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転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件  作者: 想いの力のその先へ
第二章 16歳、領地飛躍の時

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十六話

 商談が終わってアルフェが退室した後、俺は緊張で固まった身体を弛緩させていた。なんとか商談が纏まって良かった。

 ただ、アルフェに、マーネン商会へ奴隷の買い付けを依頼したのは良い。しかし、待っているだけでは意味がない。

 今後のことも考えて、出来ることはやっておかないと。


「デミオ老、済まないね。驚いただろう?」

「いえ、ご領主さま。わしらのため、ありがとうございまする」


 涙声のまま、すするよう呟くデミオ老。

 そう感謝されても困る。実際に売られた奴隷が帰ってくる可能性は低いし、奴隷購入はこちらの都合によるものだ。


「いや、良いよ。これは必要なことなんだ。だから、デミオ老。頭を上げてほしい」

「ですが……」


 どこか困ったようなデミオ老。まぁ、気持ちは分かる。彼にとって、俺の思惑はどうあれ、奴隷を買い直そうという行動に変わりはないんだ。だったら、感謝するのは当たり前。むしろ、感謝を受け取らない俺に困るんだろう。


「なら、こちらのお願いを聞いてくれるかな?」

「……お願い、でございますか?」


 俺がお願い、というのを不思議に思ったのだろう。少し、デミオ老の上擦った声が響く。

 まぁ、デミオ老。というより、領民たちにしてほしいことではある。それを伝えてほしいだけだ。


「あぁ、そうだ。……さっきも聞いてもらったように、いずれここに奴隷が訪れる。そのとき、彼らを受け入れてほしい。たとえ、子供たちじゃなかったとしても、だ」

「……それは」


 途端、難しい顔になるデミオ老。

 そりゃそうだ。子供たちが帰ってこないかもしれない、と宣言しているのだから。そして、そのとき、受け入れてほしいと。

 いわば、仮に帰ってこなかったとして、奴隷を。そして、マーネン商会を恨まないでほしい、と言っている。

 それはとても難しく、残酷なことだろう。一度希望を持ったゆえに、諦めきれないはずだ。だが、十分あり得る未来でもある。


 そして、たとえ傷ついてでも奴隷は買う必要がある。緩やかに死を迎えつつ村を、領地を再生させるためにはマンパワー、人的資源がいる。だが、いまの領民の数では明らかに足りないんだ。

 本来、こんなことは無能の極みだ。正直、前任者。この領地を差配していた代官を見つけたら、ぶち殺したくなる。それはアスガル、レグルスも同じだろう。

 本当ならかなりのポテンシャルをえていたこの地を、ここまで痩せ細らせたのだから。


 沸々と怒りが巻き起こりながらも自制する。いまはまだ、代官の行方も分からないし、そもそも相手にしている暇もない。

 それより、するべきことをしないと。

 とはいえ、現場。木の伐採、ならびに木材の確保はアスガルが、冬眠から起きた動物の狩りはデフが行っている。


「村の女衆が農地の作業をしてるし……」


 やはり、俺が行うべきは内政、というか書類整理か。館にあった裏帳簿やら、商談の記載を整理したり、と。そういったことをレグルスと手分けして行っていた。

 まぁ、アルフェとの商談のため、途中で抜けてきたわけだが。


「やはり実働もそうだが、人手が足りん」


 しみじみと呟く。出来れば官吏、役人も増やしたい。いまは俺とレグルスでも回せるだろうが、今後領地が大きく、というより発展したら捌くのは不可能だ。

 それにレグルス自身のこともある。


「出来れば昇進させてやりたいし、それで仕事も任せたい」


 そう、そうなのだ。

 レグルスは俺の傅役とされたことで、無理やり出世コースから外された。これが兄貴、嫡男たるディムラ兄貴の傅役なら、間違いなく出世コースが約束されるのだが。

 それに、アスガルも含めて、だが――。


「二人とも、まだ独身なんだよなぁ……」


 本来なら主君である俺が嫁の世話をするべきなのだが……。

 そんな伝手もないし、そもそも、俺自身独身だ。もともと部屋住み予定。飼い殺しになる前提だったから、婚約なんかもなかったし。

 それでも、領地で好き勝手出来ていたからまだ恵まれている方だろう。そうじゃなきゃ、ローマンコンクリートやら火薬なんて作れなかったからな。


 まぁ、単純に親父どのたちがまったく興味を示していなかったから、とも言えるが。いや、兄貴のひとり。三男のアルニ兄貴だけは興味を、というか関心を示していたが。伯爵家の中で唯一、じゃないな。俺と姉貴以外で唯一内政を鑑みていた人だから。


「だからこそ、苦労していたとも言えるが」


 いや、振り回していた俺が言うことでもないか。


「あの、ご領主さま……」

「……ん? あぁ、済まない。デミオ老」


 彼がいるのを忘れて考えに没頭してしまった。考え始めると周囲が見えなくなるのは悪癖だな。直さないといけない、というのは分かっているんだけど。


「もし、あの子たちが戻らなかったとしても、わしらは……」

「ストップ、そこまでで良い」

「ですが……!」

「無理に覚悟を決めなくても良い。……ただ、覚えておいてほしい、ということだから」


 そう、デミオ老たちが納得できるとは思っていない。ただ、理解してほしいんだ。

 買われてくる奴隷たちは、この村と同じ。口減らしのため、売られた子である、という可能性を。あるいは、この村が崩壊した未来の可能性だ、という事実を。


「買われてきた彼ら、彼女らにも家族があった。この村のように、あるいは得られたかもしれない幸せがあったかもしれない。それだけは、覚えておいてほしい」

「……っ! はい、わかりました。村の者たちにも、話しておきまする」

「頼む、負担をかけることばかりで済まないね」

「この老骨に出来ることであれば」


 そう言って、にこり、と微笑むデミオ老。

 その笑顔にきっとこの村なら、デミオ老がいるこの村なら、奴隷たちの第二の故郷となる。そんな確信を得て、俺も少し、安堵の笑みを浮かべることが出来た。

 そのためにも、俺は故郷となり得るこの村を発展させないとな、と気持ちを新たにするのだった。

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