-最終章-
オーランドの大噴火から、早くも半年が経とうとしていた。指導者を失ったアースガルド帝国は、次々と領土を失い、今やかつての勢力など、見る影も無く、ただの小国へと成り下がっていた。
世界中の人々が、自身の国の復興作業に追われていた。
オーランドは完全に溶岩で埋め尽くされ、未だにノアルから北を眺めると、黒煙が立ち上るのが見て取れた。
生き残ったオーランドの人々は、全てノアルに移住し、居住区を拡張する作業に、国中の人間が汗を流していた。
ルイス国王は、王の座をレイモンに託し、自分はレイモン国王を補佐する立場で、ノアルに根を据えていた。
皆は戦争や天災で無くなった人々を弔う為、城に面した森の一部を伐採し、亡くなった人達の墓標を立てていた。一際大きく目立つ場所に、ネオとギルバート、そしてジーク、ヨハネスの墓標があった。
今日は皆、働く手を一旦止めて、教会へと集まっていた。ノアルが平和になったら、その時は結婚しよう。その言葉の責任をパレットが取ったのである。
神父はレイモンが勤めた。普段は騎士団で男勝りな服装をしているマリエルであったが、花嫁衣裳で現れると、皆はその美しさに歓声を上げた。
騎士団の一部の人間からは、マリエルらしくないしおらしい衣装に、からかった野次も飛んでいたが、皆の歓声に掻き消される。
二人はとても幸せそうである。レオナルドとティナも大いに喜んでいた。
その頃、二人の男が、森を抜け、ノアルを見つめて立っていた。
「なんかあれから半年も経つと、逆に帰り辛いな」
一人の男が言う。
「だから指輪のことは私に任せて、ノアルに戻って下さいって言ったんですよ!」
もう一人の男が呆れ顔で言う。
「いや、指輪をちゃんと人目の付かない場所に封印するのは俺の仕事だ。ギルバートが命を賭けて成し遂げたんだ。俺には指輪を封印する責任があったんだよ!」
それだけ言うと、男はそばにある墓標に気づく。
「おいっ! お前死んだことになってるぞ、ジーク!」
男は半分笑いながら話す。
「何言ってるんですか! 一番目立つこの墓標はネオさんのですよ!」
そう、二人の男とは、ネオとジークであった。
ネオは幾つかの奇跡によってここに立っていた。
一つはギルバートに時間凍結されたこと。
一つはそれにより落下時の衝撃に無傷だったこと。
一つは噴火で突き上げられた際にヨハネスのそばに落ちたこと。
一つはヨハネスが解除するルーン魔法を使えたこと。
その後、助けられたヨハネスの遺言を受け入れ、指輪を受け取り、そして半ば強引にジークを助け出したのだ。
二人はそのまま取りとめもない小競り合いをしながら、城下町へと入る。
全く人気が無いことに一瞬驚いたが、教会から鐘の音が響き、沸きあがる歓声が聞こえたので、皆教会に居るのだと気づく。
そのまま教会へと足を運ぶ二人。ちょうどその頃、パレットとマリエルは教会から出て、手を繋ぎ、皆が投げつける紙吹雪の中を歩いていた。
その反対側からネオとジークが歩み寄る。
「よう、パレット、マリエル、おめでとさん」
ネオが祝いの言葉を発する。
その場に居る全員が、言葉を失い、次々と紙吹雪の籠を落とした。
その後、二人のお陰で、結婚式が台無しになったのは言うまでもない。




