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ルーンブレイド  作者: さくらんぼえっくす
13/31

 -12- -国王レイモン-

ネオとレイモン国王との再会

とても書きたかったエピソードです。


 朝になり、レオナルドの家に押しかけていた皆は、一人、また一人と目を覚ました。


 遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。どうやら外は良い天気のようである。起き上がり、椅子に座る者や、まだ昨日の酒が残って、頭を押さえている者、目をこすり、まだ眠そうな者まで、皆思い思いの行動を取っていた。



 すると、ある異変に気づく、何処を見回してもネオが見当たらないのだ。


 ティナはレオナルドを無理矢理起こし、ネオが見当たらないことを告げると。



「あぁ、ネオなら心配要らない、夜には戻るさ」



 そう言って、また横になった。



「もう! お父さんったら! ネオさんは何処行ったの?」

「聞いてない」


 レオナルドは横になりながら言った。


「もうっ! なんで聞いてないのに夜に戻るって判るのよっ!」


 ティナはレオナルドの身体を揺さぶる。レオナルドはティナを無視しながら話し始めた。



「皆よく聞いてくれ、ネオが戻ったら、間違いなく一人で城に乗り込むだろう。

 あいつの決意は誰も止められない、皆もよく知っている筈だ。私はネオと共に行く、皆もどうするか、夜までに決めてくれ。

 城には200人から300人の敵が居る、絶望的な戦いだ、家族や友人、そして恋人、様々な理由で、どうしても行けない者もいるだろう、参加出来ないからといって、誰も責めたりはしない、無理なら無理と、遠慮無く言ってくれ」



 レオナルドは相変わらず横になったまま喋っている。



「ちょっとお父さん! だからなんでそんなこと判るのよ!」


 自分を無視して話しを進めるレオナルドに、とうとうティナは怒りだした。


「うるさいな、ティナは、ネオなら多分レイモン国王のとこだ」

「え? そうなの?」


「ああ、昨日ネオに国王の居場所を教えた。ネオとレイモン国王はな、血の繋がりこそ無いが、本当の親子よりも固い絆で結ばれている。

 ネオは心に傷を負った国王を見て、平然としていられるほど出来た人間ではない。負けると判ってても一人で乗り込むさ、なら、一緒に行くしかないだろ?」



 そう言うとようやく起き上がり、その場であぐらを描き、皆を見つめた。



「城下町の鍛冶屋に話しを付けてきます、城の連中とやり合うには、武器が少なすぎますからね」



 パレットが一番に立ち上がり、扉を開け、出て行った。



「たしか、この下水施設の奥に、城に直接繋がってる道があった筈、ネオは馬鹿だから、放っておいたら正面から城に入るわ、やるなら奇襲でしょ?私は使えるかどうか確認してくる」



 マリエルも出て行った。


「俺も!!」

「私も!!」

「自分も!!」


 皆それぞれ、決戦に備え、準備に向かった。誰一人辞退する者は現れなかった。



「お父さん、私も……」

「駄目だ!!」


 レオナルドはティナが最後まで喋る前に否定した。


「駄目だっていっても行く!」

「駄目だ!!」


「い・や!! 絶対行く!!」


 こうなったらテコでも動かないとレオナルドは知っていた。一度言い出すと聞かないのは母ミネルバ譲りである。


「判った、じゃあ一つだけ約束してくれ、お前はマリエルの傍に居ること、いいな?」


 マリエルは元3番隊隊長である。ティナには優しいが、腕は立つ、レオナルドはこれ以上の適任者は居ないと判断した。


「わかった!」


 ティナは嬉しそうに答えた。




 その頃ネオは、地下町を抜け城下町に上がっていた。


 普段なら子供が走り回り、買い物をする人達で賑わっていた筈だが、今は全く人影は無い。皆自分達の生活すらままならず、生きることに必死なのだろう。


 怒りと切なさが入り乱れ、ネオは城下町を後にし、東の森に入っていった。





 1時間ほど森を歩き、ようやく目的の偵察小屋が目に入った。レイモン国王より以前の国王の時代、海から来る敵をいち早く察知する為に、作られた小屋らしいが、今は使用されておらず、無人のまま放置されていた。



 小屋の横にテーブルが置かれ、切り株で作られた椅子が4つ置いてあった。その一つに、随分とやつれた表情の、レイモン国王が座っていた。



 幾分白髪が増え、以前より酷く弱々しく見える、恐らく以前の凛とした立ち振る舞いでは無く、着ている服も薄汚れている為だと、ネオは思った。


 ネオは叫びたい衝動に駆られたが、ぐっと我慢し、近くの木に手を付き、レイモン国王に話しかけた。



「隠居するにはまだ早いんじゃねぇのか? じじい」


 レイモンはびくりと肩を震わせ、ネオを見た。暫くの間、レイモンの表情が固まる、そしてようやく事態を理解したのか、



「ネオ!! おおネオなのか!!」



と、レイモンは驚きの表情を見せる。



「お前!! お前生きていたのか!!」


「ああ、心配掛けたなじじい、10年ばかり眠ってた」



 ネオは敢えて、ギルバートのことは話さなかった。



「そうか、そうか、よかったなネオ、私はお前が死亡したと聞いて……」



 レイモンは目に涙を溜めている。



「んなことはどうでもいいんだよ! じじい、てめえなんで最後まで戦わねえ! 自分の国をアースガルドに渡して、こんなとこで何してる!!」



 ネオは怒りの表情で吼える。

 レイモンは、悲しい表情で、大きく一度溜息を付き、ゆっくりと話し始めた。




「ネオ、私はあの戦争で、多くの仲間を失った。自分の身を失うより辛かった、そして、お前とギルバートが死亡したと知らせが入り、皆の士気は大きく下がった。あのまま戦いを続けていれば、皆殺されていた。私には降伏するしか道は無かった。

 アースガルドに支配され、辛い暮らしになるだろうが、それでも死ぬよりはマシだ。皆の幸せを考えると、私にはそうするしか選択肢が無かったのだ」



 レイモンは悲しい表情でネオに訴え掛ける。



 ネオは真っ直ぐレイモンに向かって歩き出し、テーブルに激しく手を叩き、叫ぶ。


「戦って死ぬより、降伏して奴隷になる方が幸せだと?! じじい!! てめえと共に戦って死ぬ事が、何故不幸だと言える!!!!」



 レイモンも立ち上がり、ネオに吼える。



「それは覚悟があるから言える台詞だ!! 民の中には、生まれたての子供や、その子を育てる母親、覚悟を持たない者もいるのだ!! それが国だ!! 最後まで戦うと言うのは、それら覚悟を持たぬ者に、無条件で死ねと言ってるのと同じだ!!」



 ネオは、レイモンの言う事にも一理あると感じたのか、そのまま椅子に座った。



「じじい、それで生き長らえたノアルの人々が、今どうなっているか知ってるか?

 城下町の下に下水施設があったよな? 今はほとんどの人がそこで生活しているらしい、俺も詳しくは知らないが、飢えや病気で毎年毎年大勢の人が亡くなっているって話しだ。じじい、あんたが生かしたその、覚悟を持たない者達は、結局2、3年必死に生き長らえて、苦しみながら死んでいる。今、俺達が話しをしているこの瞬間も」



 ネオは訴え掛けるようにレイモンに話す。

 レイモンは俯き、黙りこんだ。



「じじい、あんたと始めて逢った時の事、覚えてるか? 15年程前だったか?

 俺はフリーの傭兵で、故郷を持たず、ただ仕事が多いって言う理由でノアルに居た。

 仕事終わりに安い酒を飲むのが日課だった。両親を知らない俺は、ずっと一人で生きてきた、どこの国に行っても同じ、故郷を持たない俺は差別され、冷たい目で見られた。」


「だから俺は、誰にも頼らず、誰にも媚びず、何時しか人を信じる事も辞めていたよ。そんな時にあんたと出会って、俺は変わったんだ。誰かの為に剣を持つようになった。あんたが俺を変えたんだよ。他の誰でもない、あんたの国民を思う熱い情熱が、俺の氷の心を溶かしたんだよ!」



 ネオはそう言うと、静かに昔話を始めた。



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