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姉とは、巨乳で包容力のある女性がベスト。その上、天然が入っていれば文句無し。しかし、あまりイチャイチャするタイプは、好みではない。清楚系が至高。


 2日、3日と大駆除作戦が行われる中、私は今日も書庫で書物を読み漁る。


 都会の高層ビル並みに、ズラリと聳え立つ本棚達は、恐らく生涯で読み終えることは無いだろう。それでも知識として必要なものだけを選別しながら読んでゆく。


「ご主人様、そろそろお勉強のお時間です」


「わかった」


 日本では義務教育があるように、こちらでも6歳くらいになると専門の教師を個人で雇い、個別の教育が行われる。王族や、一部の高位な貴族達は皆、同じ事をしているだろう。


「本日からは魔法、それから剣術の実践で御座います。中庭への移動をお願い致します」


「ああ」


 いつものマナーや礼儀作法ではなく、そろそろ魔法や剣術を習いたいと昨日母親と会った時に頼んでおいたのだが、昨日の今日とは仕事が早い。既に準備だけは整えてあったのかも知れないな。


 埃の舞う、薄暗いジメジメとした書庫を後にすると、少しだけウキウキしながら中庭へと向う。


 長ったらしい石畳の廊下をクネクネと曲がり続けること数分。四方を廊下で囲まれた中庭へと到着。その中心、噴水の近くには既に教育者であろう人物が待っていた。


 相手側がこちらに気づくと、ワタワタとしながら口早に自己紹介を始める。


「お初にお目にかかります、レイ殿下。私は王国魔法士サリア・ラ・ロユニアと申します。本日より殿下の魔法講師を勤めさせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します」


 最後に深々とお辞儀をし、そのまま静止。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 その一言で、頭を上げた。


「……」


「……」


 お互いに視線が合い、そのまま沈黙が流れる。サリアの表情からは緊張の色が読み取れた。


「……あー、えーっと。そ、それでは早速、魔法の基礎から、お教えさせて頂きます」


「はい」


 独学で既に魔法は扱え、書庫でもそれらしい本をいくつも読んでいる。しかし、ここは復習を兼ねてしっかりと学ぶつもりだ。古い書物との誤差があってもいけない。


「えー、まず、魔法と言うものは、体内にある魔力。体内エネルギーを用いて様々な現象を発生されることそのものを指す言葉です。例えば、魔物から採取することができる魔石。あれも魔力の塊なのですが、その力を貸して行う儀式や現象は魔術。と、呼びます。ここまではご理解頂けますか?」


「はい。大丈夫です」


 要は、自力で行うものを魔法。道具を頼るものは魔術。と、分けて呼ぶ訳だ。


「アメリーはどうだ?」


 そうメイドに話しかけると、アタフタとしながらも「はい。理解出来ました」と頷いた。質問されるとは思いもしなかった。といった反応だ。


「はい。それでは、魔法がどういったものなのかお分かり頂けたところで、早速その魔法と言うものをお見せ致します。よ〜く、ご覧になってくださいね」


 サリアは私たちの目線に合わせてしゃがみ込みこむと、右手人差し指をピンと立てて、視線を集中。指先から数センチ離れた場所で、ボゥ!という音と共に、ライター程の火が噴いた。


 尚、スカートの裾が地面に着かないようお尻の方から手を滑らせ、もも裏で挟み込む様にしてしゃがむ一連の動作は、優雅であった。ご令嬢といった感じで。


「……」


 サリアは母性すら感じさせる優しい笑みを浮かべ、我が子が大喜びするであろうことを期待する母のような視線を送ってくる。


「……ど、どうでしたか?これが、魔法です」


 特に反応を見せないでいると、寂しそうな表情を見せたサリア。問いかける声色も萎えて聞こえる。


「凄いですね。早く自分も扱えるようになりたいです」


 出来る限りの笑顔で、そう答える。


「ええ!すぐ扱えるようになれますよ!」


 物凄くいい笑顔で返された。


「……ゴホン。はい。えー、魔法を発動させるには、まず体内にある魔力を感じる所から始まります。魔力とは、体内を巡る活力であり、生命力です。全神経を集中させて、まずはその流れる力を感じてください」


 人は、体を巡る血液の流れなんて感じられない。例えば血流を止めて、痺れた頃に流す。とか。そんな事をしない限りは。それと同じように魔力を感じるのもかなり難しい。


「如何ですか?感じられましたか?」


 決して急かすような問いかけではなく、慈愛に満ちた優しい表情と声音で確認をするサリア。


「はい。感じとれました」


「え?」


 私の即答で、キョトン。とした表情を浮かべて固まった。


「アメリーはどう?」


 その間にメイドへと声を掛ける。


「あ、えーっと。はい。元々、少しでしたら魔法を扱えますので……」


「そっか」


 初耳である。


「は、はい。ですが、わたしが魔法を覚えたのは7歳の時でした。その時は魔力を感じるまでに3日程掛かりましたし、私よりもご主人様の方が素晴らしいと思います」


 素っ気ない返事をしたせいで要らぬ気を遣わせてしまったようだ。主人を持ち上げ、己を下げるよう必死に弁明をするメアリー。正に、メイドの鑑である。


「うん、ありがとう」


 ただ、こちらも今日が初めてではない上に、その時はアメリーと同じくらいの時間を掛けている。つまり、別に凄くはない。平凡である。


「コホン。失礼致しました。話を続けさせて頂きますね。では、次に感じ取れた魔力を一点に集中させます。今回は分かりやすく、先程私がして見せたように指先へ集中させてみましょう」


「はい」


「魔力を集めるコツは、イメージすることです。こう、指先に魔力の球体を浮かべる様な感じで」


 サリアは、自分の人差し指の先に握り拳を作り、イメージしやすい様にとジェスチャーを交えて説明する。


「なんとなく集める。のではなく、形をイメージして、集める。これが大切です」


「なるほど……あ、出来ました」


 お、意外と簡単に出来たな。という雰囲気の軽い口調をイメージした発言。


「え、は、早いですね……流石は殿下です」


 その様子に苦笑いを浮かべるサリア。お褒めの言葉はスルーを決めた。


「……えー、では最後に、その集めた魔力に変化を与え、魔法を発動させてみましょう」


 説明を始めたサリアは、右手を前に出し、指を広げる。


「行きますよ?」


 何故かドヤ顔のサリア先生。


「ほい!」


 コミカルな掛け声と共に、それぞれの指先から五色の魔法が発現する。


 成功後は、先程よりもさらに凄いドヤ顔で、どうだ!と、言わんばかりの表情だった。


「凄いですね」


 子どもを褒める父親の気分でお褒めした。


「そうでしょう?」


 そう言ったサリアの視線が背後に流れ、恐らく、専属メイドと視線があった。


「……あー、ゴホン。えー、これは親指から、火、風、水、土、無属性魔法です。1つずつ説明致しますね」


「はい」


「火属性魔法というのは、魔力に熱量を与える現象でその熱を用いて魔力という燃料を燃やしています」


 得意げに、チラリと視線を寄越しながら説明を続ける。


「そうですね〜。わかりやすく言いますと、焚火には、燃やす為の枝と種火が必要ですよね? その二つを同時に魔力で代用するんです。どうですか?イメージ出来ましたか?」


「はい。多分、こうですよね?」


 人差し指を立て、ライター程の小さな火を灯す。


「……え?あ、そ「あら?レーちゃんはもう魔法のお勉強?」」


 3歳年上の実姉、シィエナが廊下から声を挟むとそのままこちらへと近づく。


 後ろで従っていた専属メイドは、視線が合うと一礼し、姉の後に続いた。


 姉、シィエナは女性であるが故に王位継承権を持っていない。恐らくは政略結婚の道具として使われるだろう。整った顔立ちと温厚な性格が故に男に対する人気は高くなると思われる。コネを作る為にも良いところに嫁いで貰いたいものだ。


「はい。今日から魔法のお勉強です」


「ふーん?私の時よりも早いような気がするけれど……」


 シィエナは人差し指を唇に当て、上目遣いで過去との自分を比較する。


「それってつまり、その分レーちゃんが優秀ってことよね?」


 胸の前で手を合わせ、自分の事のように喜ぶ姉。


「そう、何ですか?自分ではわかりません」


「ふふふっ、そうよね。でも、お姉ちゃんが言うのだから本当よ」


「お嬢様。そろそろお時間です」


 シィエナの専属メイドが、そう言って話を切り上げさせる。


「あら?そう、だったわね。それじゃあレーちゃん。お姉ちゃんは行くけど、お勉強頑張ってね」


「はい。姉上も頑張って下さい」


「ふふっ、ありがとう。それじゃあまた後でね」


 そう言って歩き出したシィエナは、ちょくちょく振り返りながら胸元で可愛らしく手を振っていた。最後までご機嫌だったシィエナが居なくなると、シィエナの専属メイドがこちらに一礼。そのメイドが居なくなるまでを見届けた後、サリアは授業を再開させた。


「……えーっと。授業を続けさせて頂きます」


「お願いします」


「えー、火属性魔法については説明致しましたので、次は風属性魔法ですね。風属性魔法とは魔力で気流を操作する魔法です。魔力に動きを与え、大気中の空気を動かして風を作る。というイメージで発動させると、いいかもしれません」


 指をくるくると回し、竜巻を作るようなジェスチャー付きの説明をするサリア。サービス精神旺盛な彼女は、説明の最後でジェスチャーに合わせて魔法を発動させた。


「なるほど……あ、出来ました」


「さ、流石は殿下です。火属性魔法の時もそうでしたが、こんなにも早く発動出来る人は世の中にそう多くはいませんよ」


「そうなのですか?ありがとうございます。……でも、私が直ぐ出来るようになったのはサリア先生の教えがとても分かりやすいからだと思います」


「……え?そ、そうでしょうか?殿下に褒められると悪い気はしませんね。ありがとうございます」


 少しだけ頰を赤らめ、嬉しさを隠す様に照れるサリア。教育者として教えを褒められるのは嬉しいのだろう。少しの間、そっか〜、わかりやすかったか〜。えへへ、徹夜してよかった。と、一人で喜ぶ。


「こほん!」


 メイドのアメリーが、後方で咳払いをする。


 その咳払いを受け、ハッ!?と、我に返ったサリアが説明の続きを始めた。


「……あ。えーっと、では次に水属性魔法の説明を致します。水属性魔法とは魔力を使い空気中に滞在する水を集める魔法です。そうですね……。例えば……」


 視線を彷徨わせ、少しだけ動揺を露わにしたサリア。


「こ、これは少し、わかりにくい説明になってしまうのですが……み、水が沸騰すると、水蒸気となってその分の水が無くなりますよね?その無くなった水を元に戻す様なイメージが、水属性魔法です。……分かりづらいですよ。ちょっと待っててくださいね」


 サリアが人差し指を立てて、その先に小さな、本当に小さな雫を作る。


「えーっと、こんな感じの……本当は水蒸気みたいにもっと小さい方がいいのですが、小さな雫を大量にイメージして……」


 指先の雫の周りに、それと同程度の大きさの雫が大量に生成される。


「……これらを一つに纏めて、大きな雫に変えことで水属性魔法が発動します」


 どうですか?と、視線で問いかけるサリア。ちゃんと伝わっただろか?という心配そうな表情で、私の言葉を待っている。


「なるほど……これなら直ぐに出来そうです」


「本当ですか?それなら良かったです!」


 花が咲くような笑顔で喜ぶサリアを前に、水属性魔法を発動させる。


「出来ました」


「もう、ですか……ほ、本当に凄いですね。特に水属性魔法は難しいと言われているのですが。流石は殿下です」


「いえ、私が凄いのではなく、サリア先生の教えが素晴らしいんだと思います。とても分かりやすくて、すぐに理解出来ましたから」


「……えへへ。ありがとうございます」


 もう、これ以上ない程にデレッデレ。子どもはお世辞を言わないから素直に受け止めているに違いない。


「ごほん!」


 再び、アメリーが咳払い。


「あ、えー……では、次は土属性魔法の説明を致します」


「お願いします」


「土属性魔法とは、先程の水属性魔法と似たような感じで小さな砂の粒を生成して、集めて、固める。この流れをイメージすることで発動させることが出来ます」


 サリアは、一応。と言い、水属性魔法と同じ工程を実践してみせた。


「どうですか?」


「えーっと……出来ました」


「はい。しっかり出来ていますね」


 流石です。と、微笑むサリアはもう驚かない。


「では、最後に無属性魔法です。無属性魔法とは魔力そのものを凝縮したもので、その力を使って肉体強化を行うことが出来ます」


 今までのように人差し指の先に魔力を集めて、無属性魔法を発現。


「こうして視覚化する為には、ある一定量以上の魔力が必要となりますので、始めは難しいかも知れませんね」


「……出来ました」


「そのようですね……


《ゴーン!ゴーン!ゴーン!ゴーン!》


 城外、城の正面側にある大きな時計塔から、鐘の音が中庭まで届いた。


「……えー、今日はここまでのようですね」


「はい」


「魔法は反復練習を行うことにより発動スピードを上昇させる事が可能です。また、魔力を生成することにより魔力量の向上も期待出来ます。暇な時間には風属性魔法の練習をするのがおすすめですよ」


「はい」


「では、私はこれで失礼致します」


「ありがとうございました」


 サリアは最後に頭を深く下げ、中庭を後にした。


 ……。


 王国魔法士とは、その名の通り国に使える魔法士のことだ。この国の魔法士は数が少なく、貴重。一応養成学校を設立はしているが、剣術……騎士の育成がメインに行われている。


 その原因としてこの国が貴族制であり騎士の育成に力を入れている、というのもあるだろう。だが、隣国に魔法大国が存在する為に才能ある国民はそちらへと流れているのが現状だ。こちらで働くよりも魔法大国の方が賃金がよく、待遇も良いからな。あちらは実力主義国家だし。


 逆にこちら、剣術に対しては相当に力を入れているために、そちらの待遇が良く、四騎士。と呼ばれる最強の騎士もいるのだが……


 ……。


 そんな貴重な王国魔法士ではあるが、サリアの見た目は16歳前後、精神年齢も年相応だった。感情が表に出やすく、表情の変化だけで心の中まで予想出来る程に。表裏の少ない性格で、優しいお姉ちゃんタイプの彼女は、私……6歳児程度の子どもを相手にした話し方が上手く、年の離れた弟か妹がいるのかも知れない。


 面倒見が良い。という意味では納得出来るが、一国を治める可能性のある人物に対して教育を、それも1番重要なこの時期に対して彼女を寄越すには、些か気品というものが足りないように思えた。若過ぎるのだ。


 これは、私に期待をしていない。という現れなのか、それとも彼女が優秀故に多少の問題は度外視しての教育者なのか。


 まあ、どちらでも良いが。


 ひとまず扱いやすい王国魔法士のコネが出来たことを喜ぼう。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


私は火、水、土、風。これらを熱量、粒子量、重量、方向量を変化させるものであると考えてみましたが、科学には詳しくないため、これらで全ての現象を起こし得るのかがわかりません。強い力、弱い力、電磁気力、重力という四つの力についても考えてみましたが、私の脳では理解出来ませんでした。詳しい方の感想や意見をお待ちしております。

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