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序章

ゆっくりと投稿していきたいと思います。

鬼と契を交わすなど人の道に外れる行いであった。ましてや鬼払いを生業とする者が_



神仏と鬼と人とが住む現在世(うつしよ)にて、今まさに最後の望みを鬼に託そうとする男がいた。


「我を呼んだのは娘の命欲しさか?」


召喚して早々、千里眼を持つと聞くその鬼は男の内情に通じているようだった。

男には一人の娘がいた。伴侶に先立たれたその男には生きていく糧がそれしか無かった。

娘はある日床に伏した。都にて鬼払いをしてきた男には呪術であるとすぐに見当はついたものの、これまでに見聞きしてきたもののいずれでもなかった。

あらゆる文献を調べ考え付く全ての者に頼ってみたが、日に日に衰弱していく娘を救うことは叶わなかった。

男は無礼を承知で神仏に娘の命乞いをしたが、


〈その娘も人の子ならば、命に限り有。すなわちそれ尽きること、この世の理。〉と_


話にならなかった。人は命に限りあるからこそ真に愛おしいものは諦めることなどできはしない。

故に本来なら敵である鬼を呼び出したのだ。


「察しの通りだ、私はどうしたら・・・

お主の千里眼で見通してもらえぬだろうか?

私が差し出せるものは全て、この命でも差し出す!

だから、どうか・・・」


男は地に伏して懇願した。


「貴様を喰らえるならその願い聞いてやらんでもない。

下級な鬼と違って低俗な人間など好んで喰らいはせぬが、貴様ほどの力を持った者ならば喰らう価値がある。」


鬼の目にも涙か、それとも気まぐれか、易々と

鬼は男の命と引き換えに娘を救うすべを男に授けるのだった。


鬼が言うには、


娘は常夜と言う別の現在世の榛名と言う娘と縁が結ばれている。


男の娘の衰弱の元は榛名にかけられた呪術。


榛名の命がまさに消えようとしている。


娘を助けたければ榛名にかかった術をとけばよい。


男の命はこの場で鬼に喰われるが、鬼の千里眼を通して式神として男を常夜に召喚する。


「常夜で式神としての貴様の命は心の在り方による。

貴様の心砕けたとき天命と知れ。」


男は刹那で覚悟をきめた。

娘の命のためならばこの心、仏にでも鬼にでも。



「喰ってくれ。

常夜までの道中しかと頼む。」


こうして禁忌とされた鬼との契が結ばれ、男は喰われた。


鬼は静かに笑う


「人の心は容易に砕ける。

救わんとする小娘にかけられた呪い一筋縄ではいかぬぞ。

この男は強き心の持ち主のようだが、それが蹂躙されるさまを観るのもまた一興。」


















和風が好きです。

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