-11- -宴の後-
「ルーンブレイド」をネオが持つに至ったエピソードはちゃんとあるのですが、
この流れだと出さずに終わるかも知れません。
レオナルドの家では、皆が宴の真っ最中で、近くに住む住人まで、驚いて顔を覗かせるほどの大騒ぎであった。女達が次々と料理を運び、男達は肩を組み合い、なにやら楽しげに歌っている。『ネオが戻った!!』『ティナが助かった!!』と大騒ぎである。
上に住む城下町にまで届くのではと、心配になるほど羽目を外し、そしてそのまま夜になり、皆レオナルドの家で泥の様に眠りに付いた。
宴の主人公の一人であったネオは、ようやく開放されたという表情を見せ、一人起き上がり、夜の地下町を歩き出した。
ちょうどレオナルドの家から通路を一つ曲がった場所に、鉄柵から月の光が差し込む場所があった。煉瓦に囲まれ、湿気の多い地下町で、ここは格好の休憩場所であった。
ネオは光が差し込む場所に腰を下ろし、先程のルーンブレイドを手に取り、なにやら独り言を呟き始めた。
「すまねぇロバートじいさん、約束、破っちまったよ。でも悪いが、俺は後悔してねぇよ、俺にはあのままティナを見殺しになんて出来ねぇ」
ネオは俯き、少し寂しげな表情を見せる。
「でもなんでだ? なんでじいさん、オーランド人でもない俺に、こんな大事な剣を託した? その上、息子二人連れて勝手に死んじまいやがって、返すこともできねぇときやがる」
ぐっと剣を両手で握り締める。
「ふんっ、まぁなんとかしてみるよじいさん。俺が死んで、あの世で逢ったら、幾らでも説教は聞いてやるから、勘弁な」
ネオは月を見つめ、そう呟いた。
すると、誰かが歩いてくる足音が聞こえた。ネオは、ルーンブレイドを腰に戻すと、手を頭の後ろに組み、月を眺めた。
通路を曲がり、姿を見せたのはレオナルドであった。
「どうしたネオ? 一人でこんなとこに、眠れないのか?」
そう尋ねると、レオナルドは隣に座った。
「いや、気晴らしに外に出てみようと思ったら、いい場所をみつけたんでな、ただそれだけさ」
二人に沈黙が流れる。遠くで動物の遠吠えが聞こえ、木々のざわめきや、虫の声が耳に入って来た。頭を掻きながらネオが口火を切る。
「レオナルド、さっきはティナの手前、黙ってたんだが……」
「なんだ? 言ってみろ」
レオナルドは月を眺めながらそう言った。
「お前、ミネルバはどうした?」
ネオがレオナルドの方を向き、尋ねる。
レオナルドは下を向き、暫く黙っていたが、ゆっくりと口を開く。
「死んだよ、お前が居なくなって、1年もしない内の話しさ。ティナがアースガルド兵の弓矢に当たって、先に付いてた毒にやられてな、もう長くは持たないと城の医師に言われた。あいつはティナを助ける為に、古代ルーン魔法を使った。そして、その4日後に死んだ」
また二人の間に沈黙が流れる。
「すまん」
ネオはレオナルドに頭を下げた。
「おいおい、何故お前が謝る?」
レオナルドは苦笑交じりで答える。
「俺が居れば、こいつでミネルバを救えた」
ネオはルーンブレイドを握った。
「それはお前のせいじゃないだろ? 仕方の無いことさ。それにな、今は寂しくはないんだ、最近、ティナを見てると、あいつが傍に居て、見守っている気がしてならない、だから、ティナさえ居てくれれば、私は寂しくなんかないのさ」
レオナルドはネオの肩を叩く。
「そうか……」
ネオはそう呟き、また月を眺めた。
「ネオ、お前これからどうするつもりだ?」
レオナルドはネオにこれからのことを尋ねる。
「どうするって、決まってんだろ? ノアルをアースガルドから取り戻すさ」
「ふんっ、簡単に言ってくれるな。今や城に居るのは全てアースガルド人だ、国王から騎士団から、何から何までな、対してこっちは20人かそこらだ。こっちが剣を持って、向こうが石ころ持ってでも勝てないぞ。普通に一国を落とすのと変わらないんだからな」
レオナルドは半分呆れて呟く。
「その方が逆に手間が省けていいぜ、敵か味方か考えなくてすむってもんだ。それより、こんな国の一大事だってのに、あのじじいは何処行ったんだ?」
ネオがそう尋ねると。
「レイモン国王か? 国王は、あの戦争で多くの仲間を失ったことで、今でも酷く心を病んでいる。今は森を抜けたノアル大洞窟の北よりにある、昔偵察用に作った小屋があっただろ? そこに一人で住んでるよ。アースガルドの奴等は、その場所をまだ知らんがな」
「何やってんだ、あのじじいは……」
ネオはそれだけ言うと立ち上がり、
「そろそろ寝るか? いつまでもここに居ると風邪引きそうだ」
と、背中やお尻のホコリを叩きながら言った。
そして、ネオとレオナルドは家に戻った。




