第3話 エリクサー
ブックマークがいつの間にか9件になってまして、かなり驚きました!読んでくださる方がいると思うとがんばり甲斐がありますね!
スキルまで確認した所で自分がどこにいるか確認しようと思い、マップを開いてみることにした。
マップを開くと、目の前にA4くらいのマップが半透明で現れた。
これって大きさとか表示させる位置が変えられるんだろうか?とりあえず目の前のマップをドラッグさせるように動かしてみるとマップがその通りに動く。次に大きさが変えられるか試しに角をタップして動かしてみると大きくなったり小さくなったりした。
「へぇー。便利機能だな~。これなら常時表示させても邪魔にならないか」
自分の見やすい大きさにし、あまり視界の邪魔にならなさそうな所にマップを配置する。
そして今自分のいる位置を確認するためマップを確認する。
表示されているのは【薄暗い洞窟】
薄暗い洞窟って見たままじゃん。
マップを弄っていると、迷宮全体マップが出た。
この黒の魔王の迷宮は6階層になっていて俺が階層をぶち抜いて来てしまったが各階層自体はそれなりに広くなっている。各階の階層主が縦一列に配置されている構造だ。だいだい迷宮的に階層主が縦に1列にいるっておかしくないのか?まぁ俺みたいに空から激突して階層をぶち抜きながら進むってことはあまりないだろうけどさ、この配置って上から物凄い攻撃とかしちゃったら簡単に迷宮クリアしちゃうんじゃないの?あくまでもだけど。
そして俺が居る場所は黒の魔王の玉座の部屋の真下に当たるわけだ。
この場所は迷宮とは違うらしい。
次にこの階のマップを表示するとこの洞窟の奥に2部屋、手前には階段があるみたいだ。
部屋には研究室と倉庫と表示されている。薄暗い洞窟を進むと、ドアらしきものが2つ並んでいる。
俺は研究室から覗いてみることにした。
部屋に入ると先程までの薄暗さはなく、むしろ明るい。ランプのような物が所々に配置されている。
部屋の中心には大きな机があり、その机の上には何やらごちゃごちゃと色々な物が乱雑に置かれている。壁際には大きな本棚があり沢山の本が並んでいた。
俺は部屋の中に入って近くでその机の上にある物を見てみる。薬を作るときに使うような薬研や乳鉢が置いてあった。何となく分厚い本が目に付いたので1冊手にとって見てみると異世界語で書かれている。さらっと目を通すが難なく読めた。イージーモード最高!
その本に書かれていたのは万能霊薬の作り方だった。正しくは未完成の万能霊薬の作り方だけど。
空からの転落、邪竜神、魔王の討伐、レベル500、万能霊薬の作り方(未完成)って異世界転移初日に詰め込むようなことではないと思うんだ、俺。
でも、気になるので万能霊薬の作り方以外にも何があるのか本を捲ってみる。そうすると体力回復薬の作り方や魔力回復薬の作り方、麻痺を治す薬や解毒剤の作り方まであった。それとは反対に麻痺にする薬や毒薬の作り方もある。
これは詳しく読んでみる価値がありそうだな。体力回復薬や魔力回復薬が自前だと非常に節約になるし作ってみたいよね。
視線を下げてみると分厚い本のあった下には黒い本があり割と立派な感じだったので読んでみようと本を開いた。
〇月口日
私は愛するエリーゼを救うために【黒の森】までとうとうやってきた。
ここになら賢者の石となるものがあるかもしれないとワーリッツ伯爵に聞いたためだ。私はエリーゼの病気を治したくて今まで万能霊薬の研究をしてきたのだ。ようやくここで賢者の石が見つかればエリーゼの病気も治せるかもしれない。ああ、気ばかりが焦る。
△月〇日
賢者の石を探し始めてからもう2ヶ月が経った。急がないとエリーゼが死んでしまう。広大な【黒の森】だからまだ探しきれていないのかもしれない。もう一度検索する場所を洗いなおそう。ああ、エリーゼ。君の笑顔が見たい。君の元気な姿が私は今一番見たいよ。
◇月△日
半年経ってようやく賢者の石が何なのか分かった。これでようやく賢者の石を創ることが出来る。エリーゼもう少しだから待っていてくれ。私は急いで賢者の石を創って万能霊薬を持って君に会いにいくよ。愛している、エリーゼ。
口月〇日
何故賢者の石が出来ない!私の創り方は間違ってはいないはず!それなのに何故出来ないんだ…。神よ、教えてくれ。急がないとエリーゼが!!!
▲月△日
私宛に一通の手紙が届いた。エリーゼが亡くなったと書いてあった。嘘だ!嘘だと言ってくれ!愛しいエリーゼが死んでしまったなど信じたくない…。
〇月◇日
ついに賢者の石が完成した。完成してももう遅い…。
△月口日
賢者の石を使い万能霊薬が出来た。3日ほど前から吐血しているが疲れのためだろう。先程万能霊薬を飲んでみたが、今のところ異常はない。どうやら効いたみたいだ。
△月◇日
万能霊薬飲んだ後、効いたと思ったがどうやら違うみたいだ。身体のあちこちが壊死し始めている。どうやら私の万能霊薬は失敗していたらしい。段々意識がはっきりしない日が多くなってきた。もうすぐ私は死んでしまうのだろう。
△月▲日
壊死が止まった。何故か身体に力が漲っている。どういうことなのだろうか。最近意識が無いことが多いのに部屋の中は片付き、賢者の石や万能霊薬の研究が進められている。…怖いことが頭の中に過ぎるが、私は私でなくなってきているのかもしれない。
△月〇日
どうやら私の意識がなくなっている間に別の私が魔物を使役しているようだ。恐ろしい事に私は魔王となりつつあるらしい。迷宮もいつの間にか築いてあるみたいだ。不完全な万能霊薬を飲んでしまった私の罰なのだろう。そろそろ私の意識もここまでだと思う。せめてこの魔王が【黒の森】から出ないように迷宮に封印するつもりだ。エリーゼをただ救いたかった私が世界に悪をもたらす魔王になるなど許しがたい。
勇者がきっと私を倒しにやってくるはず。そう希望をもって私はここ書き記しておく。
もし私を倒す勇者がいたのならそれは世界を救ってくれるような勇者であろう。
そんな勇者ならば私の万能霊薬が創れると思う。完成したレシピがあるのでそれを受け取って欲しい。場所は本棚の2段目、右から5番目の緑色の本の背表紙の中に隠してある。
そして出来ることなら難病で苦しんでいる人を助けてやって欲しい。
この日記はいつか勇者によって封印を解かれるまで厳重に鍵をかけておく。
最後に私を倒してくれてありがとう。
ジョニー・デッパー
ここで日記が終わっている。
何か読んでてしんみりしてしまったが、早い話はジョニーさんという人が不完全な万能霊薬を飲んで魔王になってしまった。魔王が外に出ないよう迷宮の中に閉じ込めたというわけだな。黒の魔王は元々は優しい人間だったんだ。それなのに俺なんかが空から降ってきて、チート装備のおかげで何の苦労もなく倒してしまって…。
俺は絶対に難病で困ってる人がいたら助けてあげようと心に誓った。それが一応黒の魔王…ジョニーさんの弔いになると思うし。
とりあえず万能霊薬のレシピを調べてみるか。
本棚から緑色の本を取り出して背表紙を確認してみる。確かに背表紙の間に紙が挟まっているみたいだ。その紙を慎重に引き抜いた。
広げてみると賢者の石のレシピと完全版万能霊薬のレシピが入っていた。
内容は…難しくてよく分からない。これはきっと上級者向けのレシピなんだと思う。錬金術のことを全く知らない俺が一朝一夕に出来ることじゃないだろ。
まぁまずは初心者向けのから始めて、それから作ればいい。
そういえばもう一つの部屋の倉庫を見に行ってないな。
分厚い本のレシピ集とジョニーさんの日記と大事な万能霊薬と賢者の石のレシピは無限収納の中に片付けて倉庫を見に行きますか。
研究室を出てすぐ隣の倉庫に入る。
その中は沢山の棚が並べられており、数々の素材が置かれていた。
俺には見てもさっぱり分からないが、たぶん錬金術に使う素材なんだろう。
片っ端から全て無限収納の中に詰め込んでいく。
結構な時間をかけて全て詰め込みが完了した。
もう一度研究室に戻り、先程回収しなかった薬研や乳鉢、その他の使えそうなものも詰め込み、本棚の本も軽く確認しながらいるものだけしまいこんだ。
「さてとここにはもう何も残ってないし、次のところへ行きますか!」
俺は研究室を出て階段へ向かって歩き出した。
お読みいただきありがとうございます。
なるべく早くUP出来る様頑張ります。