7.枕
起きると、蜥蜴が食い荒らされていた。
沢山な鴉と、犬が群がっている。
肝も食っておけばよかった、惜しいことをした。
「よし」
枕を食う。
昨日は焼いたので、煮る。
骨と一緒に煮込むこととする。他は獣にくれてやる。
食えそうな草も入れた。いらんことをしたかもしれない。
灰汁が出てくる。
掬い取るものがない、困った。
仕方なしに素手で灰汁をとる。熱かった。
二十分、煮た。
「うむ」
悪くない。良い出汁だ。浮いた脂が尚のこと良い。
肉に出汁が染み込んでいる。焼くより上等だ。
しかし草はいらなかった。やはりいらんことをした。
あと、塩が欲しい。最早贅沢ではない、必須だ。
本音を言うと味噌が欲しい。が、そこまでは望めまい。
睡眠時、枕には魂が宿ると聞いた。
なれば昨晩、この肉に己が魂を預けたこととなる。
この汁には、魂の残り香が移っているやもしれん。
魂魄で香りをつけた吸い物。そう考えると、愉快な気持ちがする。
嗅いでも分からんが、愉快だ。
「美味かった」
満足した。
塩があればより満ちたりよう。
必ず塩を、手に入れよう。
「あっ」
はたと気付く。
亀の甲羅で、もっと良い出汁がとれたかもしれん。
甲羅は既に放り投げている、惜しいことをした。
今度亀を見つけたら、甲羅を枕にしてみようと思う。