表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風来、女ひとり  作者: 頭いたお
一。
7/24

7.枕

 起きると、蜥蜴が食い荒らされていた。

 沢山な鴉と、犬が群がっている。

 肝も食っておけばよかった、惜しいことをした。



「よし」



 枕を食う。

 昨日は焼いたので、煮る。

 骨と一緒に煮込むこととする。他は獣にくれてやる。

 食えそうな草も入れた。いらんことをしたかもしれない。



 灰汁が出てくる。

 掬い取るものがない、困った。

 仕方なしに素手で灰汁をとる。熱かった。

 二十分、煮た。



「うむ」



 悪くない。良い出汁だ。浮いた脂が尚のこと良い。

 肉に出汁が染み込んでいる。焼くより上等だ。

 しかし草はいらなかった。やはりいらんことをした。

 あと、塩が欲しい。最早贅沢ではない、必須だ。

 本音を言うと味噌が欲しい。が、そこまでは望めまい。






 睡眠時、枕には魂が宿ると聞いた。

 なれば昨晩、この肉に己が魂を預けたこととなる。

 この汁には、魂の残り香が移っているやもしれん。

 魂魄で香りをつけた吸い物。そう考えると、愉快な気持ちがする。

 嗅いでも分からんが、愉快だ。



「美味かった」



 満足した。

 塩があればより満ちたりよう。

 必ず塩を、手に入れよう。



「あっ」



 はたと気付く。

 亀の甲羅で、もっと良い出汁がとれたかもしれん。

 甲羅は既に放り投げている、惜しいことをした。

 今度亀を見つけたら、甲羅を枕にしてみようと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ