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ルーンブレイド  作者: さくらんぼえっくす
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 -3- -敗戦そして-

時系列では序章の後の話になります。


 レオナルド・バルフォアは、故郷であるノアルを離れ、北の大陸オーランドの城内にいた。傍らで寄り添い、同行しているのは、今年で15になる娘のティナである。



 彼がオーランドに居るのは故郷を捨てたからではない、むしろ国を救いたいが為の行動である。レオナルドは今、希望に満ちていた。





 ノアルは、大きく東西南北に分かれる世界の中で、北の大陸に属する島国である。

 北で一番有名なオーランド王国の少し下、南東に位置する比較的小さな島国である。



10年前までは、北の大地も、オーランドを中心とした、同盟国として、交流も盛んで、争いも無く、平和な土地であった。

 しかし、現在はそのほとんどがアースガルド帝国の支配国であり、北で言うと、唯一オーランドだけが未だにアースガルドに屈せず、抵抗を繰り返していた。



 現在、ノアルは10年前の敗戦後、アースガルド帝国から派遣されたヴァレンタインという男が国王となり、国を指揮、運営している。


 国王が変わり、大幅な法改正が行われ、過剰な税収、上流階級と一般市民との格差が国民を苦しめ、全人口の約3分の1が家を捨て、ノアル城下町地下に広がる下水施設、通称『地下町』への生活を余儀なくされていた。


不幸中の幸いというべきか、本国アースガルドは遥か西に位置する為、圧倒的な支配が及んでいないのか、地下町に下った市民に対しての追い込みはそこまで激しくはなかった。



 ノアル騎士団の一番隊隊長であったレオナルドは、階級で言えば上流階級に当たる。暮らしはむしろ、敗戦前と比べ、高待遇になっていた。しかし、顔見知りが地下町生活に成り下がっていく様や、アースガルドの貴族と思しき者が、次々と国の重要な地位に任命されていく様を見て、ノアルの人間が行き場を失っていくことに憤りを感じ、自ら騎士団を辞退し、同じく一番隊に所属していた、一部の部下達と共に、地下町へと降りていった。



 地下町の生活とはかなり悲惨なもので、食糧難による栄養失調や、不摂生による疫病の蔓延、臭い下水に届かない光、毎年のように大勢の人が命を落としていた。



 レオナルドはそんな環境下に身を置いても、諦めてはいなかった。又いつか、必ずこの国を我々の手に取り戻すと、固く誓っていた。


 レオナルドはノアル騎士団を率いるリーダーであった為、腕には自信があった。レオナルドはフリーの傭兵となり、ノアルに付属するギルドと契約した。そして、モンスター退治等の依頼をこなし、その褒賞金で生活を補い、余った金は地下町の皆に分け与え、たまの休みに城下町の酒場で安酒を飲む、そんな毎日を暮らしていた。



 レオナルドは10年間、ずっと腑に落ちなかった。何故ならノアルが敗戦するとは、夢にも思っていなかったからだ。ノアル騎士団は、それほどに強かった。


 中でも、アースガルドとの戦の際に、奇襲作戦に出た、7番隊隊長のネオ・マクスウェル、4番隊隊長のギルバート・フロスト、この二人の強さは群を抜いていた。


 その二人が負けるなど想像すらしていなかった。ノアル城防衛の任に就いていたレオナルドは、勝利を確信していたのだ。



 しかし負けたのである。ネオとギルバートが死亡したとの知らせが入り、レイモン国王は、我が子の様に思ってきた息子達を失った悲しみに暮れ、敗北宣言を出した後、国王を辞任した。


 以降10年間、ノアルはアースガルドの支配国となり、奴隷の様な扱いを受けてきた。


 それでもレオナルドは、彼等2人の死亡を信じず、暇を見ては捜索し続けていたが、2度と彼等が戻ってくることはなかった。



 10年という長い年月が、レオナルドの信念を少しずつ、だが確実に削ぎ落としていった。

 レオナルドは繰り返す下町生活に疲れていた。ここからの逆転など、本当はもう無いのではないか? そんな不の考えが、寄生虫の様に頭から離れなくなっていた。一人娘であるティナの存在が無ければ、彼の心は完全に折れていたに違いない。



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