-14- -ネオの決意-
この章のネオの怒りは勝手にキャラが喋る感じで文章が進んで行きました。
性格を決めると、ある程度物語は勝手に進むんだなと実感しました。
「あんたの夢はここで終わりか? 理想の国作りはまだ途中じゃねぇのかよ! あんたの家族が沢山苦しんでるんだよ、なんとか言えよ! じじい!!」
ネオは目に涙が溜まっていた。
「ロディがな、」
レイモンは両肘をテーブルに付け、俯きながら話し始めた。ロディとは、ノアル騎士団6番隊隊長ロディ・ブックのことである。
ロディは、ネオと同じく、レイモンの理想に共鳴し、ノアルに根を下ろした男である。性格はネオと正反対で、いつも大人しく、決して声を荒げない、素直で優しい人物であった。
「私に代わって、アースガルドから派遣されたヴァレンタインという男が、ノアル国王に就任する日、皆就任式の為、大広間に集合させられた。いつも大人しいロディが、急に剣を抜き、私はレイモン様しか、この国の王と認めない、と叫んだのだ、私が止める間もなく、ロディはヴァレンタインに斬りかかった、その時、同じくアースガルドから来た、側近のイアンという男が割って入り、一瞬でロディを斬り捨てた。」
レイモンはブルブルと身体が震えている。
「ロディは絶命し、身体と首が別の場所に落ちた」
テーブルにぽたぽたと涙が落ちる。
「私の夢に付いてきたばかりに、ロディの命は果てたのだ、私が、私がロディを殺したのだ!! 周りを見ると、皆、腰の剣に手を当てていた、私の語った夢が、皆を暴走させていると思った。もう沢山だった、私は皆に剣を引けと一喝した。もう、誰一人失いたくなかったのだ!!」
レイモンは涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ネオを見た。しかしネオはまだレイモンを諦める訳にはいかなかった。
「だから、だからもう夢を追うのは終わりにするってか。ふざけんじゃねーぞ! じじい、あんたの中のロディは今なんて言ってる? あんたを信じたから死んだんだ、あんたに付いていくんじゃなかった、そう言ってるのか?! 言ってねーだろ!! 少なくとも俺の中に居るロディはこう言ってる。レイモン様、どうか私の為に心を痛めないで下さい、どうか夢を途中で諦めないで下さい。私は、あなたと出会えて幸せでしたってな!!」
ネオはレイモンの折れた心を必死で支えた。
「私も、夢を途中で諦めたくはないさっ!! だが、もう無理だ、城はアースガルド人で埋め尽くされている。そして側近のイアン、あの男は強すぎる。私が夢を追えば、また大切な家族が死んでいく…… それならば、私はもう夢を見たくない!!!!」
レイモンは文字通り泣き叫けんだ。
ネオは怒りで身体の震えが止められなかった。
「じじい!!!!」
ついにネオはテーブル越しに、レイモンの胸倉を掴む。
「こんなもんかよ! じじい! あんたの夢はこんなもんだったのかよ! 例え世界中の人間が無理だと言っても、私は夢を諦めないって、あんたそう言ったよな?! あれは嘘だったのかよ!! ええっ!!」
ネオはぶるぶると震えながら、さらに叫ぶ。
「最初っから諦めるんだったら、勝手に俺の心を熱くさせてんじゃねーよ!!!!」
ネオはレイモンを椅子に叩きつけた。レイモンは勢い余って、椅子から転げ落ちた。
地面に倒され、起き上がろうともしないレイモンを見下ろし、ネオは静かに話した。
「じじい、今日はな、俺が生きてたって報告と、最後の別れを言いに来た」
ネオに背を向け、倒れていたレイモンは、驚き、ネオを見た。
「じゃあな、じじい、今まで色々迷惑掛けた、元気でな」
ネオは振り向き、森へ向かって歩き出した。
「ネオ!! 何処へ行く気だ!!」
レイモンは叫ぶ。
「決まってんだろ、城に行ってニセ国王をぶっ倒すんだよ」
ネオは歩きながら言った。
「やめろ!! やめてくれネオ、そんなことをしても無駄死にするだけだ!! お前まで、お前まで失いたくない!!」
レイモンは、倒れながら手を伸ばしてネオに懇願する。ネオは背を向けながら立ち止まり、両手を握り締める。そして、森中に響き渡るほどの声で叫んだ。
「うるせぇよじじい!!!! もう遅いんだよ!!!!」
手は、血が滲むほど硬く握り、ぶるぶると震えていた。
「人ん家の親父をここまで苦しめて、黙ってる息子なんていねーんだよ!!!!」
初めてネオは、レイモンを親父と呼んだ。ネオはそのまま歩き去り、やがて森の中へと消えていった。
ネオが、城下町正門前に着いた時には、辺りはすっかり暗くなっていた。城下町から、ノアル城までの道のりは、途中で階段を何度か上るが、基本真っ直ぐ歩けば城に辿り着けるようになっていた。
ネオは、その真っ直ぐな道の、さらに真ん中を歩き、城へ最短距離で向かった。まるで、自分の揺ぎ無い信念を主張しているかのようであった。
遠くに城から伸びる跳ね橋が見えた、跳ね橋の奥には警備兵が二人立っている。ネオは見つかることなど微塵も気にせず、歩を進めた。
「こらっ! 馬鹿ネオ!」
道端の方から声が聞こえた。よく見ると誰かが木にもたれ掛かっている。
「やっぱりあんたは馬鹿だったね、正面から城に攻め込んで、死にたいの? これ以上進むと見つかるわよ」
そう言って、ネオに近づいてきた。マリエルであった。
「邪魔するな、マリエル」
ネオは信念の塊であるかのように、また城へと歩き出す。マリエルは呆れた顔で答えた。
「別に邪魔する気はないわよ、私達だって今から城に攻め込むつもりだしね。ただし、あんたと違ってこっちは裏口から行くけどね」
ネオの足が止まる。
「ネオ、あんたがレイモン国王の為を思って、戦おうとするのは判るわ、でも怒りに任せて正面から攻め込むなんて、馬鹿のすることよ。本当にノアルを救いたいと思うのなら、勝たなきゃ意味無いでしょ? 私に就いて来て」
マリエルはそれだけ言うと、ネオがどうするかを確かめもせず、後ろを向き歩き出した。そして、城下町の脇にある、地下町への入り口へと降りていった。
以前のネオであれば、間違いなくそのまま城に攻め込んだであろう、しかし今は、仲間を信頼することを知り、また、仲間が自分を信頼しているのも知っていた。
この行動は、自分の我を通すだけの無謀な行動であったと、ネオは悟った。そして、ネオはマリエルの後を追った。
最短距離で城に攻め入りたい、それはすなわち、ネオの怒りの量を表していた。そして同時にそれは、レイモン国王への愛情の量でもあった。
前を歩くマリエルに、ネオの怒りが伝染病のように飛び火し、アースガルドに対する怒りとなって、マリエルの心にも火を付けていた。




