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1章 金木犀

さっきから、何度も時間を確認する俺。

「5分前、、、。」

 と呟いた時、彼女の姿が見えた。

「お待たせー!!」

 金木犀の匂いが漂う並木道のベンチに座る俺に向かって、大きく手を振って近づく彼女。

「待った?」

「ううん、今来たとこ。」

 彼女がそういうのを待っていたかのように練習していた言葉をすぐ返す。

「ふふっ、珍しいね。もしかして、今のやりとりしたかった?」

 くすりとはにかむ君。

俺は照れた顔が見えないように彼女の手を握った。


健康的じゃない、ほっそりとした俺の手に握られた彼女の手は真っ白で、温かい。

ゆっくり歩き始めた彼女の歩幅に合わせて俺も歩く。

「なーんか、遠出って初めてだよね。楽しみーっっ!」

 そう言って笑う彼女の瞳は色素の薄いミルクティーカラー。

黒色のミニスカート。上に着ている白いトレーナーに彼女のゆるくまかれたミルクベージュの髪がかかる。

「俺も、楽しみ!!」

 そういった俺に彼女はもう一度微笑んだ。



「電車って久しぶり!椿つばきくんは?」

「ん〜、俺も、かな。」

 久しぶりの電車に興奮した杏花きょうかの目はキラキラしている。

「今日、どこ行こうか?都内と決まってても色々あるし。」

 僕が話をふると、杏花は

「どこでもいーのに。私は椿くんについてく!」

 と言った。

「えぇ。俺は特にないし、杏花の行きたいとこあれば、そこに行くつもりで、、、。」

「じゃあね、ビックパフェ一緒に食べよ!美味しいんだって。そのあとはまた後で決めればいいじゃん!」

 杏花の意見に同意して、あとはゆっくり電車に揺られた。

俺たちの街から電車に揺られて1時間とちょっとの場所に、今日の行き先がある。

ゆっくり乗っていられるので、本でも読もうと本を開いた俺に、杏花が話しかけてきた。

「暇だよぅ、椿くん。お話しよーよ。」

 いつもはでしゃばるような子ではなく割とおとなしめなのだが、俺といると少し元気になる杏花は、一緒にいて楽しくもあり、時に少し迷惑だ。

「じゃあ、杏の花の花言葉を教えてあげようか。」

 俺の話を杏花は聞く気満々。

「杏の花の花言葉は、臆病な愛。」

「えぇ、なにそれー。でも、ちょっと私たちに似てるかもね」

 と、杏花はふふっと柔らかに笑った。

臆病な愛。

俺たちはそんな愛を重ねて少しづつ完全な愛になろうとしている。

パズルのピースを少しづつはめていくみたいに。

今日も、そんな物語の1ページ。



「ついたーっっ!」

 そんなふうに叫ぶ杏花と、疲れ果てた俺。

なんでそんなに元気なのかと聞きたくなるくらい。

なぜならば俺らは、ゆったりとした電車の中でたくさんの話題で話を広げたあと、大きな街を走り回りながらやっとのことで見つけた店の前にいるからである。

「はぁ、はぁ、疲れてないの、、?」

「疲れ吹き飛んだ!ビックパフェ食べよー!」

 過去一にテンションが高い彼女をよそに、俺は息を整えて、店内に入る。

店内はシンプルなカフェという印象で、そこからビックパフェが出てくるなんて、想像もつかないような雰囲気だった。

静かで心地よい音楽を聴きながら、俺たちはビックパフェを注文し、窓側の席につく。

「あー!楽しみだなぁ、ビックパフェ。」

 満面の笑みを浮かべた杏花。

「俺も楽しみ。てか、俺、いーーーっぱい食べれるからね!杏花の分も食べちゃうかもよ〜?」

「えぇー!?私が食べたいって言ったのにー!」

 ぷくぅっとほっぺたを膨らませて怒る杏花、、、、可愛い。

そんなところに、思ったより大きいパフェを一生懸命持ってくる店員さんが見えた。

「こちら、ビックパフェです。大きいので、気をつけてお食べくださいねー。」

 そういって店員さんは机に「どん」と可愛くない音を立ててパフェを置いた。

置かれたパフェのせいで向かいの杏花が見えない。

「すっごーー!おっきーい!」

 興奮して大きな声を出す杏花。

「杏花、静かに、ね。」

 俺がそういうと杏花は少し小さくなった声で

「早く食べよっ!」

 と言って、一番上に乗っていたさくらんぼを食べた。

「椿くんも食べよ?」

 そういった杏花の声につられて俺も食べ始める。

ビックパフェを食べ終わる頃には杏花のあの明るさはすっかりなくなっていた。

それは、あんなに意気込んでいた俺も同じ。


「はぁ、、、食べ終わった〜。」

「食べたね〜!」

 という、杏花は少し明るさは戻ってきているものの、元気さはなく、ぐでーっとしている。

「次、どこ行きたい?」

「んとねー、ショッピングモール!」

 高々と宣言する杏花。

「、、、ここら辺、バス通ってるしバスで移動しよ?ショッピングモール行きのバスもあるし。」

「いいよ、俺もお腹いっぱいで動く気にならないし。」

 俺の言葉に笑みを浮かべた杏花は、早速お会計に移動して、ビックパフェを食べ切った称号的なシールをもらって、笑顔で服につけていた。

「よーし!じゃあ、杏花、行くよ!」

「食べたら元気出た?」

「うん、ショッピングモールで騒いじゃおうかな」

「ダメだよ!」

 そんなやりとりを続けてバスに乗り込んだ俺らはバスに揺られ、しばらく経ってやっとショピングモールに着いた。

「でさ、ショッピングモールのどこに行きたいの?杏花。」

 ふと聞いてみると、杏花は俺の腕を強引に引っ張って、ピンク色の照明が可愛いお店へ連れてきた。

「fan fun、っていうお店!可愛い服がね、たくさんあってね、椿くんに選んで欲しいなって!」

 fan funという名前のお店は、確かに可愛い服がたくさんあった。大きなリボンがついたワンピース、レースがたくさんついたスカート。黒色のビスチェ。デニムのハーフパンツや、ベージュのミニスカート。ベレー帽や髪飾りなど種類豊富で、どれも可愛いものばかりだ。

「杏花の好きそうなのを選べばいいの?」

 と聞くと

「ううん、私の好み関係なしに椿くんに私に似合いそうな服を選んで欲しいの。」

 と杏花は満面の笑みをこちらに向ける。

つまり、、、杏花が着たら可愛い服を選べばいいということ。


しばらく杏花と一緒に店の中を探索して、いいものを見つけた。

白を基調としたワンピースに、透明なピンクのレースがふわり上にかかっている服。

「可愛い、、、」

 と、杏花も感動していたほど。

「杏花、これも合わせてみない?」

 と、俺が差し出した赤色の大きなリボンの髪飾りはコーデをキュッと引き締める。

そのコーデを気に入ったらしい杏花は、店員さんに着て帰りたいと懇願し、試着室で着替えさせてもらってワンピース姿になった。


ワンピースを着た可愛すぎる杏花を連れて、俺がやってきたのはショッピングモール内にあるゲームセンター。

「ゲーセンじゃん!プリ撮らん???」

 と、杏花の提案でとりあえずプリクラを撮ることに。

写真をとって、落書きブースでたくさん落書きをする。

今はスマホでダウンロードもできるけど、2人で実物を分け合うのが好き。

「これ、誰って感じじゃない!?」

 そう言ってずっと爆笑している杏花が何をみているかというと、俺のプリである。

「加工強すぎw w w」

 ヒィヒィ言いながら笑う杏花はもうほぼ息できていない。

「そんな笑うなよなー、俺、一生懸命ポーズとってたんだから。」

 流行りのポーズなんか知らないから、短い時間の中で頑張ってポーズをとったのに、こんなに笑うとは、少し失礼だと思う。


「クレーンゲーム、しない?」

 俺の提案に、少し不服そうな杏花。

「私、クレーンゲーム下手、、、。」

「俺がとるから。」

 ちょっと格好つけると、杏花はクスッと笑いながら

「カッコつけてるでしょ。」

 という。

やっぱり、杏花の前で格好つけるのは無理かもしれない。

「あ、!みるくれーぷ!!ね、これとってよ!」

 杏花が指を指した台の中にはベージュの子犬のぬいぐるみが入っていた。

「これ?」 

 と聞くと杏花は

「みるくれーぷ!今有名なキャラクターだよ!!可愛いでしょ?」

 と怒ったようにいった。

「じゃあ、これやるよ??」

 と、500円を入れる。

「え〜?最初っから6回できるやつなのー?」

「文句いうなー!俺が取るんだからいーでしょっ」

 運命の一回め。

みるくれーぷをつかんだアームは、だんだん力がゆるくなって、みるくれーぷを落とした。

「アームよわっ!?」

 2回目、3回目、4回目、5回目。

ちょっとずつ近づいて、最後6回目。

「、、、最後、、、。」

 アームがみるくれーぷをつかむ。

「え、待って!?今回アーム強くない!?」

 アームが移動して、落とす。

「あっ!!ゲット!!!ありがと〜、椿くん!!!」

「いーえ!6回で取れてよかった、、。」

「本当にありがとーー」

 恥ずかしくて言えないけど。

俺は、杏花のその笑顔で満足なんだよ。



無事、みるくれーぷを取ることができてるんるんな杏花と、ショッピングモールを散策していると、駄菓子屋さんを発見。

「みてみて、駄菓子屋さんだよ!お菓子買お!」

「駅で食べよっか。」

 俺がそう声をかけると、杏花は笑顔で駄菓子屋さんに入った。

小さなカゴにガムやチョコ、マシュマロなど、たくさん入れる杏花。

俺は、特に食べたいものもなく、杏花の後ろについていくだけ。

「みてみて、椿くん。これ、美味しそうじゃない?」

 杏花が持っていたのは、棒マシュマロ。大きなマシュマロに、ハートが印刷されている可愛い仕様のもの。

「可愛いね。」 

 そういうと、杏花は満足したようで、他のお菓子コーナーへ。

俺も、何か買わないと申し訳ないと思い、いつも食べるグミを買う。

「杏花、そろそろ帰るよ。」

「うん。お会計するから待ってて。」

 カゴいっぱいのお菓子を精算し、袋いっぱいになったお菓子を振りながら駄菓子屋を出発。

「電車の時間まであとちょっとあるけど、そのまま駅でいい?お腹すいてない?」

 市内バスに揺れながらそう聞く。

「うん、ビックパフェ、美味しかったし、、、。それに、駄菓子もあるもん。」

 まぁ、ビックパフェは昼食兼おやつ。食べ切るまで時間がかかったし、食べ終わったのは2時くらいになった頃なので、俺もまだお腹は空いていない。

「じゃあ、駅で食べようか。」

 バスを降りたらすでに、日が沈み始めていた。

「チョコ、食べていい?」

 駅のベンチが空いていなく、俺の手に寄りかかる杏花がそういう。

「食べな。」

 金色の包み紙を四角く折って、もぐもぐとチョコを食べる杏花。

なんだかハムスターに見えてきて、可愛いな、と思う。

『2番線ゆかり町行き電車が入ります〜〜』

 アナウンスが入って、ハムスターになった杏花を連れて電車に乗り込む。

人が少なく、席が空いていたので席に座る。

「楽しかったね〜」

 そういう杏花の目はとろんとしていて、眠たそう。

「ふわぁ、あ。疲れたなぁ、。あーあ、でーと、もうおわり、、?」

 あくびをして、今にも寝そうな杏花。

「疲れたよね、、、。寝てもいいよ。1時間あるし。」

「うん、じゃあそーするー、、、。」

 と、言って。

速攻、杏花の可愛い寝息が聞こえてきて。

今日、早かったなぁ。とふと思う。

楽しかった。

だから、あっという間だったんだ。

寂しい。

杏花とずっと一緒にいたから、離れたくない。

こんな毎日がずっと続けばいいのに。

始まりました。

よろしくお願いします!

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