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魔族だけどダンジョンに行きたい!  作者: 北緯45
第一章 クォール神殿遺跡
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第七話 マグナの探し物

 神殿内の通路は階下に進むほど狭くなり、その両側の壁には槍衾にあるような穴が無数に開いていた。 

 ロゼは怪しげな場所の前では必ず立ち止まり、隷属させたスケルトン兵を先に歩かせては、罠の確認を行った。


 目的の部屋は主通路から少しそれた場所にあるらしい。


「何で部屋同士をつなぐ出入り口が扉じゃなくて、壁の真ん中に空けた丸い穴だったり四角い穴だったりするのかな?」

「大人数で攻めて来られないようにするためですね。ただ有効なのは武器しか持たない人の兵だけで、魔法を使われてしまえば、足止めにもなりませんが」

「へぇ~ちゃんと理由があるんだね」

 マグナ答えにセクタは感心したようだった。


 このような場所が続いては、ロゼが従えた不死の兵達を伴っての移動には時間がかかってしまう。

 そこでいったん兵達と別れ、ロゼの闇の目に再び頼りながら、マグナ達は先へ進むことにした。


 かつての戦争に参加したクォールの兵は、魔力を持たない普通の人間達だったのだろう。そのため神殿内は対人戦を想定して作られたと思しき場所が所々に見受けられた。

 通路や室内の壁の至る所が焼け焦げており、魔法が使用された形跡があった。


「ここですね」

「おお、それっぽい扉だね」


 青銅色の大きな扉が目の前に立ちはだかった。

 特に障害というべき出来事に遭遇することなく、三人は目的の場所へ辿り着いた。


「で、どうやったら開くんだろ?」


 扉は固く閉ざされており、押してみたところでびくともしない。


「仕掛けを探して解いている時間が惜しいですね。ロゼさん、闇の目で人のいる場所をもう一度確認していただけますか?」


 こくりと頷いたロゼは目を閉じた。

 彼女の足元から黒い影が数体飛び出していく。


「ここは僕に任せて下さい」


 マグナは両手を扉に置き、意識を集中した。


原質走査(マテリアルスキャン)


 蒼白い波紋の輪がマグナの両手から発せられた。


構築術式作成(オペレイトメソッド)分解(ディスアセンブル)


 たちまちのうちに扉は青銅の色を失い、灰色へと変わる。

 やがて無数のひび割れが入ると、ガラスのように砕け散った。


「今のは魔法?」

「応用錬金術です、ほら、見て下さい」


 マグナが指し示した部屋の奥には、金貨や銀貨が室内を埋め尽くすかのように散乱しており、数十個の宝箱が転がっていた。


 興奮したセクタは光り輝く財宝の海へと飛び込み、マグナはロゼを部屋へと誘った。


「三等分してもかなりの額になるね」

「安宿住まいもしばらくはお別れできるのね」


 我を忘れてはしゃぐ二人とは別に、マグナは真剣な眼差しで何かを探し始めた。


「何を探しているのだ?」

「本、ですね」

「魔導書か何かかしら?」

「それに近いものです」


 マグナの様子からただ事ならぬ気配を感じたロゼとセクタは、協力を申し出て本らしきものを探し始めた。

 三人がかりで小一時間ほど探しても、そのような物は見つからなかった。

 ロゼとセクタはマグナに気を遣うあまりに、引き際の頃合いを言い出せずにいた。


「ロゼさん、人のいる場所を教えて下さい」


 マグナに問われたロゼは、少し言い淀むようにしていたが、意を決した様に答えた。


「最下層の地下十階、おそらくは祭祀場ですね。……かなりの人数が集まっていました、四、五十人でしょうか」

「そうですか、……ではお二人はここにいて、僕が一時間経っても戻らなかったら引き上げて下さい」


 三人ならまだしも、一人で行くと言い出したマグナにロゼとセクタは動揺を隠さなかった。


「一人で行くって言っても、無事じゃすまないよね?」

「そんなに大事なものが、そこにはあるんですか?」

「あるとは限りませんが、僕には行く必要があるんですよ」


 どう説得しようが無駄、といった顔つきをマグナはしていた。

 ロゼとセクタは顔を見合わせると、やれやれと言った具合に、


「せっかく仲間になったんだし、一緒に行こうよ」

「喜びも悲しみもうれしさも、みんなで味わってこそのパーティーではありませんか?」

「それにさ、お宝全部一度で持ち帰れるほどの量じゃないし、何回でも来れるように邪魔なものは片づけちゃった方がいいと思うけどね」

「そうですよ、ようやく冒険を始めることが出来たのに、だった一度で終わらせるつもりなんてありませんからね」


 言葉を返す暇をマグナに与えないかのように、ロゼとセクタは続けた。


「ありがとう」と、マグナはただ一言だけを口にした。


「よく考えたら、マグナが扉壊しちゃったからお宝丸見えだよね。直してもらわないことには、他の冒険者に持って行かれるかも」

「冒険小説ではよくあることですが、お宝の回収を後回しにしたら、遺跡そのものが壊れちゃって結局手に入れられずじまい、なんてことにはならないですよね?」


 マグナは声を上げて笑った。


「その心配は無用ですよ」


 マグナは鞄から、一枚のハンカチを取り出し二人に見せた。


「これは僕が持っている唯一の魔法具です」

 

 悪戯っぽく笑うマグナの元へ、二人は駆け寄った。

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