表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件  作者: 想いの力のその先へ
第一部 領主就任編 第一章 15歳、領主就任の時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

八話

 デフや村人たちと話した数日後。俺は村近くにある森へ、レグルスとともに足を運んでいた。あの後、もともと村の猟師であったというデフから色々と話を聞いていたのだ。

 その話によると、彼らは農業の他に狩猟。動物を狩って、その肉や革を使って生計を立てていたようだ。

 その場所を聞き、俺たちは足を運んだ、ということだ。


「に、しても立派な森だな」

「えぇ、そうですね。これだけ立派だと、林業としても使えそうです」

「まったくだ」


 本当に代官の目は節穴ではなかろうか。ここまで立派な森林資源。それに、こういった森だと動物。獲物も期待できるだろう。

 うまく村を育てることが出来れば、それこそ搾取するより、もっと旨味があっただろうに。まぁ、それが中世の軍事国家。脳筋国家の限界かもしれない。


「しかし、季節が悪かったか」

「それはまぁ、仕方ありません。さすがに時間を巻き戻す、なんてことは出来ませんし」

「それを成せたら神と崇められるかもしれんな」


 レグルスとの軽口の応酬が心地いい。特に村に来てから気の滅入ることばかりだった。まぁ、悪いことだというつもりはないが。

 それにしても肌寒い。やはり晩秋、冬に近いと日の当たりづらい森の中では冷えるか。それに、動物たちも冬眠準備であまり姿を見かけないし、本格的に狩猟に手を出すのは来年からか。やはり、食糧支援は必須だな。


「デフの話では、狩れる動物は鹿、兎、猪辺りだったか」

「えぇ、それに熊も出るとか」

「熊、か。狩れるならうまいだろうが……」


 少し頭が痛くなる。前世に於いても野生の熊は度々問題となっていた。

 この世界の人間は、前世の人たちよりも肉体的に優れている。それは、この世界の人間が屈強、というより科学技術などが発展していないからこその結果だと言える。

 なにしろ、移動は基本徒歩。ある程度の人口がある都市なら乗り合い馬車などもあるが、そもそも馬自体が高級、という軍事資源という側面がある。

 馬のことは置いておくとしても、そうやって常日頃から身体を使うことで鍛えられているわけだ。もっとも、鍛えられていたところで熊、巨大な肉食動物との身体能力の差はいかんともし難いわけだが。


「……ん?」

「どうしました、アインさま?」

「なにか、聞こえないか?」


 俺の耳に微かになにかが聞こえた。これは……水の流れる音?

 レグルスも耳をすませて、音を拾おうとしている。


「こっち、か?」


 音が聞こえる方へ歩を進める。枝を、雑草を掻き分け進む。そして見えてきたものに、知らずにやり、と口角が歪む。


「ははっ、まさか。ここまで至れり尽くせりとは……」


 そこには美しい水が流れる川。そう言えば、村に井戸がなかった。無くても問題なかった、ということだ。

 しかも、水と文明の発展は切っても切り離せない関係だ。メソポタミアしかり、エジプトしかり。

 さすがにそこほど巨大な河ではないが、水は澄んでいて、川魚が泳いでいるのが見える。そして、深さは成人男性の胴くらいまである。結構深そうだ。

 これは、村ひとつ発展させるには十分すぎるほどの恵み。さらにいえば、ここは辺境の村落。言い換えれば、競合相手もいない。

 古来、水利権というのは特権。付近に複数の村落がある場合、水を手に入れるため、殺し合いが起きるほど重要なものだった。それが独占できるのだ。これで笑うな、というのは無理だった。


「これは、一度運営が軌道に乗ればすごいことになりそうだな」

「まったくです。辺境、と聞いたときはどうしたものか、と思いましたが。まるで、金の卵ではないですか」


 珍しくレグルスの声が弾んでいる。やつの頭の中では、いま、はげしく算盤がはじいていることだろう。

 まぁ、俺だって似たようなものだ。少し考えただけでも林業、狩猟、川漁業。革や木材の加工。これだけの産業が浮かぶ。川の灌漑を行えば農地の開拓も行えるだろうし、はっきり言って、かなりのポテンシャルを村が持っているのは明白だ。

 惜しむらくはマンパワー。人口が少なすぎることか。いくら村が発展するポテンシャルを持っていても、それを発揮できる人員がいないのでは片手落ちだ。

 移民を呼び込むにしても辺境過ぎるし、旨味が少ない。長期的に見れば間違いなく旨いのだか、移住する人間がそれを判断できる可能性は高くない。あるいは、そういう人間を呼び込む、いや、手に入れるか。


「やれやれ、気が重くなる」


 子供たちを人買いに売った村で、今度は人を買おう、だなんて。いくら奴隷が合法とはいえ、だ。


「だが、人的資源。マンパワーを早急に増やすにはその方法しかない」

「ですが、アインさま? 村人たちの感情を(おもんぱか)ると……」

「あぁ、間違いなく悪手なんだよなぁ……。いや、あるいは」


 人を買う、という行為が問題なのだ。売られた村人を、子供を買い戻す。というお題目ならどうだ?

 無論、実際は不可能に近い。売りに出されて何年も経っている場合もある。既に売られた、死亡した可能性もある。

 それでも、行動しないよりはマシだし、村人にする、心情を無視していないというアピールにもなる。反吐が出る話だが。


「まぁ、どちらにせよ。売る、というより買うルートを開拓しないと話にならないんだがな」


 そう、物――木材や食料などの売買資源。必要な人的資源などの――が、あろうともそれを運ぶ。売り付ける商人がいなければ話にならない。


「いまは、開拓する前に商品を確保するターンか。こちらで動けば、耳聡い商人がこちらの動きを察知する可能性もあるし、な」


 そして、売買を強化する。財貨を得て、村をさらに発展させる。その正のスパイラルを構築するのだ。それが結果として、村のさらなる発展。そして、俺の目的へも近づくのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ