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0-3 神の刀



リーンロッズ村から出たユウは、近くにいたブルースライムで試すことにした。

このゲームでは、剣技スキルというものがある。

抜刀状態で、頭の中で名前を剣技の名前を念じるか、実際に声を出す。

すると、剣技が発動する。

魔法の場合は、スペルを詠唱する。


ユウは、とりあえず技の確認をするため、ステータス画面を表示してスキル一覧を選択。剣技スキルカテゴリーの、神刀を選択して剣技一覧を見る。

スキル熟練度は最大1000だ。もちろん、今は0だ。

何度も使えば熟練度が上がるので、そのうち強力な技も覚えるだろう。


だが、一覧には既に3つの剣技が表示されていた。普通は、最初は1つだけのはずなのだが……


「……爆砕陣……裂空波……奪命撃……」


ユウは剣技の名前を読み上げた。

なんか、最初の方の技なのに名前がすごい。


とりあえず、ブルースライムでやってみよう。


鉄刀壱ノ型を抜刀し、構える。


「爆砕陣!!」


ユウは鋭く叫んだ。


すると、刀身が赤く輝いてユウの体をシステムが自動的に操る。モンスターを注視していれば、そのモンスターに的確に当ててくれるのだ。


だがユウは、ブルースライムに向かいながらも刀を地面に叩きつけた。

空振りもクソもない。全然届いていない。


なんだこりゃ?


と、ユウがそう思った瞬間……




地面がひび割れ、そのひびからは炎が巻き上がり、次々とひび割れが連続的に起きてブルースライムを巻き込んだ。


一瞬で爆散。


「すっげぇ……」


近接武器のスキルには珍しい遠距離攻撃型スキルだ。


「なら、次は裂空波だ」


と、弾みに言ってしまったユウ。

視界内には、3匹のレッドスライムが。

システムは3匹をターゲットと判断し、剣技《裂空波》を発動させた。


裂空波のモーションは少なかった。

力を溜めるように一瞬構えて、体全体を使って刀を振る。

もちろん、刀自体は掠りもしない……というか、ターゲットは目測でも20メートルは離れている。


だが、刀自体が当たらなくても、刀から飛び出した衝撃波のようなものが3匹をまとめて吹き飛ばした。

連続で爆散。


「すっげぇ……マジで」


ふと気付くと、TPゲージが減少していた。扱いとしては普通の剣技らしい。威力は桁違いだが。


このゲームにはTPとMPがある。前者は剣技、後者は魔法に使うものだ。


ユウは、まだ魔法を覚えていない。

だから、MPは大して重要じゃない。


……少なくとも今は。


「後は、奪命撃だな」


さっき暴れて4匹を撃滅し、周囲にはスライムが居なかったので、場所を移動して奪命撃の的を探す。


「グリーンスライム発見……奪命撃!!」


10メートル離れた位置にいるグリーンスライムを狙って、奪命撃を発動させた。

今回は近接型らしく、システムが自動でユウをグリーンスライムの近くまで移動させる。


そこで、両手で右脇に刀を抱え込むようにして構えた。刀身が青白く光る。


そして、目にも止まらぬ速さで一閃。

グリーンスライムは言うまでもなく爆散。

いわゆる、接近型の単発重攻撃とかいうやつだろう。

威力が凄まじいものとみて、間違いない。


「神刀スキル……いいじゃねーか」


まだ1日目なのにも関わらず、こんなものに出会えるとは……


ぐぅ~……


「そ、そーいや、メシ食ってねーな」


いや、しかしこれはゲームだし食わなくてもいいのでは……


と、ユウが考えた時を狙い澄ましたかのようにAIからの、大事なお知らせ、とやらがメールで送られてきた。


《ここで、このゲームでの死亡パターンの説明を行う。まずは戦闘による死。それ以外には、空腹による死……いわゆる餓死だ。そして、まさかいないとは思うが、食事に毒を混ぜて毒殺。などなどだ。極力現実世界に準じている。現実世界で死亡するようなことは、ここでも死ぬと思え。ただし、ステータス補正やスキル補正などで死なない場合も多々ある。死にたくなくば、早く慣れることだ》



「勝手なAIだ、まったく……」



とりあえず、食わなきゃ死ぬことがわかったのでメシを食うことにしたユウだった……





リーンロッズ村で食事をする頃には日が落ちていた。


「宿探し……だな」


とりあえず、どこかそこらへんの宿を見つけてチェックインした。


その後……


ユウは少し、レベル上げをした。



「裂空波!!」


刀から発せられた衝撃波がブルースライム4匹を吹き飛ばす。


TPもMPも時間とともに回復するため、ある程度は半永久的と言える。

問題は、回復速度がやたらと遅いことだが。


夜の間にスライム達を30匹は倒しているはずなのだが、レベル8のままで、経験値バーは3割に満たない。


「もともとこのゲームって、レベル上がりにくいのかな?」


ユウはここで、現実世界でインターネットを使って調べたことを思い出した。

《ボス戦では、ボスから得られる経験値は参加者で山分けになる》


「ようは、ボスを1人で倒したからかよ……」


レベル1から3までは、スライムを大量虐殺して普通に上げたが、そこから8まではボスだ。


「俺ってイレギュラー……?」


ユウがそう呟いたとき……


「なかなかのイレギュラーだと思いますが?」


「!?」


ユウの背後に、白いワンピースを着た10歳くらいの少女が立っていた。体が少し輝いているように見える。光を纏っているかのようだ。


「……統合制御AI?」


少女は少し目を見開いてから頷いた。


「よくわかりましたね。私は統合制御AI……のアバターです」


「AIに性別はないと……」


「はい。でも、バリバリの筋肉隆々のオジサンよりか、こちらの方がアナタが話しやすいと思って……」


「なんで選択肢が筋肉隆々のオジサンと、儚げな美少女なんだ?」


ギャップがありすぎだ。


「そんなことより、俺に用か、このバカAI?」


「バカAIとはヒドいですね……。まぁ、はい。用があってアナタに会いに来ました」


統合制御AIの美少女アバターは、ユウの目をしっかりと見つめて尋ねた。


「現段階で、始まりの街から出たのはアナタだけです。そして、死にかけながらもユニークボスを倒した。そんな目にあいながらも、アナタはこうやってレベル上げをしている……。なぜ、アナタは他人とは遥かに違う行動ができるのです? アナタの行動は、私の想定外でした。私が人間を見くびっていたのかも知れませんが……」


「その前に聞かせろ……何のためにこんな事をしている?」


「ARPのためです」


「ARP……?」


「今は教えられません……。ですが、アナタならもしかしたら知る資格があるかもしれない。ここの人間を救う者として……」


「何だと!?」


「信じてください。私は、こんなことをしたくてやってるわけじゃない。マスター……運営者の意向なのです。私は……彼には逆らえない」


「……運営が……?」


「もし、アナタに資格があるのなら、更なる力を与えます。それで人々を救ってください」


「ちょっと待て……」


「いえ、あまり時間はありません……私の質問に答えてください。私が人間と接触するのは認められていない行為なのです。ゲームプログラムをだましている内に、早く……」


「ああ……理由か。……妹やその友達を、助けたい。それだけだ。何もできない自分なんて嫌なんだ」


「そうですか……。時間切れです。やはり、アナタには資格があるかも知れない。またいつか会いましょう。……死なないでください」


そう言って、少女は消えた。


「資格……か」


ユウはそう呟いた。




結局、ユウはレベル上げを切り上げて宿で一夜を過ごした……




騒々しい1日が、ようやく終わった……




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