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ドラゴン娘は、立派な翼に厳つい角。太めの尻尾に、キュートな八重歯が必須条件です。


 転生し、この世に生を受けて6年。第三王子として産まれた私は、手始めにこの国の王となることを決意する。


 この6年で下の子が増え、結果的にライバルが増えたわけだが、恐らくは問題ない。注意はするが、今回は省くとしよう。


 さて。この国取り計画で1番の障害は、正妻の息子であるところの第一王子。彼の年齢は既に10歳とのことだ。成人が15歳というこの世界では、下手をするとあと5年後には次の国王が決まってしまう。流石にそこまで早くには決めないと思われるが、それでもあと5年。その間には結果を残し、現国王に媚を売って置かなくてはならないだろう。


 名前はレリアンといい、容姿端麗な美少年で非の打ち所がないほどに完璧な王子様。と、言われている。実際に監視した範囲では、確かに、年の割にはよく出来た子どもだった。努力もしっかりと出来き、誰にでも、使用人に対しても優しい人物。残念ながら突出した才能はなかったが、それでも、このままいけば間違いなく国王になってしまうだろう。


 これから、手を打って行かなくてはな。


 そして、次に王位継承の高い第二王子レオン。彼はやんちゃ坊主で、武の才能を持ち、瞬く間に才能を開花させた。得意な得物は槍だが、それ以外も人並み以上にこなせる様だ。流石にまだ9歳という年齢では大人を圧倒することは出来ない。だが、同年代ではダントツで強い。


 こちらも正妻の息子である為、第一王子が継承しない場合でも、こちらが国王になってしまう可能性が高い。この国は血筋、カリスマ性、武力の順番で王の座が決まりやすく、その為、彼を抑えて王の座に就くには、彼よりも強く、そしてカリスマ性のある知的人である必要がある。


 ただ、それでも血筋では劣るため、最終的にはどうなるかわからない。武道の世界へと入り込み、国王にならないと宣言してくれれば、助かるのだが……。


 まあ、此方も追々だな。


 生まれてこの方、魔力量の向上と知識量の増加のみに力を入れていたが、だいぶ体も成長してきた。そろそろ剣術の方に手を出すのもいいかも知れない。


 機会があれば申請はするとして、今日のところは書庫に潜るとしよう。この国1番の図書館と言っても過言では無い場所だ。そこでまだまだ知らない歴史や地理、様々な禁術や魔法の知識を蓄えなくては。



 ◆◇◆◇◆



 予定通り書庫へ行き、そこらにある本を手当たり次第に読んでいた所面白いものを見つけた。


 その名は、召喚魔術。


 何でも対価として魔石を消費するだけで、召喚した生き物を手駒として操れるとか。準備するものは魔法陣と魔石のみで、後は本に記された言霊を詠唱するだけ。


 魔石さえ使用人に準備させれば、今すぐにでも実践出来る。


 早速ネズミやコウモリなどの小動物を使い魔として召喚し、二人の兄と国王、それから権力を握る貴族どもの監視させようではないか。将来の為にも弱みの一つや二つ、握っておかなくてはな。



 ◆◇◆◇◆



 場所は移動し、自室へ。


 二つ年上の専属メイド、アメリーに大量の魔石を用意させ、その間に室内の床一杯を使って魔法陣を描く。特に物を置いていない、ただだだっ広いだけの大理石のような物で出来た石畳の床は、凹凸が少なく滑るように陣を描ける。


 と、思われるが、子どもの体ではそんなに軽やかな動きで描けない。基盤となる円を描くのですら苦労した。


 時間を掛けながらも細かい部分まで繊細に描いているうちに、メイドが魔石を持ってくる。


 部屋に入った途端、メイドが驚きの表情を浮かべたが、この状況に口出しはしなかった。いつもの奇行である。


 失礼します。と言って大量の魔石を数十回に分けて持ち入れ、失礼しました。とそのまま退室。


 間も無くして魔法陣が完成し、いよいよ召喚魔術のスタートである。


 魔術書の指示に従い、魔石を魔法陣内の所定の位置へと設置。まだまだ大量の魔石を残して、陣の外側で魔術書片手に詠唱を開始する。


「告げる。汝は我が僕なり。故に、尽くせ。その命果てるまで。守護せよ。その命を盾として。齎せ。その命と引き換えに」


 詠唱を始めると、徐々に魔石は光り出し、やがて太陽の様に眩い光を放ち出す。


「我は何も与えず。然し、それでも尚付き従うならば応えよ」


 瞬間、全ての魔石が砕けた。魔法陣上に置いていない魔石含め、全てが。


 粉々になった魔石は宙を舞い、七色に輝きながら少しずつ魔法陣へと吸収される。それに伴い魔法陣全体が輝きを放ち出す。


 全ての魔石が吸収され、目も開けていられない程の輝きを放つ魔法陣の中心から、突風が吹き荒れる。


 窓ガラスは悲鳴を上げ、カーテンは忙しなくと旗めいた。手に持つ魔術書のページが勝手に捲れるが、意識は召喚された人物に釘付けとなった。


「クククッ、よもやこのような小僧に呼び出されようとはな。まあ良い。我が名はイルミナ。このなりでも一応ドラゴンだ。ご希望とあらば変身するが?」


 まさかの人間……では無いらしいが、人型が呼び出されるとは思わなかった。少しだけ驚きだ。


 ……。


「契約は成立した。こんな小僧だが、何か文句でも?」


 あくまでも上から。主従の関係性をはっきりさせる為、強めの口調を心掛ける。


「いいや?そこに文句は無い。そもそも好きで呼ばれてやったのだ。少しの束縛感はあるが……」


 イルミナと名乗るドラゴンの真紅の瞳が、一瞬だけ怪しげに輝いた。


「ふむ。まあ、主人も悪い奴ではなさそうだ。これからよろしく頼むぞ」


「ああ、よろしく」


 ……とりあえずは、襲われるようなことがなくてよかった。知性ある生き物は束縛を嫌し、もし、急に私がこうして召喚されたならば不満の一つはあっただろう。だが、相手は同意して召喚に応じたようだし、一先ずは安心しておこう。


「それで?変身はしなくて良いのか?」


「いや、しなくて結構だ」


 こんなところでされても困る。嘘かどうかはその態度でわかるしな。


「お前は……イルミナは魔法が使えるか?」


「何だ?この街を滅ぼせば良いのか?」


「んなわけないだろ」


 何故その発想に至ったのか。いきなり過ぎるだろ。


【コンコン】


 背後にある扉がノックされ、心配する様な声が部屋まで届く。


「ご主人様。どうかなさいましたか?」


 その声の主は、専属メイドのアメリーのものだった。


「あー、いや。何でもない」


 1人しかいない室内で人の声が響くのだ。それは心配にもなるだろう。……頭が。


「して、主人殿?お主は名をなんと言うのだ?」


「……レイだ」


 そういえば、名乗っていなかったな。


「それで、質問の続きなんだがどんな魔法が使える?」


「ふふん!基本的な魔法であればなんでも使えるぞ?破壊系であれば文字通りなんでも使えるがな!」


 12歳前後の容姿をしたドラゴンは、ドヤ顔でそう言った。


「そうか、なら幻影魔法か何かで姿を消しておけ。城に部外者がいては色々と問題になるからな」


「ふむ。そう言うのであればそうしよう」


 ノーモーションで魔法を発動させて、瞬き一つの間に姿を消したイルミナ。そこにいる筈なのだろうが全く気配を感じない。そんな芸当は出来ない私との実力差は歴然である。


「それで?これから我は何をすれば良いのだ?」


  相手は感情ある生き物だ。とりあえずは好感度を上げる意味も込めて。


「暫くは自由に行動していいぞ。城の外であれば姿を隠さなくてもいいしな。好きなようにしてくれ」


「ふむ、そうか。では入り用であれば呼んでくれ。その時は一瞬で駆けつけよう」


「ああ、そうしよう」


 どうやって呼ぶのかは知らないがな。



 ◆◇◆◇◆



 その後、召喚1回分の魔石をメイドに用意させ、もう一度だけ召喚を行った。


 ガチャを回す気分で召喚した生き物は、ネズミ。


 色々試してみた結果、意思の疎通が不可能だった。一方的な命令であれば可能だったが、これでは何か動きがあれば戻ってこい。程度で、何があったかの情報までは聞き出すことが出来ない。


 このことを踏まえると意思疎通をしたいという考えから、知性体である彼女が召喚されてしまった可能性も考えられる。或いは、心の中で女の子を期待していたか。まあ、何方でも良いが。


 書物には返還魔法も記載されていたため、一度魔法陣を書き換えてネズミに実験。無事成功したのかはわからないが、少なくとも、その場からは消えて無くなった。


 次の日、城内にネズミが発生していたとの事で使用人総動員による大駆除作戦が決行された。


 城内を見回すように命令したのは失敗だったらしく、衛生面や、誰かの偵察用使い魔であった可能性なども考慮して徹底的な駆除を行うそうだ。侵入経路の断定を急ぎ、怪しい箇所は全て潰すとのこと。


 大事になってしまったが、城内の情報収集に下手な使い魔は使えないという教訓になった。次からは気をつけよう。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


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