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ルーンブレイド  作者: さくらんぼえっくす
11/31

 -10- -復活-

やっと主人公復活しました。

ここから物語はようやく動き出します。



 次の日になっても、ネオはまだ目を覚まさなかった、しかし、体温は通常に戻り、もはや只眠っているだけの状態に見えた。



 地下町に暮らす元騎士団の仲間達は、ネオの復活を期待し、皆レオナルドの家に駆けつけていた。ティナは皆に要らぬ心配を掛けぬ様、長袖でルーン文字を隠していた。ティナの事は、パレットとマリエル以外知らない為、皆はただネオのことだけ考えており、幸い暗い雰囲気は微塵も無く、皆の顔には希望が溢れていた。




「いつから私の家は、皆のたまり場になったんだ? ネオが目を覚ませばちゃんとお前達にも連絡する、だから家でおとなしくしてろ!」


 レオナルドは椅子に腰掛け、半分呆れていた。


「いいじゃないお父さん、皆一秒でも早くネオさんに会いたいのよ」


 ティナがそう反論すると、皆はその通りだと言わんばかりに、頷いた。多勢に無勢、レオナルドの負けである。レオナルドはそっぽを向き拗ねていた。

 そして、ついに皆の期待していた瞬間が訪れた。





『ガチャ!』





 寝室の扉が開き、中からネオが顔を出した。10年前奇襲作戦に出た、当時そのままのネオ・マクスウェルが、ようやくノアルに還ってきたのだ。



「ネオ!!!!」


 レオナルドが叫ぶ。



「ネオさん!!」


「ネオ!!」



 周りの仲間も次々と声を上げた。



 きょろきょろと辺りを見回し、ネオは不思議そうな顔をしている、無理もない、ネオからして見れば、奇襲作戦に出た後、いきなり10年もの時が進み、騎士団の暮らしとは程遠い、薄汚い部屋で目を覚ましたのだから。


 そして、レオナルドを見つめ、軽く微笑み、第一声を放った。



「老けたな、レオナルド」



 レオナルドは笑顔を抑えきれず、言葉を返す。


「ふんっ! あれから10年だ! お前は寝すぎだ、ネオ」


 そしてネオはティナの元へ歩み寄り、


「ティナか? お前大きくなったな。ミネルバに似て美人になった」


ネオはそう言いながら、ティナの頭をぐしゃぐしゃに撫でた。


「ああ、もう! 髪が乱れる! でもよかった、ネオさん無事で」 


 ティナは髪型を整え直し、そう言った。ネオは、ティナが一人だけ長袖を着ている事に気づき、一瞬顔色を変えた。


 周りの皆は、もはや我慢しきれないという感じで、一斉にネオに飛び掛った。



「隊長!!」

「ネオさん!!」

「よくご無事で!!」

「心配しましたよ!!」



 ネオは仲間にもみくちゃにされながら、


「どうやら、えらく皆に心配掛けたみてーだな、すまなかった」


と、仲間に詫び、


「ちょっと皆待ってくれないか? レオナルドに確認したい事があるんだ」


と言い、真剣な表情になった。



 レオナルドは、


「私もお前に聞きたい事がある」


と言い、二人は向き合った。周りの仲間は一歩下がり、二人を見守った。


「なんだ? レオナルド」


 ネオがそう言うと、少し辛そうに俯き、又顔を上げ、レオナルドが言った。



「ギルバートか?」



 レオナルドはそう一言だけ告げると、ネオの表情が固まる。皆意味が判らなかった。そして暫く沈黙が続き、ネオが口を開いた。



「あぁ、そうだ、後ろから突然な、気づいた時には、もう、動けなかった」



 皆ようやく、ギルバートが裏切ったことを知り、驚きを隠せなかった。


 ギルバートは騎士団の中でも非常に無口で、近寄りがたい印象であったが、心はとても優しく、裏切るなどという行動を取るとは考えられない男であった。



 レオナルドは、やはりという表情を見せ、


「酒場で逢った男がな、洞窟内部にお前と思しき人間が、氷付けになっていると教えてくれて、もしやと思ったが、あのギルバートが…… 信じたくはなかったな」


と言うと、酷く落ち込んでいた。




「次は俺の番だな」


 ネオはそう言うと、つかつかとレオナルドの所まで歩み寄った。そして、愛剣を抜き、レオナルドの首筋に当てた。



「ネオ!!」

「ネオさん!!」



 周りの仲間が一斉に叫ぶ、レオナルドは椅子に座ったまま微動だにせず、右手で皆を制した。


「構わん!! 皆動くな!! で、なんだネオ、確認したい事って」


 レオナルドは真っ直ぐにネオを見つめた。



「俺の覆っていた氷、ギルバートが昔、一度だけ見せた、時間さえも凍らせるあの魔法で間違いないな?」



 ネオは剣を、レオナルドの首筋に当てながら質問した。



「あぁ、間違いない」



 レオナルドは間髪入れず、そう答えた。



「あれは普通の魔法で溶かす事は出来ない。どんな炎を以っても一滴足りとも水には還らない、それはお前も一緒に聞いたから知っているはずだ。レオナルド、お前古代ルーン魔法を使ったな?」



 少しネオの口調が強くなる。レオナルドは、ここでネオの怒りの理由を理解した。



「あぁ、使った」



 表情を変えず、レオナルドは答える。



「古代ルーン魔法を使えば、人はどうなるのか、お前は知っているな?」



 少しだけ沈黙が続き、レオナルドは口を開く。



「あぁ、知っている」



 ネオの顔が怒りの表情に変わる。



「最後の質問だ、答えによってはお前を許さねぇ、何故それを知っててティナにやらせた!! 答えろ!! レオナルド!!」



 ネオはこの暑さの中で、一人だけ不自然に長袖でいるというだけで全てを見抜いていた。

 レオナルドにとって、ネオの怒りはもっともであった。只でさえ誰かの犠牲で、助けてもらうなど、ネオがそういうことを望まない人物だと、レオナルドはよく知っていた。その上その役目を、自分の親友では無く、幼い愛娘に押し付けたようにネオには見えるのだ、激昂するのも無理は無かった。



「違うの!! ネオさん!!」

「ティナ!! お前は黙っていなさい!!」



 ティナがネオに真相を打ち明けようとしたが、レオナルドの一喝で止められた。


 そして、ゆっくりとレオナルドが口を開いた。



「ネオ、お前、今のノアルの現状を知っているか? お前とギルバート二人の死亡が伝えられ、ノアルは敗戦した。それから10年間、皆アースガルドに無理矢理働かされ、利益のほとんどをアースガルドから来た貴族が奪っていく。働くのを放棄した人間は、皆この下水施設で泥水をすすりながら生きるしかなく、毎年大勢の人間が、飢えや病気で亡くなっている。私は、いや、ノアルの人間全ては、ネオ、お前という光を必要としているのだ!! お前が還ってくる為に、誰かが犠牲にならなければいけないと言うのなら、それは私であろうと、ここにいる皆であろうと、もちろん愛娘ティナであろうと、誰であろうと喜んで犠牲になる!! とうとう、そこまでの国になってしまったのだ!! このノアルはっ!!」



 レオナルドとネオは暫く二人、見つめ合ったまま固まっていた。



 ネオは静かに、自分の剣を鞘に納め、口を開いた。



「判ったよ!」



 そう言い放つと、手を頭の後ろに回し、ふて腐れた感じでレオナルドの隣に座った。

 すぐさまティナがネオの元へ駆け寄り、



「ネオさん! 私が勝手にやったことなの! 本当はお父さんがネオさんを助ける為に、契約しようとしてたのに、私が横から勝手に……」



 ティナがそこまで言うと、ネオはティナの頭をポンッ! と優しく叩いた。



「判ってるよ、レオナルドがどういう人間か、俺も良く知っている筈だったんだが、なんだか無償に許せなくなってな…… すまん、ティナ、助けて貰って、有難うな」



 レオナルドはティナの肩を叩き、ネオは全て判ってると言わんばかりに、首を左右に振った。


 そして、ティナと周りの皆に再び笑顔が戻った。



「ティナ、お前腕を巻くって見せてみろ」



 ネオは唐突に言い出した。しかし、ネオの顔はとても真剣な表情をしていた。ティナは戸惑い、レオナルドを見た。レオナルドはゆっくりと頷いたので、ティナは服の右袖を捲くった。


 右腕にびっしりとルーン文字が黒く刻印されている、周りの皆がざわめく中、ネオは呆れた表情で口を開いた。



「お前は子供の時からそうだったよな、病気に掛かっても、痛いだの、苦しいだの一言も言わずに我慢してやがる、本当可愛くないよな。もう我慢すんなよ、右腕が激痛で千切れそうに痛いんだろ?」



 ネオはそう言うと、レオナルドは驚いた表情で、



「ティナ! そうなのか?! 痛むのか?!」



と、心配そうに声を掛ける。


「大丈夫よお父さん、今はそんなには痛まないから……」


 明らかに辛そうな表情である。


「ったく、そこまで頑固なのは誰に似たんだか、ティナ! 右腕をそこのテーブルの上に置け!」


 ネオはティナにそう言った。戸惑いを見せるティナに、レオナルドは、


「ティナ、ネオの言われた通りにしなさい」


と、ティナを促した。そしてティナは右腕をテーブルの上に置いた。



「ティナ、そしてレオナルド、俺の事を信じているか?」


 ネオは固い表情でそう言った。


「当たり前だ! 何をするのか知らんが、やるならやれ!」


 レオナルドはあっさりとそう言った。


「はい、私もネオさんを信じます」


 ティナもあっさりそう言った。


「なら止めるなよ!」


 ネオはそう言って笑った。



 ネオはティナの腕が乗るテーブルの横に立ち、今まで一度も抜いたことの無い、翼の鍔を持つ剣を抜いた。


 剣には、ティナの腕と同じく、ルーン文字が黒く刻印され、剣自体はクリスタルの様に透明であった。



「ネオ!! あんた何する気なの?!」



 奥で見ていたマリエルは驚いて思わず叫ぶ。



「黙ってろ!!」



 ネオはマリエルを制し、ゆっくりと剣を振りかぶった。

 そしてそのまま、ティナの腕目掛けて、思い切り振り下ろした。




 皆はネオがティナの腕を切ったと思い、思わず目を覆った。ネオが剣を鞘に戻す音が聞こえ、うっすら目を開けた。


 そしてネオは静かに話しだす。


「どうだティナ? 腕はまだ痛むか?」


 そう尋ねられたティナは、自分の右腕を見て驚いた。腕は切れてないどころか、さっきまであったルーン文字が完全に消えていた、そして腕から来る激痛も一切無くなっていた。



「え? どういうこと? もう全然痛くない」



 ティナは余りの衝撃に目を丸くしている。


「ティナ!! お前、腕は!? それに文字が消えて…… ネオ!! これは一体!」


 レオナルドも訳が判らず混乱している。


「この剣は、人を切ることは出来ない、ただルーンを断ち切る剣なんだよ、先代オーランド国王のロバートじいさんから貰ったルーンブレイドさ、オーランドの秘宝らしい、もう心配ない、契約は解除した。ティナは大丈夫だ」


 ネオはそう言うと、


「もう、こんな無茶するんじゃねーぞ」


と、ティナの頭を軽く叩いた。



 皆はティナが犠牲にならずに済んだ事実を、じわりじわりと実感していき、爆発するように歓声を上げ、抱き合って喜びを噛みしめ合った。


 レオナルドとティナは、お互いに涙を流しながら抱き合った。 

 そして、部屋の隅で、マリエルがパレットの肩を借りて、喜びの涙を流していた。



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