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ルーンブレイド  作者: さくらんぼえっくす
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 -28- -脱出-



 ネオとギルバートが落下して、2、3分が経ったであろうか、突然大地が大きく揺れた。



 レオナルド達は立っていることも出来なくなり、皆その場で倒れる。その直後、凄まじい地鳴りを伴い、裂け目から熱風と共に真っ赤な溶岩が大量に噴火した。



 数百メートルはあろうかという位に、火柱は天高く舞い上がり、裂け目からはボコボコとクリーム状の溶岩が溢れ出し、溶け切らなかった岩石が隕石の如く、あちこちに落下していた。



「ネオさんーーー!!!!」



 ティナが叫びながら裂け目へと近づこうとしていたので、慌ててレオナルドが手を引く。




「ティナ!! ネオ達はもう助けられん!! 早くこの場から離れないと我々も命は無いぞ!! 皆も立て!! 船まで走るんだ!!」




 レオナルドは皆が驚く程早く、ネオ達を見切った。しかしそれはレオナルドが薄情な訳ではなく、ネオの最後の言葉に殉じているからに過ぎない。




 ネオの願いは、自分と共に命を落とすことではなく、この惨劇から一人でも多くの人間を救うことであるからだ。レオナルドはその場にうずくまっている仲間を強引に立たせ、船まで逃げる様誘導する。噴水のように溢れ出す溶岩は、周りの全てを燃やしながら周囲を覆っていく。もはや一刻の猶予も無かった。



 皆はなんとか立ち上がり、恐怖に脅えながらもオーランド方面へと走っていく。溶岩に追いつかれれば命は無い、やり直しの効かない鬼ごっこであった。足が絡んで転倒すれば容赦なく命を持っていかれるのだ。





 その頃、少し離れた場所にいたヨハネスとジークは、アスモデウスの指輪を見て驚いていた。アスモデウスの精神が抜け落ち、白くなっていた指輪が、また禍々しい黒色の指輪へと戻っていたのだ。




「兄さん! こ、これは!?」




「ふふふ、ああ、さすがはエクスカリバー・ネオだな。どうやったかは解からんが、アスモデウスを封印したようだ。これで私も思い残すことはない」




 ヨハネスとジークの周りにも、容赦なく溶岩が広がり始めていた。



「ジ、ジーク、この指輪を持って、お前は行くんだ」


「いやだ! 私はもう兄さんの傍を離れない!!」



 ジークは子供の様な駄々をこねる。レオナルド達の居る場所とは、すでに溶岩の川で遮られ、姿が確認出来ない状態になっていた。




「ジーク!!」




 溶岩の向こうから声が聞こえる。レオナルドである。


「お前も早く逃げろ!! オーランドはもはや飲み込まれるだけだ!! 船でノアルに脱出するんだ!!」



 ジークはヨハネスを抱える手を離す事は無く、そのまま答えた。



「レオナルドさん達は逃げて下さい。私は兄と共に居ます。ネオさん達のお陰でアスモデウスは再び封印されました。後は、この惨事から脱出出来れば、平和が待っているはずです。私に構わず行って下さい!!」



 叫ぶ為に息を吸うだけで、喉が焼け付く。もはやジークもギリギリであった。



「ジーク!!!! 港に船を一隻置いておく、必ず脱出するんだ!! いいな!!!!」



 レオナルドももはや限界なのだろう、それだけ言うと走り去る足音が聞こえた。




 レオナルド達がバレンチを抜け、オーランドに辿り着いた時には、皆どうしていいか解からず逃げ惑う、地獄絵図のような情景が広がっていた。





「戦争は終わりだ!!!! 動ける者は負傷者を抱えて港へ退避しろ!! 船でノアルへと脱出するんだ!!!!」





 レオナルドが叫ぶ。皆は言われた通り、自分の近くの負傷者を抱え、港へと逃げていく。そこにはもはや、アースガルドもオーランドも無く、ただ天災に恐怖する人々という単純な図式になっていた。



 オーランド城からリックとポールが脱出してきた。二人に抱えられ、負傷したルイス国王の姿が確認出来た。どうやら最悪は免れたようだ。



 しかしまだノアルに着くまでは安心出来ない。天高く舞い上がった数々の岩石が、運悪く頭上に落下すれば、それまでである。レオナルドはネオの言葉に従い、皆が船に乗り込むまで、しんがりを務めた。悲しい事に、ノアルから来た輸送船が3隻、オーランドの輸送船が7隻の計10隻の船が港に待機していたが、全員を非難させても5隻で事足りた。



 戦争と天災がもたらした悲劇の結果である。



 レオナルドは最後に乗船し、オーランドを振り返る。裂け目の噴火が引き金となって、今やあちこちから噴火が見られる、正に地獄の様な情景であった。



 ネオとギルバート、二人の事を考えると胸が痛くなったが、今は皆を救う事を第一に考えるべきだと、自分の頭の中を強引に書き換えた。




 そして船はオーランドを離れ、ノアルへと出向した。




 バレンチに残ったヨハネスとジークは、辛うじて健在であった。噴火口と自分達の間にある神殿が邪魔をし、二人を避けて溶岩が川を作っていた。


 しかし、焼け焦げた大地が二人を蝕み、多少命が長らえるのみで、結論は変わることは無かった。


 腹部に重症を負っているヨハネスは、もはや話すことも敵わず、ぐったりとしている。

ジークも何も言わず、だたヨハネスを抱きかかえていた。




 その時、突然巨大な岩石が、二人の傍に落下した。地面が揺れた衝撃で、ヨハネスは目を覚ました。そしてその岩石を見て、ヨハネスは驚く。その落下物は溶岩では無かった。



「ふふふ、そ、それがお前の出した答えなのだな、ギルバート」



 落下物を見たヨハネスが笑う。



「な、ならば私もまだ死ぬ訳にはいかんな……」



 そう言ってジークの腕から離れ、地面を這いながら落下物へと近づく。




 そして最後の、本当に最後の力を振り絞り、ヨハネスは落下物へと手を伸ばした。




 落下物に触れた瞬間、手にはルーン文字が浮かんだ。




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