第20話 長きに渡る因縁に決着を 2/3
Part 1 ジーンマジギレ!
正午、一戸天馬とジーンは六本木の喧騒の中にいた。藤間乱丸を追い詰めるための作戦会議を続ける中、天馬は重い口を開いた。
「いよいよあいつと対面すると思うと、すごい緊張するよ。俺や葉子は、普段日常生活を送る影でいつも藤間に怯えてたんだから。」
ジーンは「ふむふむ」と相槌を打つ。
「そうか……もしかしたら天馬がこういうバイトを始めたのは、この日のためかもしれないね……運命かも。」
その言葉に、天馬の表情に決意が宿る。
「今はA級なんとかとか、俺が出世するとか、そんなことどうでもいい。いかに藤間を徹底的に追い詰めるか、それだけだ!」
ジーンはすかさず言う。
「偽造した会員制クラブの会員証を作っておいたから、あいつは午後6時くらいに接触するよ!」
天馬は真剣な眼差しで答えた。
「ああ!あいつだけは俺がこの手で葬ってやる!」
そんなやり取りをしていると、突如として車が激しく揺さぶられた。
「何が起きたの?地震?」
ジーンの問いに、天馬は驚いたように車の窓を見た。
「何で……あいつが……」
車のドアを蹴りつけていたのは、天馬の記憶に焼き付いている人物だった。全身に沢山の入れ墨を彫り、スキンヘッドの男――まさしく藤間乱丸だ。男は激高した様子で叫ぶ。
「おら!出てこいや!!てめえら俺を探ってたんだろ?筒抜けなんだよ!!」
その尋常ではない蹴りの力に、車体はみるみるうちに凹んでいく。
「誰の差し金で藤間組にカチコミ入れてんじゃ!ゴラ!さっさと出てこい!」
ジーンが冷静に判断を下す。
「このままだと収拾がつかない……出るよ……天馬!」
天馬は覚悟を決めたように「分かった……」と応じ、二人は車を降りた。
天馬は藤間に向かって言い放つ。
「お前?藤間か?久しぶりだな!十年前の仮を返しに来たぜ!」
藤間は訝しげに天馬を見る。
「なんだ!?このクソガキ?」
ジーンがすかさず言葉を継いだ。
「お前が葬式に乗り込んで悪辣な言葉を浴びせていた、あの男の子だよ!」
「葬式?ああ……」
藤間は記憶を辿り、やがて思い出したように言った。
「何か天馬君って言ったっけ?お姫様を守るナイト気取りのクソガキな!仕返ししてやるとか言ってたっけ?有言実行できて偉いね!?」
ジーンが冷徹に告げる。
「お前の命運もここまでだ!調べたところ30人は人殺しをしている……お前は日本の法律に全て抵触するレベルで犯罪を犯し続けた極悪人だ!観念しろ!」
藤間は嘲るように舌を出し、言い放つ。
「警察も裏社会も藤間組の組長ともなると手の出しようがないからだからなんだっていうんだ?俺は選ばれたからいくら犯罪犯してもいいの?」
天馬はこれ以上ないほどの怒りに駆られた。
「この腐れ外道!お前には人の心がないのか!?」
藤間は余裕の表情で続ける。
「お前の仕返しって綺麗ごと並べに来ただけ?社会に出たことないおこちゃまでちゅね?あー何かむかついた。」
そして藤間は、天馬とジーンにとって聞き捨てならない言葉を口にした。
「何かgene社って変な会社が絡んでるんでしょ?ほらITとか扱う会社……俺達がそこに圧力かけてあげるから……もう下手な真似しないでくれない?」
その言葉に、ジーンは目の色を変えた。だが藤間は構わず続けた。
「俺ちょっと夕方クラブで遊んでくるから。お前らは俺の子分にしかけさせて殺すから……お前らの場所は割れてるから逃げられないよ!じゃあな!」
天馬は怒りに任せて叫んだ。
「待てこのクソ野郎!!」
しかし、天馬の内心の恐怖が彼を縛りつけ、何もできなかった。藤間はそのまま近くに止めてあった黒塗りの車に乗り込み、どこかへと去っていった。
天馬は、恐怖に震えながら呟いた。
「俺、怖い……ついに10年間封印してたパンドラの箱を開けてしまった気がする……」
だが、ジーンは不敵な笑みを浮かべ、天馬の方を向いた。
「ジーン?どうした?」
「gene社に圧力をかける?今あのハゲはそういったよね?世界的大企業を舐めてんじゃねーぞ!」
ジーンの珍しいほどのマジギレに、天馬は不思議そうにジーンを見た。
「どうしたんだ?いつもの冷静さが欠けてるんじゃ?」
ジーンは真っ直ぐ天馬を見つめ、告げた。
「天馬?そろそろ俺達の本気を見せてやるよ!」
そう言うと、ジーンは何か通信を始めた。
「gene japan.全社員に告ぐ! emergency level 4発動!」
天馬は目を丸くして尋ねた。
「へ!?どうしたの?」
ジーンはさらに続けた。
「全勢力を注いで藤間組組長 藤間乱丸を徹底的に追い詰めろ!!」
そして、想像以上の何かが動き出し始めた。
Part 2 gene japan.の本気
しばらくすると、同じ車種の車が四台、天馬たちの車に接近してきた。
天馬は一瞬にして顔色を変える。
「藤間の刺客か……俺たちもこれまでだな……」
しかし、ジーンは落ち着いた声で首を振った。
「違うよ……天馬を守るSPだ。」
その言葉の通り、四台の車両は天馬の乗る車の四方に十字を描くように停車した。
「天馬が万が一でも狙われないように、要人警護のSPを呼んでおいたんだ。これで藤間の刺客が来ても命の心配はないよ……」
ジーンはさらに不敵な笑みを浮かべた。天馬は呆然と問いかける。
「へ? ジーン? 何かしたの!?」
ジーンは天馬に、まるで種明かしをするかのように言った。
「スマコンでメビウスを起動してごらん! 動画が流れてるでしょ?」
言われた通りに天馬がメビウスを起動すると、そこには複数の検問が張られているらしき光景が映し出された。
「何だこりゃ!? 嘘だろ!? ここら辺周辺? まさか?」
ジーンは天馬の驚きを楽しむかのように続けた。
「藤間のクラブやこの場所一体の車道、全てに最新鋭の技術を使用した検問をかけといた! 顔認証で絶対バレるし、強行突破しても自動的に車両がストップするような技術が使われてる! つまり、下手なことしたら公務執行妨害で現行犯逮捕ってわけ!」
天馬は開いた口が塞がらない。だが、ジーンの仕掛けはまだ終わらなかった。天馬は、頭上から聞こえるヘリの音に気がつく。
「あれ? 上空に複数のヘリがホバリングしてる! なんだなんだ!?」
ジーンは得意げに答える。
「テレビ局の人たちだよ。六本木の高級クラブに暴力団組織が立てこもってるって半分ガセを流した……半分っていうのは実質本当だからね。」
そして、メビウスの動画からは、六本木の上空を映し出すニュース映像が流れてきた。アナウンサーが緊迫した声で報道している。
「中継です! 今、六本木の建物に暴力団組織が立てこもっているとの情報が入りました! 続報が入り次第お伝えします!」
天馬は感嘆の声を上げた。
「すげー!! gene社ってこんなこともできるの!?」
ジーンは「まだまだ」と言わんばかりの笑みを浮かべ、天馬に告げた。
「まだこんなの序の口だよ! 本番はこれからだよ! そのままメビウスの動画を視聴してごらん。」
gene社の真の力が、今まさに解き放たれようとしていた。
Part 3 gene japan.の本気 その2
メビウスの動画には、藤間がクラブに入る様子が映し出されていた。しかし、クラブの中はもぬけの殻。
「あれ?何か閑散としてるぞ! まあいいや、早く来すぎたんだろ?」
藤間は堂々と椅子に座ってくつろぎ始める。すると、クラブのオーナーが恐る恐る近づいてきた。
「藤間様……お代は結構ですので……お帰りになられてよろしいでしょうか?」
藤間は眉をひそめる。
「藪から棒に何を言い出すんだてめえ? 舐めてんのか? いつも5000万の酒買ってやってるだろ?」
オーナーはしぶしぶといった様子で口を開いた。
「ええとですね……このクラブの嬢は3億円の立ち退き料をもらって逃げてしまいまして……」
藤間は驚きを隠せない。
「はぁ? 何だって!?」
オーナーは続けた。
「そしてこのクラブも**gene japan.(ジーンジャパン)**って会社に買収されてしまいまして、わたくし達は営業できなくなったんです。」
藤間は怒りを露わにする。
「おい待て! 事情を説明しろよ!?」
「そして私も5億円の莫大な立ち退き料をもらって、まともな仕事をしろって言われまして……」
オーナーはそこまで言うと、恐れおののき始めた。
「藤間組より怖い!!! 助けて!!!!」
オーナーは一目散に逃げ出した。藤間は懐から拳銃を取り出し、オーナーに向けて発砲した。
「おい待て!てめえ!!」
藤間は苛立ちながらPINE通話をかける。
「もしもし、俺のいきつけのクラブが立ち退いたぞ!てめえら早く駆けつけろ!」
しかし、通話の先から慌てたような声が飛び出してきた。
「組長! 大変です! 警察らしき奴らが俺たちを摘発して! ああ、俺も逃げなきゃ……『君も来なさい!』」
そこで藤間の電話は切れた。藤間は呟く。
「何が起こってやがる!?」
藤間は、外が少し騒がしいことに気づいた。
「今度は何だ!?」
藤間はクラブの外に様子を見に行った。そこには、無数の警察車両と、盾を構えた警察の機動隊がクラブを完全に囲んでいた。藤間は唖然とした顔で呆然と立ち尽くす。
「なんだこりゃ!? いや……俺は夢でも見てるのかな? 戻って一杯ひっかけとくか。」
藤間は踵を返し、元のクラブの椅子に座り直すと、バーから勝手に酒を注いで飲み始めた。
この様子を動画で視聴していた天馬は、興奮を隠しきれない。
「すげーかっけえ!! 藤間ざまぁみろ!!」
その時、SPの車から一人の男が顔を出した。それは有賀鉄平だった。有賀は天馬に語りかける。
「よう!一戸!今回のディザスター討伐は俺も参加する!俺と一戸とナチュラルαで奴を倒すぞ!」
有賀の姿を見て、天馬の心は救われた思いになった。
「心が洗われていく……ジーン……有賀さん……そしてgene社の方々、ありがとう……」
天馬は嬉し泣きをした。
そして少しして、ジーンが口を開いた。
「もうこれで藤間は孤立して四面楚歌だ! 乗り込むよ! 天馬!」
こうして、天馬とジーン、そして有賀は、藤間のいるクラブへと向かった。
Part 4 王手
天馬たちが乗る車が、目的の会員制高級クラブに到着した。車を降りると、警察の機動部隊がまるで道を譲るかのように整然と左右に分かれる。そして、彼らは一斉に敬礼した。
「ご苦労様です!」
天馬はあまりの優遇ぶりに驚きを隠せない。その様子を見た有賀が言った。
「ここから先は、天馬とナチュラルαの務めだ! 健闘を祈る。」
天馬とジーンは互いに顔を見合わせ、頷き合った。そして、クラブの中へ足を踏み入れる。
クラブの奥には、藤間が静かに酒を飲んでいた。酔っている様子はあまり見られない。天馬たちの姿を見つけた藤間は、表情一つ変えずに言った。
「さっきの天馬君か? 外のサーカスはなんだ? これが君の仕返し?」
生粋のヤクザである藤間は、状況に全く動じていない。天馬は叫んだ。
「藤間!もう逃げられないぞ!観念しろ!」
藤間は銃を向けようとしながら言い放つ。
「イライラすんなぁ! 早く死ね!」
その瞬間、ジーンがすかさず弛緩装置を照射した。リング状の物体が藤間を拘束する。
「なんだこりゃ!?」
拘束された藤間に、ジーンが静かに語りかける。
「もうお前は約30件の殺人罪、及び数多の余罪で起訴できる状態にある……もういくら控訴しても確実に死刑だろうね? だけどさあ……」
ジーンは言葉を続ける。
「こちらに協力してくれれば無期になるよ? どう?」
藤間は拘束されたまま、怒鳴った。
「わけわかんねえこと言ってんじゃねーぞ!」
天馬は、憎悪のこもった目で藤間を睨む。
「ディザスターとかどうでもいいよ! こいつが死ねばさあ……」
しかし、ジーンは天馬の言葉を遮った。
「この外道を殺すだけで終わらせていいの? 僕に妙案がある。こいつを裁くためにもディザスターを倒そう。」
ジーンの言葉に、天馬は納得したように頷いた。
「わかった!」
直後、警察官たちが藤間の所持品をチェックし、拳銃などを押収する。そして、天馬とジーン、有賀は、拘束した藤間を車に乗せ、六本木の大きな公園へと向かった。
何故か公園は閉鎖されており、人っ子一人いない。そこで、藤間を下ろし、ジーンが藤間の拘束を解いた。天馬たちは、藤間との問答を始める。
Part 5 可哀想だな 救いようがなくて
六本木の公園の、人影のない閉鎖された一角
天馬は藤間に問いかけた。
「情けをかけてやる!お前にも自分が極道に入った過去があるだろう?白状しろ!」
藤間は嘲笑った。
「俺なぁ、悪いことする時に快感を覚えるんだよ!」
有賀が驚いた顔で言った。
「過去を聞いてるんだぞ?」
藤間は言葉を続ける。
「挫折した過去があるから悪い奴になったって言わせたいの?そいつは違う!昔から盗みをしたり人ぶん殴ったり人を困らすのが趣味だったんだよ……いつか俺は裏社会のどっかの組に守られてな、いつしか人を殺しても警察に捕まってもすぐ出所できた……俺は人を殺すということにいつしか快感を覚えるようになったんだよ!」
天馬は激高した。
「お前は何か誰かに排斥されたり虐待されたりとか、深い傷を負ったわけではないのか!?」
藤間は冷笑を浮かべた。
「何か悲しみがあって闇堕ちしたとか、そういう回想を聞きたいわけ?んなもんねーよ!ただ好きなんだよ。人を乱す。国を乱す。秩序を乱す。それが俺の喜び!それ以外の何物でもねーんだよ!」
有賀は呆れ顔で吐き捨てる。
「可哀想だな……救いようがなくて……躊躇なくお前をやれそうだ。」
藤間は挑発するように言った。
「で!?俺を詮索してこれからどうするの?殺すの?ヤクザでも殺したら君たち豚箱行きだけど。」
ジーンが静かに口を開いた。
「さぁ……問答しても無駄だよ天馬……有賀……天馬!プロンプトを打って!プロンプトは最もシンプルな言葉で発現すると思う。」
天馬は覚悟を決めたように答えた。
「ああ……分かったよ。これほどまでにクズだと、かえって清々しいよ……いくぞ!『悪 save the gene!!』」
その言葉と同時に、藤間が強烈に苦しみ始めた。
「てめえ!何をやった!? あがぁぁぁぁぁぁぁ!!」
藤間の断末魔と共に、おぞましい姿のディザスターがその姿を現した。
「我こそは憎悪のディザスター……否、悪の権化オーガ也。」
To be cotinued!!




