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転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件  作者: 想いの力のその先へ
第二章 16歳、領地飛躍の時

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十八話

 ――ディオスクロイ子爵領。


 領内にあるマーネン商会本部でワイ、ヴァン・マーネンは日課。というより、お仕事の書類整理をしてたんやけど。


「家内が帰ってきたぁ……?」


 部下から、そんな報告が上がってきて困惑しとった。

 そもそも家内。アルフェはいま、あのアルデバランの四男坊の領地で商売をしとるはずや。

 あそこからここまで、一週間はかかる。だから、大抵は手紙。書簡で話を済ませとる。そうでないともしもの時、商機を逃すからや。

 それを理解してるはずの家内がここに来た。つまり、それほどのことになっても元が取れる、と考えるだけのなにかがあった、ということになる。


「またぞろ、変なことやないとエエんやけど」


 どうにも家内のやり方は、時々強引なことがある。それで成功してるから、なんとも言えんのやけど、恨みも買いやすいのが難点や。


「問題ごとじゃないとエエなぁ」


 ワイはそう願わずをえなかった。

 そんなワイの心境を知ってか知らずか、家内は威勢の良い声と共に、ドアをバン、と開けて帰ってきた。


「ダーリン、ドデカい商談取ってきたでぇ!」

「はい……?」


 帰宅、開口一番のその言葉に、ワイの口からそんな間の抜けた声が漏れ出たんや。なんやねん、商談て。





 家内、アルフェから『商談』の内容を聞いたワイは腕を組み、ふむぅ、と唸り声を上げた。


「つまり、アルデバランの四男坊から奴隷発注された、ちゅうことやな」

「そうそう、そうやねん」


 にまにま笑っている家内。確かに言う通りドデカいヤマや。うちも奴隷売買はあるし、四男坊がそれなりの財貨を獲得しとるんは知っとる。でもなぁ……。

 奥さま、もと王族でディオスクロイ子爵夫人のマイアさまは、なにかと四男坊とその領地にご執心や。そこへ奴隷を持っていく、ねぇ……?


「その話、奥さまにはしたんか?」

「まだや、これから行こか思うて」


 まだ行ってなかった、と。良かったのか悪かったのか。どちらにせよ、お伺いは必要やな。奥さまも無関係やないし、色々な意味で。

 でも、奥さまならGOサイン出しそうや。あの方も、金稼ぐためなら躊躇しないからなぁ。





 本来なら、奥さまにアポイントメント。面通しの約束を取り付けて後日。というのが、通例だったんやけど……。


「面白いわね、それ」

「でしょう?」


 まさかまさかの、即日奥さまのもとへ通されての面談。それだけご興味を持たれてたのか、それとも……。

 ともかく、いま、奥さま。マイアさまは家内ときゃいきゃい、話に華を咲かせている。

 しっかし、奴隷売買を面白いちゅうんは剛毅なもんや。まぁ、奴隷売買のことだけじゃないと思うけど。


「それに都合も良いんではなくて?」

「でも、宜しいんです? マイアさま?」

「わたくしにとっても、そしてマーネン商会にとっても貸しとなるでしょう? 今後のことを考えるなら、存分に貸し付けるべきだと思うけど」

「さすがマイアさま! 話がわかるぅ!」


 けらけら笑う家内。そんな単純な、いや、ある意味単純なんやけど。

 ……そもそもの話やけど。家内から、四男坊がさらに代金を上乗せする条件は聞いとる。そして、それを行うことは可能や。奥さまのさじ加減ひとつやけど。まぁ、奥さまは乗り気なんで問題ないやろ。

 なにしろ、上乗せの条件。自領の売られた子供たちの買い直しやけど。すべて、ではないけど一部はこのディオスクロイ領におる。というより、奴隷のご主人は奥さまや。


 まず、はじめに重要なのが、そもあの領地の売られた子供たちは、そこまで商品価値がなかった、ということ。

 当たり前や。ほぼ骨と皮だけの子供になにが出来るか、っちゅう話。労働力としては役に立たん。そんなんを買い付けるんはよほどの物好きや。

 一応、そういう相手に欲をぶつける、嗜好家に需要はあるやろうけど。それだって、既に供給は満たされとる。困窮しとるんはあそこだけの話じゃないしな。他の領から売られた子供もいる以上、あっちゅうん間に埋まるんは当然の話やろ。


 ちゅうことはつまり、子供たちは奴隷のなかでも不良在庫。いつ処分されてもおかしくない、ってことや。そんな子供たちをワイらは捨て値で買い取った。

 他の奴隷商たちからえらい感謝されたわ。まぁ、売れなきゃ、どんどん維持費がかかるから当然の話やな。

 ただ、こっちとしても慈善事業で買うたわけじゃない。思惑があったからこそや。


 まず、さっきも言った奴隷商からの感謝。そういう貸しは後々の財産になる。積み上げて損のないもんや。

 そして、売り捌く勝算があった。奥さま、マイアさまのことや。

 あの方は王族、しかも財務、内政に明るいということもあって、人の使い方熟知しとる。その使い道は教育して、自分の手駒にしてしまおう、ちゅう考え。


 そんなん奴隷の使い方やない、と言われればそれまでやけど。マイアさまからすればそれこそナンセンス。

 子供は柔軟な頭持ってて、物覚えも早い。そして、奴隷から救われた子供たちは間違いなくマイアさま。ディオスクロイ子爵家に心酔する。

 絶対裏切らない手駒の完成や。もっとも、こんなんできるんは、金をたらふく持つディオスクロイ子爵家、そしてマイアさまだけやろうけど。


 その教育した一部を四男坊の領地に返そうって言うんや、剛毅と言う他ないやろ。それとも、それほどあの四男坊を買ってるのか。それはわからん。

 でも確かなのは、マイアさま。ディオスクロイ子爵夫人は奴隷売買を通じて、繋ぎを取ろうと考えてることや。

 それやったら、こちら。マーネン商会としてもあそこに資金を投資する旨味がある。それがまんま、ディオスクロイ領に、ワイらに返ってくる可能性が高いからな。

 それに、きっとマイアさまの思惑はそれだけに留まらない。そんな気がひしひし、と感じられる。


「やれやれ、ほんま。恐ろしいお人やでぇ」


 本当、マイアさまは産まれる場所を間違えた。商家に産まれれば稀代の大商人へなれたに違いない。

 そう感嘆しながら、ワイはため息が漏れるのを止められなかった。

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