-15- -その頃オーランドにて-
一方、北の大陸オーランド王国でも、ある動きが見られた。ちょうどネオとレイモンが話をしている頃であった。
オーランド領地西側で、頻繁に繰り広げられていたアースガルドとの戦いが終わり、地の利を持つオーランドが勝利を収め、国は一時の安らぎの中にいた。
王宮に座する国王に、兵が面会を求める報を知らせに入る。
「国王様、リック殿とポール殿が面会を求めております」
オーランド国王、ルイス・F・オーランドは、偉大な北の英雄であった、兄である先代国王、ロバート・F・オーランドの後を継ぎ、現国王として国を運営、指揮していた。
今は亡き兄の意思を受け継ぎ、悪には屈しないと、現在までよくアースガルドの猛攻に耐えてきたと言えるであろう。
ルイス国王は、兵に告げた。
「構わん、通せ」
そう言われた兵は、入り口の扉まで戻り、ゆっくりと左側の扉を開けた。リックとポールという二人の男が、開いた扉から入って来て、国王の前でひざまずいた。
「どうした? リック、ポール、改まって」
二人の男は、お互い顔を合わせ、そしてリックという男が話しを始めた。
「ルイス様、先程ノアルから流れてきた市民に聞きました、ネオが、ネオ・マクスウェルが生きていたというのは本当でしょうか?」
二人は長い間、西に設置された前線基地で指揮を取っていた為、今しがたようやくオーランドに戻ってきた。そこでネオの話を聞きいれ、それが真実であるのかをルイス国王に質問したく、謁見を申し出たのだ。
ルイス国王はにやりと笑い、
「ああ、どうやら本当らしい、おとついの話だ、レオナルドが自分の娘を連れて逢いに来てな、その時に話していった、もはや間違いあるまい」
と、嬉しそうに話す。二人はまた顔を合わせ、驚きの表情を見せる。
リックとは、元ノアル騎士団2番隊隊長リック・ファーマーである。騎士団の中で一番のお調子者で、いつも明るく女性に人気があり、ナルシストな部分もあった。
そして、ポールとは、リックの2番隊副隊長のポール・テイラーである。非常に大人しく、内向的な性格だが、その一方芯は非常に熱く、悪に屈しない正義感を持った男である。
二人は亡くなった6番隊隊長のロディを、弟のように可愛がっていた。そのロディが
斬られ、二人はやり場のない憤りを抑え切れなかった。レイモン国王が国を去り、そして、レオナルドやマリエルが、民の為に地下町に降りるという話しを聞き、ノアルに骨を埋める覚悟だった二人は、レオナルド達と時を同じく、騎士団を辞退した。
しかし、民の為、ノアルに残ることを決意したレオナルド達とは志を異にし、二人はノアルにアースガルドを討つ剣は無いと判断し、オーランドに渡った。民を護るのも正義なら、ロディの仇を取る為に、アースガルドを討つべくオーランドに渡った二人も、また違う形の正義と言えた。
「ルイス様、ノアルから流れてきた私達を快く隊に入れて頂き、本当に感謝しています、ですが、ネオが生きていると判った今、私達は……」
リックがそこまで話すと、ルイスは手でリックの言葉を遮った。
「みなまで言うな、判っている。次にアースガルドが攻めてくるまで、おおよそ2週間と見た」
ルイスはそれだけ言うと、横で待機していた兵に向かって叫んだ。
「おいっ! 町の復興に配属されている護衛隊は今何隊いる?!」
そう質問された兵は、背筋を伸ばし答える。
「はっ! 只今6隊が配属されて復興に当たっています!」
「ならば、4隊に減らして作業させろ! そして残りの2隊をここへ呼べ!」
「はっ! 了解であります!」
兵は一目散に王宮を飛び出た。
「ルイス様……」
リックとポールはあっけに取られていた。
「お前達二人に、我が国の自慢の兵、王国護衛隊を2隊与える。アースガルドにも屈しない屈強の部隊だ、文句あるまい?」
ルイスは笑いながら言った。
「ですがルイス様、私達に何故そこまで?」
ポールがそう言うのも無理はない。
「ふふふ、ネオはな、私の亡き兄ロバートの命の恩人であり、大切な友人でもあるのだ、本当であれば、ネオが立ち上がるのなら、オーランドは国を挙げて彼に加勢せねばならん、だが、私にはオーランドの大勢の民を護る義務がある。全軍をお前達に貸し与えることが出来ない私を許してくれ」
ルイスは二人に対して、頭を下げた。
「そんなっ! ルイス様、めっそうもない!」
リックは両手を振って、ルイス国王の謝罪に対してそう答えた。
「しかしこれでもまだ、厳しい戦いになるのは間違いないぞ。我々が100名ほど兵を送ったとしても、ノアル城には300人近い兵が居るはず。普通の攻城戦では、城にいる側が圧倒的に有利だ、様々な城の防衛機能を使えるしな、なので勝つ為には、攻める側が圧倒的兵力差を持っていることが条件になる、恐らくノアルを落とすには、本当なら600人程必要だ。それでも行くのか? 二人共」
ルイスは二人に問いかける。リックはルイス国王を見上げ、即答した。
「はい、私もポールも、ノアルの誰かが立ち上がる時には、必ず加勢に行くと誓っています。ネオが生きていたなら、あいつは必ず立ち上がります。あいつは勝てる勝てないで行動を決める男ではありません。それは我々が良く理解しています」
ルイスは二人の決意を知り、もはや何も言うまいという面持ちで、
「そうか、ならば行くがよい二人共。港に船を準備する。ネオを、レイモン殿を、そしてノアルを…… 救ってやってくれ。そしていつか、共にアースガルドを討とうではないか」
と話し、二人の下へ歩き、二人の肩に手を置いた。
「必ず! ルイス様!」
二人の心には、もはや戦力差など関係ない、確固たる決意があった。




