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ルーンブレイド  作者: さくらんぼえっくす
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 -23- -ジークとの再会-



 レオナルドとマリエルの2隊は、いち早くノアル城を後にし、東へ向かう定期船に乗船していた。皆船内の休憩室に集まり、人探しに向かうとだけ指示していた為、皆思い思いの行動を取っていた。レオナルドとマリエルはギルバートからの言葉を聞いていた為、騒がしい喧騒の中で、彼等だけが取り残され、緊張の面持ちである。もちろん横にはティナの姿もあった。




 レオナルドは、マリエルの、ジークとはどんな男だったのかという問いに対して、一介の冒険者風であったが、アスモデウスの指輪を探すということに対しては、自身の全てを掛ける程の信念を感じたと答えた。



 それに付け加え、ジーク自身も只の一般市民では無いだろうと答えた。



 ふいにティナが思い出したように喋り出した。


「あ、そう言えば、お父さんとオーランドのバレンチ遺跡行った時、アスモデウスがどうしたとか、書いてある本を見たの思い出した」


「なんだとっ!!」



 レオナルドは驚く。


「なんか横に悪魔みたいな怪物の絵があって、確か…… アスモデウスここに…… ああ、忘れた」


 ティナは思い出せないことが口惜しいようで、頭を掻いている。


「悪魔か……」


 一体オーランドには何があるというのか、レオナルドは言い知れぬ恐怖を感じた。




 一刻も早く東の大陸へと渡りたいレオナルドは、定期船が、安定性重視で、余りスピードの出ない横帆船である事を酷く呪った。


 居ても経っても居られなくなったレオナルドは甲板に出た。ロープを支えにし、波の揺れに耐えながら、生ぬるい風が当たるのを感じ、妙な不安が広がっていくのを感じていた。







 一方ネオはノアルにて、騎士団の出国準備が整う間、ルーンブレイドを手に取り、オーランドの先代国王ロバートの事を思い出していた。ネオ、お前にこの剣を託す。そう言った時のロバートの表情がずっと忘れられずにいた。



 ロバートはそれから程なく、北の大陸の人間なら誰でも知る所の、オーランドで起こった大惨事、オーランド城の大炎上が起こり、ロバートは亡くなった。



 そして王座はたまたま遠征に出ていた為、九死に一生を得た弟のルイスに移り、今ではオーランド城もかつての栄光を取り戻すまでに至った。




 レイモンがネオの肩を叩く、いきなりネオはいつもの大広間の風景に戻った。ネオはレイモンを見て微笑する。自分なら大丈夫だ、心配は要らないという意味が込められた微笑である。



 もはや緊張を通り越して汗すらも出ないネオに、騎士団全員集合の報告が届く。


 ネオ、リック、ポール達は、それぞれ顔を見合い頷く。





 レイモンが皆の前に立ち、凄まじい声で吼えた。




「皆も者よく聞くのだ!! 今オーランドに未曾有の危機が迫っている!! アースガルド全軍がオーランドに向かって進軍しているのだ!! 我々は日頃のオーランドに対する恩赦を返さねばならん!! 今こそ北の大地に住む者達の強さを、奴らに思い知らせてやるのだ!! ウルフガング皇帝はすでに亡くなった!! 間違いなくこれが最後の戦いである!! 自らの手で、明日を掴むのだ!! 勝つのだ!!!!」



 騎士団の歓声で城が揺れる。



「お前等!! 行くぞっ!!!!」



 ネオが先陣を切って、大広間を出て行く。それに続き、皆も次々と出て行く。凄まじい靴音と歓声が大広間の隅々まで響き渡り、覚悟の無い者であれば、耳を塞いでいないと、魂をどこかに連れ去られてしまいそうな、そんな異常な空間であった。







 その頃、レオナルド一行はようやく東の大陸に到着していた。港に降り立つと脇目も振らず、東で一番の大国、ソロモンに向かおうとしていた。



 しかし、その時レオナルドの耳に、聞き覚えのある声が入って来た。自分達が降り立った逆側の港、つまり、南の大陸へ向かう発着港である。



「何故です?! 何故船が出せないのですか?!」



 男は凄い剣幕で声を荒げている。



「ですからお客様、何度も言ってるように、今南はアースガルドに占領されてて、船は出せないんですよ! 今行けば命の保障は無いんです!」



 港の人間であろう者も声を荒げていた。レオナルドは大きく右手を横に出し、皆の進行を止めた。


「だからそこをなんとかお願いすると頼んでいるんですよ!」


 間違いない、今港の人間と揉めているのはジークであった。レオナルドは心臓が高鳴り、鳥肌が立っていた。今から捜索に向かおうとしていたジークが、そこに立っているのだ。


 ジークは隣に黒いローブ姿の男を連れていた。歳はジークの父親くらいであろうか、揉めるジークのそばで、自身も困った表情を浮かべている。


 レオナルドは走った。もうこの状態でジークを発見したからには、どこかに見失うなどあり得ないことだったが、それでも走らずには居られなかった。


「ジーク!!!!」


 走りながらレオナルドは命一杯叫ぶ。


 ジークは驚き、レオナルドの方を見る。一瞬状況が掴めない表情を出したが、すぐにノアルで出会ったレオナルドだと気づき、声を上げた。


「レオナルドさん! どうしたんですか、こんな所で?」


 そばの黒いローブの男も、港の人間もあっけに取られてレオナルドを見ている。


 レオナルドはジークのそばまで来ると、手を股にあて、肩で息をしながらジークを見る。


「ジーク! お前の知っていることを全て話してくれないか?! 今、オーランドが大変なことになっている! アスモデウスの指輪とは何なのだ!!」


 レオナルドの必死の形相に、ジークの顔色が無くなっていく。


「オーランドが、オーランドがどうしたのですか?!」


 ジークも必死で叫んだ。


「アースガルドの全軍が、今オーランドに向かっている! アースガルドの真の目的は、アスモデウスの指輪を探すことだったのだ、お前と同じ目的だっ!!」



 ジークは突然冷静になり、横の黒いローブの男と顔を合わせ、悟ったかのようにこちらを向く。



「みなさん! 急いでオーランドに向かいましょう! 話しは船の中でします、北行きの船を! あの船を止めて下さい!!」



 ジークにそう言われ、後ろを振り返ると、自分達が乗ってきた船が、戻りの航海に出る為、動き出していた。レオナルドは皆に叫び、船の出発を止めるよう指示する。ジークはローブの男と共に、走り出していた。レオナルドも少し遅れて走り出す。




 皆はやっとの思いで、全員船に乗り込んだ。船員はさっき降りたばかりの連中が血相を変えて乗ってきたので、皆不思議そうな顔をしている。



 ジークは船長に、一刻も早くオーランドに向かってくれと頼んだ。船長は生返事で返し、舵を取る。そして、船が港を離れ、北の大陸へと進み出した。



 生ぬるい風が頬に当たり、不安をさらに増長させていた。



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