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ー第5話平井駅前行き都営バス




ー第5話平井駅前行き都営バス






小谷刑事は、JR一宮駅前で覆面パトを停めて、携帯を切った。犯人は、後ろのへこんだ車で、散々目撃情報を撒き散らしながら、警察の対応を回避して、電車に乗ってしまった。

後輩の三ツ矢が、心配そうに小谷を見つめていた。

「小谷さん。なんで捕まらないんすか?。」

「こっちのやり方を知り抜いてる感じだな…。検問の無い、たった一ヶ所を突破された。あの道を知ってるのは地元でもそうはいない。」

「でも、雨屋に戻らざるおえないわけでしょ?。」

小谷は遠くを見る目になって言った。

「…オヤジなら、犯人は竹山を追う…って言うだろうな…。」

「どうしてです?。」

「30年前の雨屋に戻るには、ノートと清美さんが必要だとして…一緒に居るランドマークは竹山だ。奴ならすぐに、竹山のアパートを割り出すぞ。アパートで待ち伏せる…奴なら。」

「じゃあ、岐阜に向かったのは陽動ですか?。」

「クソッ。犯人が乗ったのは普通列車だ。途中の駅で名古屋行きに乗り換えられる。すぐに名古屋駅の新幹線乗り換え口を押さえるように言え!。」

三ツ矢は慌てて無線をつかんだ。

しかし、警官が新幹線乗り換え口と新幹線ホーム、東海道線のホームを固めた頃。すでにニット帽の男は、発車した東海道線の各駅停車浜松行きの車内にいた。



その数時間後。東京。

竹山と清美は、いったん本所吾妻橋のアパートに寄った後、平井駅前行き都営バスに乗って、平井七丁目に向かっていた。

「どこで降りるの…とおっじゃなくって…おとうさん?。」

「平井七丁目第三アパート前。」

「ふ〜ん。東京って変な街だね。」

「変?。」

「ずーっと同じような景色が、途切れないで続くね。」

「それが変か?。」

「だって岐阜なら、川があったり田んぼがあったり山があったりするじゃない。」

「都会だからさ。」

「じゃあ都会って、つまんないね。住んでると飽きちゃうんじゃない?。」

「そうかもな。時々現実感が無くなるのは、飽きてるのかも知れない。」

「おとうさん、私とずっと一緒に居るけど、仕事はいいの?。」

「サラリーマンじゃないんだ。毎日会社に行く必要はない。」

「何やってるの?。」

「週刊誌の記者をやってる。」

「えっー!。週刊誌って歌手とかに会う?。」

「まぁな。」

「すごい!。天地真理とかに会った。」

さすがに彼女のその後を話す気は、竹山には無かった。

「会ったけど、彼女は引退した。今は一般の人だ。」

「じゃあ…。」

清美は知っている芸能人を並べたが、ほとんどが表舞台から姿を消していた。

「ほとんど、みんな居ないんだ…。昨日テレビ見てても、知らない人ばっかり。でもさ!。宮原まなぶって子、すごくカワイイ!。ファンになっちゃいそう。」

「あ〜、あいつはオススメだ。裏も表もない。あいつは男だ。ただし、彼女がいる。」

「えっー!。…残念。でも本当?。」

「昨日、岐阜に行く前に会った。マスコミに、デートの現場押さえられそうになって、俺が助けてやった。」

「すごいね。ね〜サインとかもらえる?。」

「俺が宮原にか?。」

有り得ねえと心の中で思った顔を、清美は誤解した。

「やきもち焼いてるの?。とおるちゃん?」

こういう質問は、15だろうが20だろうが40だろうが女は変わらない。そして、男の受けも変わらない。清美は嬉しそうで、竹山は憮然としている。

「うれしい!。そういうの見てみたかった。」

「何が?。」

「透ちゃんが、やきもち焼くの。」

「焼いてねえよ。」

「ウソ〜!。顔が真剣だよ!。」

「今は、顔がマジって言うんだよ。」

「まじって?。」

「真面目が縮まって、マジ。」

「何か変。でも流行ってるんだ。」

「マジでな。」

「そうやって、使うんだ…。」

清美は少し冷めた顔になって、バスの外を見てから、竹山に向き直った。バスは八広二丁目のバス停で停車した。一人が降り三人が乗ってきた。

「もし…戻れなかったら。本当の気持ちは…戻れない方がって思ってるけど…私をよろしくお願いします。全部勉強だけど、言葉から覚えてく。」

「俺は、そのつもりだ。でも、戻す。向こうの世界の透ちゃんの為に、命をかけてでも。」

「うれしい!。すごくマジで!。」

「チョーマジで。」

「チョーマジで。透ちゃんが、こんなに熱い人だなんて知らなかった。」

「これは熱くなるだろうさ。あの頃だって熱かったさ。言葉を知らなかっただけで…。」

清美は突然吹き出した。

「何だ。びっくりするじゃないか。なんで笑うんだよ。」

「…ふふふ。だって、プロポーズの言葉…開会式の挨拶みたいだったんだもん。」

「おま…そりゃないだろ。何言ったか知らねえけど…。」

「いいの。わかった。言葉じゃないって。聞く側がどれだけ相手の気持ちを理解できるかが大切なの。私はまだその努力が足りないの。」

「あー足りてない。そんな事言うのはな。」

「なんか腹たつ。その言い方。」

「なんかムカツク…だな。」

「むかつく?。なんか吐きそうじゃない、それ。」

竹山は笑った。

「そりゃいい!。ムカツクって言われたら、便所で吐いてこいってギャグに使えるな。」

バスのアナウンスが、平井七丁目第三アパート前を告げた。

「降りるぞ!。清美。」

竹山は小銭を二人分確認して立ち上がった。



その頃。浜松で新幹線こだまに乗り換えたニット帽の男は、竹山が記事を書いている週刊タレントインフォメーションDX誌で編集部の住所を確認していた。

竹山のアパートの住所は、ポスターの連絡先からすでに割り出していた。





ー第6話平井七丁目第四アパートにつづく






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