第14話 天使?
ついに話のストックが無くなった為、次回からはのんびりペースでやっていきますのでよろしくお願いします。調子が良ければUPします。
正義の味方のように颯爽と現れたレティナットさんは、下種野郎共の前に仁王立ちする。
ただでさえ身長が2メートルくらいあってケバイ化粧をしているオネエなのだ。
迫力と言うか圧迫感が半端ない。
「アンタ達、何やってるの?メロリんが血相変えてギルドに飛び込んでくるから、何事かと思って来ちゃったじゃない」
「血も涙も無い『悪逆無道のレティナット』!」
「まぁ!失礼しちゃうわネ!そんな昔の呼び名で呼ばないで。今は、冒険者のギルド長をしている『天使のレティ』なのヨ!!」
『天使のレティ』・・・俺の耳は腐っているのか?そんな風に聞こえたような気がするのだが。
「何が『天使のレティ』だ!気持ちの悪いバケモノめ!」
どうやら俺の耳は腐ってなかったらしい。そりゃないぜ、レティナットさん。
どっからどう見てもムキムキマッチョのピンクパイナップルお化けなんだからその…天使はないだろ。
「何ですって!?」
レティナットさんの顔色が変わる。
あーあ、どうやら下種野郎共は地雷を踏んだらしい。
「アンタ達、ちょっとアタシのお仕置きが必要みたいネ!!」
レティナットさんが指をポキリポキリと鳴らす。
レティナットさんが拳を握り、失言をかました奴に思いっきりパンチを浴びせる。
パンチを食らった奴は数メートル吹っ飛んだ。
うん、レティナットさんを怒らせないようにしよう。そうしよう。
「ウフフフ、次はどっちにしようかしら?」
「ひぃ、バケモノ!!!」
残った二人は慌てて逃げ出すが、レティナットさんは逃がすつもりは毛頭無いのだろう。
逃げる奴を追いかけて、あっという間に回し蹴りで沈めた。
「人に向かってバケモノとは失礼なのヨ!こんな美しい天使のようなアタシのどこがバケモノなのか教えてもらいたいわ」
うん、その見た目が・・怪力が・・存在が・・全てです。
しかし、俺は命が惜しいので言わないでおく。
くるりと振り向き、レティナットさんは俺のところへやってくる。
「リュートちゃん、無事だったみたいネ!良かったわ。メロリんがギルドで『ご主人様が襲われてます!!』って言うから、リュートちゃんの貞操の危機だと思って来たのにそうじゃなかったのネ」
いやいやいや、普通そっちじゃなくてカツアゲとか強奪とかって考えてくれよ。
「アラ、こいつモゲタラじゃない。モゲタラはうちでCランクの冒険者であまり評判が良くなかったの。最近、若い新人の子ばかりを襲って金品を強奪してるって噂だったけど本当だったのね。リュートちゃん、これはアタシの監督不届きだわ。ごめんなさいネ」
レティナットさんは壁にぶつかって転がっているモゲタラの髪の毛を掴み引き上げて顔を強烈な往復ビンタをする。
「起きなさい、モゲタラ!」
「ゴペッ」
一度は意識を回復したのだが、強烈な往復ビンタのため再び意識を失うモゲタラ。
「んもう、根性ないわネ。仕方ないわ、ギルドに運びましょう」
レティナットさんは懐から縄を徐に取り出すと、5人を縄で縛り、引きずり始めた。
「レティナットさん、僕がそのモゲタラって人と、木材と一緒に伸びている人を倒しちゃったんですが、大丈夫ですかね?一応体力回復薬とか使ったほうがいいですか?」
「ヤダ、リュートちゃんアナタ本当にお人よしネ。こいつらは強盗未遂を犯したんだし、正当防衛が適用されるわ。問題ないわヨ。こいつらは殺されても文句は言えないの。そんな奴らの為に貴重な体力回復薬なんて使わなくてもいいわ」
そう言ってレティナットさんは5人を引きずって歩く。何というか、ギルドに着くまでに後頭部がハゲて血だらけになるんじゃないだろうか?
自業自得だとは思うけどね。
「ああ、そうそうこいつらはアタシに任せておいて。こいつらには死んだほうがマシだと思えるくらい可愛がってあげるつもりヨ」
ウフフとご機嫌な様子でレティナットさんは帰っていった。
「ご主人様、ご無事で良かったです!」
メロリが駆け寄ってくる。
「メロリ、レティナットさんを呼んできてくれてありがとうな。助かったよ」
「はい!」
メロリは褒められて嬉しそうに尻尾を振っている。
「さあ、遅くなったし急いで宿屋に帰ろう」
「はい、ご主人様!」
◇◇◇
宿屋に戻ると、マリーナさんが笑顔で迎えてくれる。
「おかえり、今日から二人部屋が空いたからそっちに移ってもらっていいよ」
「ただいま戻りました。ありがとうございます」
マリーナさんにお金を払い二人部屋を案内してもらう。
一人部屋よりは大きくてちゃんとベッドも二つある。これでようやくゆっくり寝れるだろう。
「さあ、メロリお腹空いただろう?ご飯食べに行こうか」
「はいっ!」
食堂に行き、今日のお勧めを出してもらう。
今日のメニューは魚の煮込みとサラダとパンだ。
まず、魚の煮込みなんだが日本の煮魚とはちょっと違う感じはする。
薄茶色の半透明なスープの中に丸ごと1匹入っていて、フォークでは何というか食べにくい。
一口スープを飲むとあっさりとしていて魚からだし出ているようだ。味としては塩味で、どうやら一度焼いてからスープの中に入れ煮込んでいるという感じみたいだ。
身も食べるが、こちらもあっさりとした淡水魚のような味わいがする。一度焼いてからなので皮が香ばしくて美味い。
これを食べていたら何だか日本食が食べたくなった。鮭の塩焼きに味噌汁とご飯が食べたい。
今のところ米は一度も見たことが無いのでこの世界にはないのだろうか?
もしかしたら世界中旅をしたら見つかるかもしれないので諦めないでおこう。
日本の事を思い出しながら感傷に浸っていたらメロリはもう食べ終わったみたいだ。
「メロリ、おかわりするかい?」
「メロリはお肉のほうがいいです」
なるほど。いつもより食いつきが悪いのはそのせいか。
メロリ用に肉料理を頼んでやって食べさせる。
幸せそうで何よりだな。
体と髪を洗って、さっぱりした後部屋に戻って寛ぐ。
ベッドが二つあるので片方にメロリが、もう一つのベッドに俺が横になる。
「メロリ、おやすみ」
「おやすみなさいませ、ご主人様」
暫くしたらメロリがすぅすぅと規則的に寝息を立て始めた。
俺はベッドで横になりながら今日の事を思い出す。
一日で詰め込むには結構な出来事だった。
ワイルドボアに追われていたエルファンを助けるためにワイルドボアとの戦闘。
俺が初めて肉を切る感覚にビビッてたよな。それからその後の解体。
魔物だけど殺すということの抵抗感と罪悪感。
日本にいたときには体験したことのない出来事だった。
それからトレントの戦闘。
相手が木だからなのか、それともワイルドボアとの戦闘で少し慣れたのか、もしくは自動回収システムで死体がなかったおかげなのかあまり罪悪感を感じることなく終わった。
それからレモを助けたこと。
あの時はあまりの惨さに嘔吐が止まらなかった。
むせ返るような血の臭いと無残な死体を見たからだ。怖かった。怖くて堪らなかった。
でもその後普通にご飯も食べれて何事も無かったように頭を切り替えられた。
ホーンラビットの戦闘。
これも特に何も思うことなく討伐して終わった。
そしてモゲタラとの戦闘。
あの時はカッとなって木材投げたり、一応手加減はしたつもりだがパンチをした。
喧嘩をしたこと無い俺がだ。憤りは感じても罪悪感は全く感じなかった。
今日起こったことは全て現実だ。ゲームなんかじゃない。
しかも戦闘を重ねることによってだんだん罪悪感も薄れてきている。
慣れなきゃって思っていたが、案外簡単に慣れてきているような気もする。
普通こんな体験したら精神病んじゃうよな?状態が【鬱】になってもおかしくないけど、ちょっと反省するくらいで時間が経てば平気になる。
ふと自分の腕にはめられている腕輪に目が行く。
これは俺が黒の魔王の迷宮から出るときに装備したものだ。それからは肌身離さず身に付けている。
神様からの贈り物で、奇跡の腕輪という神話級のマジックアイテム。
この腕輪の性能は状態異常無効。
まさか奇跡の腕輪のおかげで俺は鬱にはならないのか?鬱も状態異常であることには間違いないとは思うけど・・・。
考えても考えても結局はそこへたどり着いた。じゃなければ俺はすでに発狂しててもおかしくない。
これも神様の生きていくためのプレゼントの中に含まれるんだろうか?
あのうっかり神様、案外こういうことも見込んでこれをくれたのかもしれないな。
そう考えたら自分の中で気が済んだのか俺はそのまま寝入ってしまった。
翌日、俺達はギルドに向かった。
今日は依頼を受けるつもりではなくて、昨日のモゲタラ達がどうなったのかを知りたかったからだ。
ギルドにたどり着くと、リラさんの姿を探す。
リラさんは、21歳で(鑑定したので知っている)人間のお姉さんだ。しかも、細身の体なんだが出るとこは出てのメリハリボディでちょっとピチっとした感じの服を着ていることが多い。
胸に合わせると服がダボダボになるから体のサイズに合わせているんだろう。
それがまた、男の視線を釘付けにしている。
髪は金髪でいつもきっちりと結んでいて、どちらかというと出来るキャリアウーマンといった感じがする。
瞳はエメラルドのような綺麗な緑色で少しつり上がり気味の美人だ。
そのつり上がり気味の瞳が彼女を少しだけ怖い印象を与えるが、だけど色々と心配してくれたり優しい一面もある人なのだ。
リラさんは人気が高いんだろう。リラさんのカウンターには人が結構並んでいた。
初めてギルドに来た時は何も思わず空いてるカウンターに向かって対応してくれたのがたまたまリラさんだったのだが、こうも人気のある人だとは思わなかった。
まあモゲタラの事を聞くだけだし、リラさんじゃなくても良いので違うカウンターへ向かう。
「おはようございます。昨日モゲタラって人をレティナットさんが連れてきたと思うんですけど、どうなったか聞きたくて来ました」
「んん?君は期待の新人のリュート君じゃない。あら、近くで見るとなかなか可愛くていいじゃん。私は、スティナよ。今日はリラが忙しくて私のところに来てくれたの?おねーさん歓迎しちゃう!」
スティナと名乗った女性は、年の頃はリラさんと同じくらいでオレンジ色の巻き髪に露出の高い服を着た超セクシーお姉さんだ。私を見てと言わんばかりにチューブトップからは零れ落ちそうなほどの爆乳が主張している。
こ、これは…見ちゃ駄目だよな?セクハラになるよな?でもさ、どうしても見ちゃうじゃん?
男の悲しい性だよね。何とか気合で視線を逸らした。
「私のおっぱいが気になる?可愛いなぁ、お持ち帰りして食べちゃおうかなぁ?」
スティナさんがカウンターから乗り出し、舌なめずりをしながら爆乳を突き出してくる。
「スティナ、リュートちゃんはアタシの獲物なのよ?アンタみたいな年中発情女に渡すものですか!」
レティナットさんが、カウンターに乗り出したスティナさんを引っ張りムキムキマッチョの体を俺とスティナさんの間に潜り込ませる。
いやいや、獲物って。俺はおっさんよりも綺麗でセクシーなお姉さんのほうが好きなんだ!
ケバイおっさんとどうこうするつもりは一生ないぞ!!
「ギルド長!誰が年中発情女ですか!私は年下の可愛い男の子にしか興味はないんですよ?手取り足取り気持ち良い事を教えてあげる事が私の趣味なんです。発情なんてしてないじゃないですか!?しかもリュート君はギルド長みたいなケバイ年増よりも私のような美人で、セクシーなおねーさんの方が良いにきまってるじゃないですかぁ」
スティナさんはチューブトップの上から爆乳をぷるぷる揺らし、俺にウィンクしてくる。
いい眺めだ・・・
「ご主人様?顔がにやけてますけどどうかしましたか?」
メロリが上目遣いで聞いてくる。
うっ・・・そんな目で見ないで俺を。
す、すみません、ちょっとした出来心なんです・・・。男の悲しい性なんです。許してください。
「う、ううん。何でもない」
「ご主人様はああいう女性が好みなのですか?」
メロリはじっとスティナさんの方を見つめている。
非常にいい眺めだし、年齢的にも引っかからないし、良いとは思うけどメロリにはそんな風になってもらわなくても・・・。心境的にはお父さんの気分なので複雑だ。
とりあえず、メロリには純真な子でいてほしい。俺の切なる願いだな。
「メロリはメロリのままでいいよ。今のままでも十分可愛いから」
メロリの頭を撫でながらそう答えてやる。考えようによっちゃ、これタラシの言葉だな。まあいいけど。
「ありがとうございます!ご主人様!」
メロリは嬉しそうに喜んでいるので危機は脱しただろう。
一方レティナットさんの方に顔を向けると・・・顔を真っ赤にさせてプルプル怒っている鬼のようなお化けがいた。
「いいわ、今日こそアンタと決着をつけてやるから訓練場にいらっしゃいヨ!!」
「えぇ、望むところよぉ!!」
そう言って二人は部屋を出て行ってしまった。
え!?スティナさん大丈夫なのか?爆乳だけど華奢な女性だし、あんなバケモノと張り合えるのだろうか?
あ!そう言えばモゲタラは・・・?ま、いつでもいいか。むさ苦しいおっさんなんてあんまり見たくもないし。
肝心なレティナットさんが出て行ってしまったのだし、今日は依頼をするつもりもない。
仕方ないのでエルファンがいる【灰色の熊猫亭】に向かう事にした。
お読みいただきありがとうございます。




