6.蜥蜴
蜥蜴を斬った。それも大蜥蜴だ。
地を響かせる巨体、流石に度肝を抜かれた。
家屋より遥かに大きい。が、斬れた。
斬れたはいいが、火を吹くには参った。妙な畜生もいるものだ。
残していた蕨もどきは燃えてしまった。袋にも穴が空いた。困った。
困ると、腹が減る。
大物の蜥蜴だ、腹一杯に食えるだろう。
火を起こす。
「はて。火か」
火を吹くということは、蜥蜴の内には油袋があるはずだ。
腑分けして拝借すれば、夜も歩けるやもしれん。
慎重に裂いてみる。
「わからん」
どれが油袋か見当もつかん。
捌いている内、随分と現場が惨いことになる。
着替えたばかりなのに、また血だらけである。困った。
心の臓は判然として分かった。
私の頭より大きい。食いごたえがあろう。
枝に突き刺し、焼く。枝が折れた。
刀に突き刺し、焼く。刀は折れん。
「ふむ」
生焼けだ。
焼くには大きすぎた。鉄の味がする。
しかし良い歯応えだ。悪くない。
肉も焼く。首から採った。
身は少し硬い。鶏肉に近い。蛇肉のような気もする。悪くない。
血につけて食ってみる。鉄の味がする。
調味料がほしい。
食いながら物色を続ける。
立派な角、ふたつ。蜥蜴が角を持つとは知らなんだ。
拝借する。売れればいいが。
鱗も剥いでみる。固い。
先日出くわした賊が、こいつを帷子として使っていた気がする。
魚のものかと思ったが、蜥蜴のものだったのだろう。
賊はよく斬れた。鱗もよく斬れた。二束三文にしかなるまい。
調味料ぐらいなら買えるだろう。
腑分けしていたら日が暮れた。
油袋はついぞ分からなかった。
なので歩けぬ。寝ることとした。
蜥蜴の尾が良い枕となった。
ひんやりして良い気持ちだ。
明日食う。