5.亀
溜池を見つける。
亀がいた。亀を食うこととする。
亀を屠るは二度目だ。
幼き頃、甲羅の下がどうなっているのか気になった。
剥がしたら、亀は死んだ。悪いことをした。
亀を捕える。
甲羅を外した。亀は死んだ。
悪いこととは思わん。食うために殺すは自然に則っている。
あの時も食えば良かった。確か放り投げた気がする。悪いことをした。
「煮る」
煮た。
水が豊富な土地のようだ、存分に使える。
そも焼くか煮るかしか出来ん。水があるうち、沢山煮るのがいいと思う。
「うーむ」
汁。
不味くはない。美味くもない。
出汁は出ている。しかし調味料がない。
いわば単なる亀汁だ。なんとも言えん。
身。
泥臭い。美味くはない。
食感は悪くない。しかしやはり泥味だ。
調味料がほしい。贅沢とも思えなくなってきた。
故郷では鼈なる亀が珍重されていた。
鍋が美味らしい。しかし結局食えなかった。
異国の地、最早食う機会もあるまい。
仕方がないので、ただの泥亀を堪能する他ない。
「御馳走様」
剥いだ甲羅。
何かに使えんか考えてみる。
思い浮かばなかったので、放り投げた。
悪いことをした。