幕間1ー神様の視点ー
リュート視点ではありません。
7/14 神桃のエピソードとリュートの若返りのエピソード、固有スキルについて少し加筆いたしました。
ワシは『オーブ』を創った偉大なる神様じゃ。
一度世界を創ると安定するまでは暫く動けんのじゃが、ワシがこの『オーブ』を創ってからもう何十億年と経ってるからの。そこまでくれば安定もするわい。
『オーブ』が安定してしまえば、ワシ暇なのじゃよ。
基本は見守るだけじゃし。そこで見守る片手間に桃を栽培しておっての、それはまぁ見事な桃に育ったんじゃが、他の神にもワシの桃が好評でのぅ。いつの間にか神が本業なのか桃栽培が本業なのか分からんようになってしまったわい。
しかし、桃栽培もワシに取っては永い時間の暇つぶしのようなものじゃ。基本は暇なのじゃよ。
そんな暇なワシは神の領域で他の神と話しておって良い情報を教えてもらったのじゃ!
何とそれは地球という世界を創った神が100年に1度だけじゃが地球を7日間だけ開放し、その間はワシらに自由に観光しても良いということじゃよ!
神と言えども他の神が創った世界に自由に干渉出来んことになっとるから7日間だけでも自由に観光しても良いというのは大変魅力的じゃった。
そして何とその100年に1度の7日間が明日から始まるのじゃ!!これは何としても行かねばならぬ。ワシは地球の神に連絡を取り明日から地球にお邪魔することを伝えると、地球の神は快諾してくれて地球で使えるお金とガイドブックをワシに持たせてくれた。
地球の神は良い神じゃの。
次の日ワシは次元回廊を通り地球の地上に降り立った。
ガイドブックを取り出し、昨日の晩から練り続けた計画通りに観光していく。
色々なものを見て回ったし、美味しいものも沢山食べた。地球でしか買えない物を山ほど手に入れたので満足じゃった。あとは3日間はゆっくりと観光しようと思っとったんじゃが、いつの間にやら財布を落としていたようなのじゃ。今まで行った所を探してみたが、全く見つからんかった。
途中で神の領域に帰る事も出来るんじゃが、折角の地球観光をあと3日間残してやむなく帰るのはワシにはない選択じゃ。もったいないのでな。しかし3日間何も食べないというのは神様でも辛いんじゃよ。
神の領域に帰る最終日、ギリギリまで観光していたワシは極度の空腹に陥り公園で水でも飲もうとフラフラと歩いていく。
公園に入り水飲み場を最短の道で行くため茂みの中を通る。ベンチの横を通り過ぎれば水飲み場は近い。ベンチを通り過ぎた瞬間ワシは足に力が入らなくなって崩れ落ちる。
「大丈夫ですか!?」
「腹が減った…」
1人の青年がワシに気がついて起こしてくれたのじゃが、起こしてもらうとワシの腹がぎゅるるるると大きな音でなってしまった。何と情けない神様じゃ。
こんな腹の虫が鳴っておるワシを見かねたのじゃろう。青年はワシに自分が食べようとしておった弁当を差し出してくれた。物凄く腹が減っていたのでワシは青年にお礼を言うと弁当をかき込んだ。
観光しながら美味しいものを沢山食べたが、この弁当のほうが遥かに美味い。腹も減っていたし箸が止まらなかった。
「ゴフォ、ゴホ」
かきこみ過ぎたかワシは盛大に咽てしまったのじゃが、青年がお茶をスッと差し出してくれて背中を擦ってくれたのじゃ。
「ほらそんなに勢いよく食べるからですよ。お茶どうぞ」
「すまんのぅ、お若いの。弁当を恵んでもらった上にお茶までいただいて助かったわい」
「いえ、いいですよ。困ったときはお互い様ですから」
青年はちょっと苦笑いをしながら答えてくれた。
弁当を腹に収めたら、ようやく一息つけたわい。
ガシャーン、ガコンガコン!!!!
一体何事じゃ!?ワシは辺りを見渡すと一台の車が公園の遊具を壊しながら暴走しておるではないか!その車が小さな子供を今に跳ね飛ばさんとする勢いで突っ込んでくる。
いかん!力を使うか!!
ワシはそう思い力を解放しようとした。それよりも先に弁当を恵んでくれた青年が子供を助けるために突き飛ばし、その青年は暴走している車に撥ね飛ばされてしもうた。
青年は10メートルほど飛ばされたので慌てて駆け寄っていくが、体から夥しい量の出血をしておりこのままでは青年は死んでしまうじゃろう。子供の母親は青ざめて何かブツブツ呟いておるが、こちらは放って置いても何とかなるじゃろ。
ワシに自分の弁当とお茶を恵んでくれて、子供まで救ったこの青年をむざむざ失ってしまうのは道理ではない。
ワシは杖を取り出し、力を解放する。
「完全時間停止」
その瞬間全ての時が止まる。
この地上で動けるのはワシのほかにも観光に来ていた神達と地球の神ぐらいじゃろう。
「どうしたのですか!?」
地球の神が慌てて空から舞い降りてくる。
「貴方のお力が急に発動したのでビックリして見にきましたが、一体どうしたというのです?」
ワシは経緯を地球の神に話した。
「なるほど、ですがこの鮎川流斗という男はここで死ぬ運命なのです」
「何じゃと!?」
「この男は私の管理の下、ここで死に次の転生の準備に入ります」
「いや、しかしワシを救ってくれて子供まで助けたのじゃ。そこを何とかならんもんかの!」
「そんなことは出来ません」
「じゃあ、その青年をワシに譲って欲しい」
「本気で言っているのですか?神が個人的に人間に干渉するなど…」
「神桃1000個でどうじゃ!?」
「3000個」
「ぐぅ、そんな…2000個でどうじゃ!?」
「2500個なら手を打ちましょう」
「ワシの桃が…」
「イヤならやめますか?」
「いや、2500個で構わんのじゃ…」
「貴方の作る神桃はなかなか手に入らなくてずっと涙を呑んできたのですよ。これでようやく神桃パフェや、神桃タルトが食べられます」
…地球の神はなかなか強かなようじゃ。
地球の神と取引した後、ワシは青年を連れて神の領域に戻った。
回復してやってこの青年が目を覚ますのを待つ。
「ここは…?」
「気がついたかの?ここは神の領域じゃよ、お若いの」
「は?」
青年が胡散臭いものを見るような目でワシを見つめてくるから考えてることは分かる。
「ずいぶん失礼なことを考えておるようじゃが、ワシは嘘はついておらんよ」
「あ、すいません」
一応納得はしてくれたみたいじゃの。
「まぁ、無理もないじゃろ。いきなり起きてすぐにここは神の領域じゃと言われても納得は出来んのは分かるよの」
「あの、それで何でここにいるんですかね?車に撥ね飛ばされたとは思ったんですけど」
「確かにお主は車に撥ね飛ばされたのぅ。ワシがお主が死んでしまう前に神の領域に連れてきて回復してやったのじゃよ」
「それは、ありがとうございました」
「しかし神の領域に連れてきたはいいが、地球にはすぐには帰してやれんのじゃ」
「え!?な、何でですか!?」
青年が驚いてワシに詰め寄るが、ワシはこの青年が本当はあの事故で死ぬ運命だったとは伝えず少し脚色を変えて説明する。
「100年に1度、7日間だけ地球と神の領域が次元回廊で繋がるのじゃが、お主が跳ね飛ばされた日がちょうど7日目でまた100年後じゃないと次元回廊が繋がらないので帰れないというわけじゃ」
「そんな…あ、でも神様ですよね?何で自由に地球と行き来できないんですか?」
「ワシは地球の神ではない。神にも色々いるのじゃよ。地球の神もちゃんといるのじゃが、忙しいお方なのでな。100年に1度しかワシら他の神を招いてくれはせんのじゃ。だからさっきも言ったのじゃが100年に1度7日間だけ次元回廊を繋いでくれるので観光に行くのじゃよ」
「観光?」
「そうじゃ、神様だって観光ぐらいするわい。観光の途中でお財布落として無一文になったがのぅ。無一文じゃから何も食えずに倒れる寸前にお主が現れたのじゃよ」
「ああ、それでお腹が減ってたんですね」
ここからが本題じゃの。
「うむ。さてとこれからのお主の事について話そうではないか」
「どういうことですか?」
「お主はワシが神の領域に連れてきてしまったが、本来は人間の住める場所ではない。人間ではここには長く住めぬのじゃよ。そこでお主にはワシの創った『オーブ』という世界に転移してもらい暮らしていってもらうことにした」
「『オーブ』とはどんな世界ですか?地球と同じような感じですか?」
この青年随分と落ち着いているが、普通こういった場合はもっと何で帰れないんだ!!と詰め寄ってもいいくらいなのにのぅ。
「そうじゃな、魔法が使えるという点とエルフやドワーフ、獣人とかもおるから地球とはあまり似てはいないかもしれんかのぅ」
青年の顔が輝いておるのは何故じゃ?目をキラキラさせて喜んでおるみたいじゃが…まあよいか。
「お主には弁当とお茶を恵んでもらったし、身を挺して子供を助けた。ワシはお主の事が気に入ったので『オーブ』で生きていくためのプレゼントを用意しよう」
これは本当の話じゃし、そもそも気に入らん人間をわざわざ地球の神と取引してまで連れてはこんよ。
地球にいた青年ではワシの『オーブ』ではすぐ魔物に襲われて死んでしまうじゃろう。折角助けた命をあっけなく散らしてしまうのでは意味がないしのぅ。
ワシはまずこの青年を少し若返らせてやることにする。折角新しい世界に行くんじゃし、若い方が何かと便利じゃろう。そして青年が分かりやすいように地球の<ゲーム>に似たような感じのシステムを作ってやった。そうすることによって馴染みやすくしてやる。そしてスキルに【経験値20倍UP】と【熟練度20倍UP】と【鑑定】をつけてやった。これくらいつけておけばすぐにレベルが上がり早々に死ぬことはないじゃろう。鑑定も何かと便利じゃしの。
あとは装備品や向こうで飲み水に困るといけないのでマジックアイテムとワシ自慢の神桃も持たせることにした。そうそう、たまには地球の料理も恋しくなるときもあるじゃろうと思って詳しい料理本と『オーブ』にも素晴らしい料理があることを知ってもらいたくてオーブ版の料理本も付けておいた。
これくらいあれば死なんと思うし、大丈夫じゃろ。
「それはどうも。魔法とか使えるようになりますか?」
うんうん、それは地球にいたら出来ないことじゃから楽しみじゃろうな。苦労しながら手に入れればいいじゃろう。そう簡単に使えるというわけじゃないしのぅ。
「向こうについてからのお楽しみじゃ」
ワシはもったいぶって言ってやったわい。
「ところで俺は『オーブ』に行ったら何をすれば良いんですか?」
はて…そういえば連れてきたが別にさせることもないしのぅ。
「いや、特にはないのぅ。魔王は勇者が倒すから危険なことはしなくても大丈夫じゃ。世界中観光したらどうかの?」
そうじゃ、観光がいいじゃろう。地球には無いものがたくさんあるし当分は暇にはならんじゃろうて。
「そろそろ『オーブ』へ転移させようと思うがいいかの?」
「そうですね。向こうへ行けば色々と分かるみたいですし。お願いします」
「そうか、じゃあ良い旅を。気をつけてな」
「はい。じゃあ行ってきます」
うむ、いい笑顔じゃの。では送ってやろうと転移の魔法を唱える。
眩しい光と共に青年は消えていった。
さてと、無事に青年が『オーブ』に着いたか確認するためにスクリーンに青年の姿を投影させる。
そこに映し出されたのは…空から真っ逆さまに落ちていく青年の姿だった。
「えええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ワシ、やってしもうた。そういえばアレ、ワシ用の転移魔法じゃった。
あわわあわわしているうちにも青年はどんどん落下しておったので、急いで呪文を唱える。
取り急ぎだが青年が身に付けていたヘルメットと服に破壊不可と衝撃無効の性能を付け加えた。
これで、地上に落ちても大丈夫なはずじゃ。
と思ったら、邪竜神が青年の真下におるではないか!いくらワシでも今からでは呪文が間に合わん!
青年と邪竜神が凄まじい轟音を立ててぶつかってしもうた。
いくらワシが魔法を唱えたからといって青年は普通の人間じゃし、心配になって見てみるが奇声を上げながらさらに落ちていきおったわい。ほっとしたのもつかの間、邪竜神が消えただと・・?
ま、まさか邪竜神を倒しおったのか!?
そのまま成り行きを見守っていたら黒の魔王の迷宮に突っ込んでいったのじゃが・・・
「何じゃとーーーーーーー!!!!!!」
ワシ、とんでもなく永く生きておるがこんなことは初めてじゃ。
まさかヘルメットで魔王を倒すなど前代未聞じゃのぅ。驚いたわい。
しかもレベル500とな。ワシが【経験値20倍UP】を付けたからとはいえ急にこんなにレベルが上がるとは思わんかったのぅ。そのおかげなのか変わったスキルまで身に付けておってワシにも想像つかんかった。
この青年なかなか面白いことになってきおったわい。
人の人生とはワシに比べて刹那というぐらいの時間じゃ。それでも当分の間は退屈はせんのぅ。
これからも青年の活躍に期待することにするかの。
お読みいただきありがとうございます。
本編よりも長い幕間になってしまいました。次は本編を頑張って書こうと思います!




