4/24
4.陽
乾いた血溜まりから起きる。全身、がびがびする。
川で水浴。袴の血を落とす。あまり落ちん。
さらし、褌も替える。気持ちがいい。
誰もおらん、下着のまま寝転び、数刻過ごす。
暖かな陽が身に染み込む。極楽、極楽。
陽で方角も分かった。西を目指す。
西には何があるのだろう。分からん。
分からんが、困れば西を目指すと相場が決まっている。
なんでも浄土の方角らしい。
浄土とはどんな所だろう。分からん。
「西、西」
西へ歩き、乾いた蕨もどきを舐める。
新鮮な山菜が食いたい。
だがこの土地の草木がよく分からん。
草木は、陽の光を食うらしい。
なればどの草木を食ったところで、要は陽の光を食っている訳だ。
直接食った方がよかろうとも思う。
「あああああ」
また寝転んで、陽に向かう。口を開けてみる。
気持ちがいい。しかし腹は満ちない。
いずれは満たされるかもしれん、そのまま食い続ける。
いずれは来ず、いずれ寝ていた。
「よく寝た」
夜である。
夜は歩かぬと決めた。
また寝た。眠れる場合は寝るに限る。
極楽、極楽。