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魔族だけどダンジョンに行きたい!  作者: 北緯45
第一章 クォール神殿遺跡
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第四話 闇の眼

 クォール神殿内の各所に散らばったクルセイダー達の元へ伝令が走った。


「緊急伝達、アガイア王国内における拠点防衛の任が下った。急ぎ神殿入り口の本隊と合流し、速やかに移動を開始せよ!」


 5、6名の小隊を組み、神殿内で連携行動の熟練度を上げるために、コープスやスケルトン、ゴーストなどを相手に戦闘訓練を行っていたクルセイダー達は、即座に他の部隊と合流しながら神殿出口を目指していた。


 そんな彼らを、影に潜む数多の闇の眼が静かに見ていた。




「どうやら引き上げるみたいですね」


 闇の眼を介して、クルセイダー達の様子を伺っていたロゼがマグナに言った。


「また戻ってくるのかな?」

「アガイア王国へ移動するようなので、当分ここを訪れることはないかと」

「それは良かった」


 神殿内の地下七階にいたマグナ達は、発見されることを恐れ、目立たない場所に身を潜めていた。


「やれやれやっとか、まあ思ったより早かったんじゃね?」


 石床の上に寝転がっていたセクタは、起き上がるなり背伸びをした。

 

「他の冒険者達は?」

「いないみたいです」

「じゃあ始めようか」


 マグナは鞄から数枚の紙を取り出すと、床に広げた。


「これは何ですか?」

「神殿の見取り図です、左から順に地下一階から最奥階まで」

「へぇー、便利だね」

「ロゼさんが居てくれるから、それほど役には立たないのですが」

「そんなことはないですよ」

「いてっ!」


 気恥ずかしくなったロゼは照れ隠しにセクタの頭を小突いた。

 仲間から頼られることに彼女は慣れていなかった。


「で、この見取り図をよく見て欲しいんだ」


 ロゼとセクタは目を皿のようにして、各階の見取り図を見比べた。


「なんか全部似てるから分かりずらいし」

「どの階もほぼ同じ広さですね」

「良いところに気が付きましたね」

「そんなたいしたことじゃ」

「いたいって!」


 再び小突かれたセクタは、不満げにロゼを睨んだ。


「この地下神殿は、意図的にどの階も同じ広さで作られています。間取りも似せてあることから、侵入者を錯覚させて迷わせるようになっているんです」

「言われてみると確かにそうだね」

「違うところは階段の位置くらいでしょうか?」


 マグナは静かに頷いた。


「そこでロゼさんにお願いがあります」

「はい何でしょう?」

「闇の眼を使って、人が入れる場所をチェックして欲しいんだ」


 そう言うと、マグナはロゼに筆を手渡した。


「この見取り図なんだけど、実はかなり古くてそれほど詳しく描かれていないんです。この神殿は死霊使いであるロゼさんにとっては庭みたいなもの、ですが僕にとっては厳しい場所なので」

「なるほど、まだ調べられていない隠し部屋を闇の眼で探せばいいということですね?」


 ロゼの察しの良さに、マグナは笑みを浮かべた。


「その通りです、頼りっきりで申し訳ないんだけど」

「お安い御用です。頑張りますね、わたし!」

「お願いします」

「頑張れロゼ」


 静かに目を閉じたロゼは、意識を集中し始めた。

 神殿内に無数の闇の眼を走らせ、目にした情報を見取り図に書きこんでいった。


 闇の眼は床や壁、天井を這うように進み、わずかな隙間から未知なる空間へと入り込む。

 古い見取り図には次々と新たな情報が書き加えられ、空白だった部分が埋め尽くされた。


「!?」


 ピタリとロゼの手が止まった。


「どうしました?」


 マグナが尋ねると、ロゼはふうと息を吐いた。


「終わりました、……ですが」

「「ですが?」」

「人がいます」


 セクタとマグナは顔を見合わせた。

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