時間がない!!早く!!拳を突き合わせるの!」
「あぁ!!もう!!やればいいんだな!!やれば!!」
俺は言われた通り拳を突き合わせる。いつ放ったかわからない三本目のダイナマイトが俺たちの目の前で炸裂する刹那、青い光の柱が俺たちを包み込んだ。その光の柱は爆発をものともしなかった。
「よし!!ギリギリうまくいった!!後は……!!」
「なんだ……これ……。どうなってんだ……。っ!!!!!!」
すると突然視界が真っ暗になった。それと同時に頭に直接男の声が響いてきた。どんどん暗い底へ落ちていくそんな感覚になった。
【怖いだろう。恐怖しただろう。なぜ抗おうとする。死ねば終わっただろう。友の元へ行け。死は恐怖からの解放だ。】
「そうだ……。行かなきゃ……コック……メギャン……。」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
死にたい。
俺は暗い暗いどこかを流れに任せ落ち続けた。この先に待っているのは……死と信じて。
◇
「絶命界からの介入!?まずい!!これじゃあ絃響出来ない!」
光の柱は黒い闇に包まれていった。
化け物は黒い闇に飲み込まれかけた光の柱を指しドガガガと笑い出した。
「貴様ら!!絶士を生み出すつもりだな!!そんなことはさせな……」
そう流凪が言い終わる前に青い光の柱は完全に闇に閉ざされた。