地獄スパイラルー自業自得の連鎖の先ー
俺の彼女の詠子はバイだと昨日知った。無論、金と優秀な興信所の探偵の力のおかげで、だ。探偵の彼はなかなかイケメンだが、それは今は置いておく。
それにより、詠子には彼氏の俺とは別に、彼女もいるという情報も掴めた。
詠子の彼女の名前は美井子、椎菜、出衣。
三人いるのは、詠子は三股ーー俺を合わせれば四股しているのが発覚し、本命が誰なのか俺にはわからないから推測するほかないからだ。
そして美井子と出衣は、調べた限り詠子以外と付き合っていない。だが、椎菜はレズビアンで、詠子以外にもうひとり彼女がいるらしい。
つまり椎菜も二股をしていることになるが、椎菜と詠子は互いに何人恋人が居てもいい、という誓いを交わしているらしく問題にはならない。
ただし、その椎菜のもうひとりの恋人である飯夏は、実は椎菜に隠して付き合っている本命の恋人ーー絵笛という歳上の彼氏がいる。その情報は探偵の力で掴んでいる。
その絵笛はバイセクシャルだというのも把握できている。
そして、絵笛は飯夏に秘密にしている恋人……彼氏がいるのだ。
その彼氏の本名はわからなかったが、“スゴテク爺”の通り名で親しまれているホモ……ホモは差別用語かもしれない。ここはゲイと表しておいたほうがいいだろう。
略して爺やは、そのような通り名が付くほど有名なゲイらしい。
しかし、不思議な事に彼氏である絵笛だけには通り名がバレていない様子だった。
だが、爺やは絵笛が本命のようだが、ゲイでも歴戦の男で、絵笛以外の不特定多数の男性とも肉体関係を結んでいる。
その爺やと肉体関係を持った男たちの中に、永地が含まれていることが、興信所の探偵の凄まじい能力により奇跡的に判明した。
永地は漢字を変えれば叡智。彼らしい素晴らしい名だ。
……永地は俺が詠子には秘密で付き合っているもうひとりの恋人だ。
俺の彼氏だ。
俺だけの彼氏なんだ!
なのに、永地は俺を裏切って、他所の知らないおっさんと行為をしたわけだ。穢らわしい!
そして、詠子なんて四股なんてしている。倍にすればだいたいヤマタノオロチ。酷すぎる!
二人とも俺を騙していたのだ!
悔しくてならない。
復讐心で、俺は力を尽くしてくれた探偵を誘惑して二人に内緒で浮気しようと図ったが、残念ながら彼はノンケらしい。
迷惑そうな表情を浮かべて拒んできた。
報酬額を三倍払うと提案したが、それでも無理だと拒まれた。
非常に男らしいタイプの細マッチョイケメンだというのに、本当に残念だ。
まあ、それはいい。過ぎた話だ。
十人十色。彼には彼なりの好みがあるだろう。俺はストライクゾーンに入らなかっただけの話だと思えば諦めがつく。
……一度落ち着こう。
感情任せに椎菜や永地を憎んでも仕方ない。
理屈や理論で思考しなければ問題は解決しないものだ。
今の俺には共感より理屈が必要だ。
それはわかっている。
それは理解している。
それは自覚している……だが。
だが!
「何処のどいつが!」
「落ち着いてくださいね~?」
目の前の医師が俺を宥めてくる。しかし、しかし叫ばずには居られない!
「俺に性病を届けた発信元が誰かだけは教えてくれよ!? 物理的な発信元開示請求をしてくれよ!」
「静かにしなさい。そもそも話を聞いたから言わせていただきますが、あなた方の性生活、少し異常ですよ?」
「俺にエイズと梅毒を送ったヤツを訴えなきゃ気が収まらねぇ!」
「今は医療も昔より進んでおりますから、とにかく落ち着いて。座ってください。そもそも、あなたも浮気してまいすよね。いい加減にしないと、私だって怒りますよ?」
俺の好みのタイプから外れた容姿の医者が、静かに宥めようとしてくるが関係ない。
「あぁぁあああああああああああッッッ!!」
俺の雄叫びが叫声となって嘆きに変わり、診察室の外まで轟くのであった。




