幕間2-メロリの視点ー
リュートの視点ではありません。
メロリの過去のお話なので読み飛ばしても何の問題もありません。本編をお望みの方は次の話へどうぞ。
-犬の国最南の村-
のどかで緑溢れる村にはいくつかの家があり、火を熾しているのか煙が出ている。
そこでは狩りをしながら暮らし、自然と共に生きる獣人たちの姿があった。
ある一軒のボロ屋には15人もの家族が所狭しと暮らしている。
今日はそのボロ屋で家族との別れを惜しんで最後の家族水入らずで食事を楽しんでいた。
家族15人では少な過ぎる食事を皆で分け合ってあっという間に食べ終わってしまう。
「メロリ、すまない。怪我のせいで貧乏になってお前を売る決断をした父さんを恨んでくれ。お前には本当に苦労を掛ける。せめていい人に貰われるよう祈ってるよ」
「メロリ、私の可愛いメロリ。私達が不甲斐無いせいで貴女を人間に売り渡す事になってしまって本当にごめんなさい。謝っても許される事じゃないけど、本当にごめんなさいね」
お父さんはメロリを撫でて、お母さんはメロリをぎゅっと抱きしめてくれたのです。
メロリも負けずにお父さんとお母さんにぎゅーっと抱きつきました。
メロリのお家は15人家族で、村の中でも4番目くらいの大家族なのです。メロリが一番お姉ちゃんで、後は弟が7人と妹が5人です。
犬族は安産多産型でメロリの下には三つ子、四つ子、また三つ子が生まれて最後に双子が生まれたばかりです。メロリも三つ子でしたが、病気であとの二人は赤ちゃんの時に死んでしまっているのでいないのです。
家族が多いので毎日楽しく暮らしていたのですが、お父さんが怪我をしてしまって腕が使えなくなり狩りが出来なくなったのです。
この村では狩りをしながら自然と共に生きていて、狩りが出来ないとご飯も食べられなくなります。
始めは村長さんが助けてくれていたのですが、怪我が長引くお父さんを見て「子供を売ってお金にして暫く食い繋いだ方がいい」と言われたみたいなのです。
お父さんはそれに反対したみたいなのですが、次第に飢えてくる弟や妹達を見て困り果てていました。
だからメロリは自分を売ればお金になるから売って欲しいとお願いしたのです。
お父さんもお母さんもメロリを売る事に反対していましたが、でもこのままじゃ家族が飢えて死んでしまうことをメロリは訴えました。
流石にそれを聞いてお父さんもお母さんもそれ以上反対する事はありませんでした。
村長さんと話してメロリは犬の国を出て人間の住む国に行く事になったのです。
犬の国と人間の国は友好国同士で、この犬の国にも沢山の人間がいます。
たまにこの村にも人間がやってきます。目的は商売のためです。
村で作った干し肉や狩りをして手に入れた動物の皮などを買い取ってくれて、塩や小麦などを売ってくれるのです。
今日はその商人さんが村長さんと一緒にお家に来て、メロリは商人さんに買われました。
商人さんは優しい人で、メロリが家族とのお別れするのに少し時間をくれたのです。
最後に家族で一緒に食事を取り、別れもさせてもらえました。これで心置きなく旅立てます。
「それじゃそろそろ行こうか」
商人さんに促されて、メロリは歩き出しました。
お父さんもお母さんもメロリが見えなくなるまで手を振ってくれていました。弟や妹はまだ小さくて分からなかったみたいですが、それでもメロリがどんどん離れていくのを不安に思ったのか泣き始めてしまったのです。
「ねーちゃー!!!ねーちゃー!!」
弟や妹が泣き叫んで駆けてこようとするのをお父さんとお母さんは必死で止めてくれてました。
メロリは1回だけ振り向きましたが、商人さんに「それ以上は辛くなるから」と言われ前を向いて歩き出しました。
本当はメロリだってずっと家族と一緒に居たかったのです。でもメロリはお姉ちゃんだから飢えてやせ細ってくる弟や妹を守ってあげなくてはいけなかったのです。
止め処無く溢れてくる涙をゴシゴシと擦り、歩いていると商人さんたちの馬車が見えてきました。
「君はこっちの馬車に乗ってくれ」
そう言われて連れられてきたのは檻のような馬車でした。
馬車の中にはメロリくらいの歳の子が何人も乗っていてみんな俯いています。
中に入るとじろっと睨まれてメロリは竦みましたが、他の子達はまた自分の殻に閉じこもったように俯いてしまいました。
メロリも空いているところに座り、馬車が出るのを待ちます。
この村からはメロリだけが売られたみたいで、馬車に乗ったのを確認したら動き始めました。
馬車はあっという間にメロリの住んでいた村から遠ざかります。
来る日も来る日も流れるような景色を眺めていると、大きな城壁のある町を見つけました。
近づいてくると本当に大きくて立派だったので驚きました。
町に入ると大きな建物の前に止まり、馬車を出るように言われます。
どうやら奴隷商館という所みたいです。
メロリは女の人が6人いる部屋を割り当てられました。メロリよりも少しお姉さんが多い感じです。
「あんた、年と名前は?」
赤い髪のお姉さんに声を掛けられました。
「メロリです。10歳で犬の国から来ました」
そう言うと、赤い髪のお姉さんは頭を撫でてくれて
「そうか、あたしはレモ。14歳だからあんたよりも少しお姉さんだよ。分からない事があったらあたしに聞くといい。大体の事は教えてやれるからさ」
お姉さんはレモという名前みたいなのです。メロリが兄弟の中では一番上だったので、お姉さんが出来た事がとっても嬉しいのです!
メロリは尻尾をブンブン振りました。そうするとレモも赤い毛の尻尾を少し揺らしてくれます。
レモとはその日以来仲良くなって、レモに沢山の事を教わりました。
奴隷は基本ご主人様とは同じ場所では寝ないで小屋で眠ります。でも、ご主人様が一緒に寝てもいいよと言ったら伽を希望しているので一生懸命ご主人様の為に頑張らないといけないとレモに教わりました。
伽って何なのかは分からなかったけど、レモはご主人様に任せればいいというのでメロリは納得しました。
ある日レモが売れてしまったので部屋から出て行って寂しかったけど、メロリも買われる事が決まってご主人様について行く事になりました。
メロリのご主人様はいつも怒っていてとっても怖いのです。
ご主人様の機嫌が悪いときは近づくと蹴り飛ばされるし、ご飯も食べさせて貰えないのです。
寝るときは奴隷用の小屋で寝て、早く起きてご主人様の洗濯をしないと怒られます。歩くときは必ず荷物を持つように言われるし、荷物を少しでも落とすと叩かれます。
メロリは必死で荷物を落とさないように頑張ったのですが、ご主人様の機嫌が悪く昨日からご飯を食べさせて貰ってないのです。
フラフラとして、荷物を落としてしまったら凄い剣幕で蹴り飛ばされました。とっても痛いのです。
ご主人様は、今日は迷宮に行くというのでついて行きます。
メロリは犬族なので聴覚と嗅覚は人間よりも発達しています。嗅覚探索、聴覚探索の両方を同時に行いご主人様を案内します。
迷宮の中を歩いていると、ご主人様が隠し部屋を見つけられたのでそこへ入られました。メロリもついていったのですが、そこには罠が仕掛けられていて…
ドゴーーーーーーーーン!!!!
大きな爆発音がメロリの耳に響きます。スキルを使っていたので、いつもよりよく聞こえるのです。
メロリの耳がキーンとした後からメロリの耳は聞こえなくなりました。
ご主人様が何を言ってるかも、どうして怒っているのかも全くわかりません。
何も聞こえないので、どう話していいかわからないので黙っていると、更にご主人様は怒ってしまってメロリを引きずって迷宮を出ます。
暫くはご主人様も様子を見ていたのですが、メロリの耳が治らないので機嫌が悪い事が多くて怖くて近づけませんでした。
ある日、ご主人様はメロリを引きずってメロリを売っていた奴隷商館前まで連れてきたのです。
そこに奴隷商人さんがたまたま外にいたので、ご主人様とお話していました。
ご主人様は段々と怒り始めて、メロリを蹴り飛ばそうとした時メロリは怖くて目を瞑ったのです。
でもいつまで経っても蹴り飛ばされないので目を開けてみると、ご主人様の脚を掴んだ人間の男の人がいてその男の人がご主人様の足を持ち上げて転ばせてしまいました。
当然ご主人様は怒り出し、男の人に詰め寄ります。
すると男の人は金貨を取り出してご主人様に投げつけました。
周りの人もご主人様も呆然としていたのですが、我に返ったのかご主人様は金貨を集めてメロリを置いてどこかへ行ってしまったのです。
どうしていいかわからず、震えて縮こまっていたメロリを人間の男の人はちょっと困った笑顔で立たせてくれました。
優しい人間の人で良かったのです。でもメロリはこれからどうしていいか分かりません。
不安で仕方なくて涙が滲んできます。
そうしていると人間の男の人はメロリを連れて歩き出そうとしましたが、商人さんに止められてメロリと男の人に手を当てています。
これは奴隷の契約なのです。さっきの人間の男の人が出したお金は、メロリを買ったお金なのかもしれません。
契約が終わった後、新しいご主人様の宿屋に連れてきてもらって椅子に座らせようとするのですが困りました。
もし椅子に座ったら怒られてしまうかもしれないのでちょっと怖いのです。
身振り手振りで怒らないから座ってと合図されたので、メロリも恐る恐る座ります。
新しいご主人様はメロリに薬を渡しました。飲むようにと合図されます。
ドキドキしましたが、ゴクリと飲み干しました。
ドロリとしていますが、そこまで苦くも無く飲みやすかったのです。
「俺の声が聞こえるかい?」
急に耳が聞こえるようになって、話しかけられてビックリして新しいご主人様を見上げてしまいました。
ご主人様の声はとても優しくてメロリを気遣ってくれているような感じです。
「き、聞こえます!ご主人様!」
メロリがそう言ったら、ご主人様は笑顔で頷いています。
「それは良かった。万能霊薬がちゃんと効いて良かったよ」
「貴重なお薬をメロリの為にお使いくださってありがとうございます!」
メロリはほっとしたのと、耳が聞こえるようになって嬉しくて涙がぽろぽろ出てきてしまいました。
ご主人様は優しくメロリを撫でてくれて、タオルまで貸してくれたのです。
それから自己紹介して、メロリの着替えや生活必需品まで買ってくれて、今まで食べた事ない串焼きも沢山食べさせてくれるし、武器や防具まで用意してくれて、本当に優しいご主人様なのです!!!
宿屋に戻った後、一緒のお部屋で寝てもいいよとご主人様が言うのでレモの言葉を思い出しました。
そして、教わった言葉をそのままご主人様に伝えたらご主人様がビックリ慌てふためいているので驚きました。メロリは間違った事を言ったのでしょうか?
ご主人様はちょっと疲れた様子で横になりました。
メロリは少しだけご主人様を盗み見します。
ご主人様は、黒い髪の毛でさらさらで、いつも優しい顔しています。こうやって近くに寄るととっても良い匂いがして心が落ち着くのです。
メロリは一生懸命ご主人様に尽くしてメロリの事を好きになってもらうのです!
メロリはずーっとずーっとご主人様のところにいたいです。
そう考えていると眠たくなってきました。目が覚めたら夢だったということにならないように神様にお願いしてから眠ります。
おやすみなさい、メロリは今とっても幸せです。
お読み頂きありがとうございます。




