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第12話 罪悪感

今回は少し残酷な表現がありますのでご注意ください。


7/25レモのスキル【罠探知】を入れるのを忘れたので追加してあります。申し訳ありません。

 どうやら男はワイルドボアをトレインしながらこちらに向かってくるようだ。

 「た、助けてください!!!ワイルドボアに追われているんです!!」

 必死の形相でこちらに走ってきた。

 「ご主人様、ワイルドボアが12頭こちらに向かってきます!」

 このままでは俺達も危ないし、戦うしかないだろう。

 剣と盾を構えて、ワイルドボアの群れに備える。

 「メロリ、俺がワイルドボアを惹きつけるからメロリは槍で攻撃してくれ!くれぐれも少しでも危険だと思ったら逃げて!」

 「はい!ご主人様!」

 メロリも槍を身構える。

 「このイノシシ豚野郎!こっちを向け!」

 俺はワイルドボアを挑発し惹きつける。

 ワイルドボア近くで見ると超デカイな。めっちゃ怖い。

 12頭がそれぞれ俺に向かってくるが、【回避】と魔王の靴のおかげが難なく避ける。

 こいつ意外と動きが速い。スキルとチート装備がなきゃ確実に当たってたわ。

 ひらりひらりとかわしながら、一太刀ずつ確実にワイルドボアに入れる。肉を切る感触が剣から手に伝わってきた。その感覚に恐怖を覚えるが、今はそれどころじゃないと自分を奮い立たせる。

 メロリの方も確認するが着実にワイルドボアに致命傷を与えて止めを刺していた。

 さすがは獣人といったところか。回避も難なくこなしているのを見て感心する。

 感心しているところを見ていたら一頭のワイルドボアが突っ込んでくる。

 「ご主人様、危ないです!」

 向かってくるイノシシにメロリが石を投げていた。

 ワイルドボアに石が当たったがそのままワイルドボアは少しHPを減らしながらも何事も無かったように突っ込んでくる。 


 スキル:【石投げ】を習得しました。


 なるほど、そのまんま石を投げて【石投げ】ね。もしかしたら、遠くからでも上手く投げれば攻撃になるかもな。

 しかし、今は目の前にいるワイルドボアに集中しないと。

 突っ込んでくるワイルドボアをかわし、切りつけた。その間にメロリがワイルドボアに止めを刺している。

 12頭いたワイルドボアも気がつけば後3頭までに減っていた。

 あともう少しだ。気を引き締めていこう。

 ワイルドボアを切りつけながら、最後の止めはメロリにさせる。途中で俺の自動回収システムを思い出したからだ。あれは、俺が敵を倒すと自動的に敵の素材、アイテムなどを回収してしまう。悪目立ちも良い所だろうし、それを指摘されたら俺に答えられる訳が無い。

 それに今の所レベル500だし、メロリのレベルを上げるのを手伝った方が良いだろう。

 メロリが槍で最後のワイルドボアに止めを刺してようやく戦闘は終わった。

 「メロリ、よく頑張ったな」

 メロリの頭を撫で、褒めてやる。するとメロリは嬉しそうに尻尾をブンブンと振って喜んだ。

 「さて、こいつをどうするか」

 「ご主人様、ナイフを貸してもらえばメロリが解体しますよ?」

 「そうか?それなら頼むよ」

 鞄からナイフを取り出してメロリに渡してやる。 

 ナイフを持ったメロリは手際よくワイルドボアを血抜きし、それが終わった後丁寧に皮を剥いでいき、肉と皮に分ける。かなりの手際の良さだ。

 それを見て感心する。俺ならああも綺麗に出来ないだろうし、まず無理だ。

 生き物の解体なんて見るのも初めてだし、そもそも肉なんてスーパーで売っているパックに入ったブロック肉や薄切り肉くらいを見る程度だ。

 そんな俺が、魔物とはいえ殺して血抜きし、皮を剝いでるのを見たらどうなると思う?おかげさまで絶賛テンションがた落ち中だよ。

 それに先程のワイルドボアを切った時の肉を切る感覚に恐怖を覚えたくらいだ。あの肉を切った瞬間に血が吹き出るのと感触が何というか罪悪感を感じる。

 情けない話だが俺はそもそも生き物を剣で切るなど初体験だし。

 しかも、魔物でも死ぬところを見るのはかなりの衝撃だった。だって基本的に日本にいたら滅多なことでは死ぬところなんて見ないだろ?もし見たとしても目を逸らしてるはずだ。

 この先この世界で生きていくためには、こうやって例え魔物の命でも奪うことが必要な事になるだろうし、また解体も必要なことだろう。慣れていかないと駄目だとは思うけどすぐに慣れるだろうか。

 これを乗り越えるのが当分の俺の課題だよな。

 そもそも小説に出てくるようなカッコイイ主人公となるには俺はまだまだ役不足だろう。

 俺はそんなカッコイイ主人公にはなれないしな。

 カッコイイ主人公だったら今頃ハーレムとか作ってヒヤッハーしているに違いない。

 俺は俺のペースで一つ一つ乗り越えていけばいい。


 物思いに耽っている間にメロリが全ての皮を剥ぎ終わる。皮が剥ぎ終わったら、ナイフで心臓らしきものを取り出しそれにまたナイフを入れた。

 「それは何をしているんだい?」

 「魔物には体内に魔石を持っているので取り出しているのです」

 「魔石?」

 「そうです。これは魔道具の原動力になるのです。これをギルドで持って行けば買い取ってもらえるです」

 そうだったのか…。そういえば俺は邪竜神とか階層主フロアマスターとか魔王とか倒したけど、あれにも魔石があったのだろうか?そう思い確認すると、魔石がちゃんと無限収納アイテムの中に入っていた。これのことか。

 メロリは12頭分の魔石を集めて俺に持ってきた。

 「ありがとう、メロリ。とりあえずワイルドボアの肉や皮も鞄の中に入れるから待っててくれ」

 「はい、ご主人様」

 メロリが疲れたのか眠そうにしているので、暫く休憩してもいい事を伝え布を取り出してそこに横にならせる。

 あっという間に眠ってしまった。相当疲れたんだろう。

 その間にワイルドボアの肉や皮を片っ端から鞄に詰め込む。詰め終わったら、少し離れた所からさっきのワイルドボアをトレインしてきた男が戻ってきた。

 そういえばこいつの事すっかり忘れていたな。

 「助けてくれてありがとう。僕はエルファン・パレッドだよ。エルファンと呼んでくれ」

 エルファン・パレッドという男は見た目で言うと優男風で年は18歳くらいだ。

 「エルファンさんね。俺ははリュートでこっちの子はメロリ。」

 手短に自己紹介する。今の俺とは年齢も近いし、別に敬語も使う必要もないだろう。

 「さんはいらないよ。助けてもらったし。しかし君達は強いんだね。ランクはいくつなの?僕はこの間Dランクになったばかりさ」

 「俺達はFランクで、今日から冒険者を始めたばかりだ」

 エルファンが物凄く驚いた顔した。

 「え?そうなの?じゃあ君達は凄く強いんだね。ワイルドボアはそんなに強くは無いんだけど群れるとDランクでもきついのにそれを2人で倒しちゃうなんて凄いよ」

 まぁ、メロリが1人で倒したようなもんだけど。

 「で、エルファン。何で1人でここにいたんだ?」

 「ああ、それは…」

 エルファンの顔が曇る。急にボロボロと泣き始めて俺は困惑した。

 「僕達…僕と従者と奴隷三人で森の奥でトレント狩りをしていたんだ。最初は順調だったんだけど、途中でワイルドボアの群れに出くわしてね。体制を崩してしまって、最初に奴隷が犠牲になり従者が自分を盾にして僕を逃がしてくれたんだ…」

 「従者がいるってエルファンは貴族?」

 「地方の貴族の三男さ。僕は跡継ぎでもその跡継ぎの控えでもないからね。15歳になった時に家を出たよ。冒険者になりたくて帝都に従者を1人付けてもらってやってきたんだ。それなのに僕は、奴隷を犠牲にして、ミゼルを見捨てて僕だけが生き残ってしまった」

 先程から俺の【聴覚探索】で人の足音が聞こえているんだが、そのミゼルっていう人だろうか。

 マップで確認するとミゼルだった。生きてるじゃないか。しかも敵に追われている。

 助けるなら早くしないとやられてしまうかもしれない。

 「ちょっと俺が様子を見てくるから、メロリを見ていてくれないか?」

 「え?何?ちょっと!?」

 エルファンの答えを待たずに俺は森の中へ駆け出す。

 全速力で走ったのであっという間にミゼルの共に着いた。

 体のあちこちに傷を負っており、血が流れている。フラフラしながらも逃げるので手一杯そうだ。

 追いかけてきているのはトレントだ。トレントって木のお化けだけどあいつ動けるんだな。器用に根っこを使って移動している。そんなに速くは無いが、ミゼルは手負いだ。トレントの速度でも十分に追いつかれるだろう。

 「助けに来た!これを飲んで隠れてて!」

 俺はミゼルに完全体力回復薬フルポーションを渡し、ミゼルを逃がしてトレントの前に立つ。するとトレントも俺に気がついたのか枝を振り乱し襲ってきた。

 回避しながら俺もトレントの枝を剣で切り飛ばして応戦する。

 いよいよ振り乱す枝も無くなってきて弱ってきたのか、トレントの動きも鈍くなる。俺はそのタイミングを逃すことなくトレントに止めを刺す。

 するとトレントは消えて、俺の無限収納アイテムの中に葉っぱと木材と魔石が回収されていた。

 俺は初めて自分の意思で敵の命を奪った。

 トレントは俺を敵と見なし、襲ってきたからだ。

 やらなければやられるだけだし。

 しかし何というか相手が木だとまだ罪悪感が少ない。自動回収されて死体が無いってのも大きいのかもしれないな。

 戦闘が終わったのを確認したのかミゼルがこっちにやってくる。

 「あの、完全体力回復薬フルポーションありがとうございます。おかげで助かりました」

 「ああ、気にしなくていいよ。君がミゼルだろう?エルファンに話を聞いてやってきた」

 ミゼルは目を見開いて俺に詰め寄る。

 「エルファン様はご無事なのですか!?」

 「ああ、ワイルドボアに追いかけられていたが俺達が倒したから無事でいるよ。森の外に俺の仲間と一緒にいる」

 「何から何までありがとうございます」

 「じゃあ、とりあえず森の外に…」

 そこまで言いかけると【聴覚探索】で弱弱しいが人の声がする。エルファンが言っていた奴隷の一人だろうか。ここには敵もいないし、少し様子を見てくるだけなのでミゼルにここに残らせて俺は声のする方に歩いていく。


 夥しい血が池のようになっており、咽るほどの血の臭いが充満している場所を発見した。その中に倒れているのは3人。1人は内臓を引きずり出され手と足が食われている。もう1人は頭が無かった。もう1人は全身血だらけで怪我をあちこちにしているが、一番酷いのは目だ。目からの出血が酷い。この奴隷は生きていた。

 俺はそれを見た瞬間嘔吐した。いや、普通こんなの見ればそうなるって。

 何度も吐きながらも生きている一人の奴隷を抱き上げ何とか完全体力回復薬フルポーションを飲ませる。

 すると、先程の怪我がみるみるうちに塞がって治っていって血色が良くなってくる。

 良かった。間に合ったみたいだ。

 「んっ・・・」

 どうやら気がついたらしい。

 「!!!???」

 奴隷が目を抑え半狂乱になっている。一体どうしたんだろうか?慌てて鑑定してみると


 名前:レモ

 種族:猿族(尾長族)

 年齢:15歳

 職業:エルファンの奴隷

 状態:【盲目】【恐慌】

 レベル:5

 HP:97

 MP:35

 スキル

 【罠】熟練度:★

 【罠探知】熟練度:★

 【罠解除】熟練度:★

 <固有スキル>

 【調教】


 状態が盲目と恐慌になっている。目が見えなくて半狂乱になっているんだろう。

 俺は万能霊薬エリクサーを取り出し、レモを落ち着かせようとしたがパニック状態で言うことを聞かない。俺は持っていた布を取り出し、レモを被せて包む。暫くしたら落ち着いてきたようだ。

 「俺は君を助けに来た。君は魔物に目をやられ目が見えない状況だ。そこまでは分かるかい?」

 そこまで訊ねるとレモはこくこくと頷いた。

 「俺が今治してやるから、これを飲んで。布は被ったままで、目は瞑っていてくれ」

 俺は万能霊薬エリクサーを渡してやった。

 一気にレモは飲み干した。

 もう一度レモを鑑定し、状態が【良好】になったところでもう一度話しかける。

 「よし、布を被ったまま目を少しずつ目を開けてみて。一応布を被ってるから大丈夫だとは思うけど、一気に光を感じると目に良くないから」

 布の中で少しずつ開いたから特に急激な眩しさとか感じなかったみたいだ。

 「あ、見えます。目がちゃんと見えました!」

 どうやら成功したらしい。

 「よし、じゃあ次は立てるかい?」

 「は、はい。あの、今の薬は・・?」

 「ああ、それは俺が治してあげたくてやったことだから気にしなくていいよ」

 「ありがとうございます!」

 レモはお礼を言って深く頭を下げた。

 「さてととりあえず戻ろうか。ついて来て」

 「はい」

 俺とレモはその場を後にする。後の2人は助けられなかったけど、俺が来たときには事切れてたしどうしようもなかった。1人でも助けられて良かったとは思う。

 俺は神様じゃないし、全てを救えるわけじゃないし、出来るわけもない。まあ出来るだけの事はするつもりだけどね。

 俺達はミゼルと合流し、ミゼルはレモが生きていて喜んでいた。

 また3人で歩いて、ようやく森の外へ出た。

お読みいただきありがとうございます。

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