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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
一。
3/24

3.蕨

「落ちた」



 崖から落ちた。

 夜に歩くはよくない、今後はやめる。



 のそりと起きる。

 起きた所で、夜に歩くはよくないと学んでいる。

 やめて、またそのまま寝転ぶ。

 天。星が綺麗だ。本当に綺麗だ。



 気付くと、左大腿から出血している。

 随分と血潮の勢い甚だしい。血溜まりも深くなっている。

 仕方がないので足を縛る。目眩。茸よりは随分楽だ。

 血を作るは容易だ。何か食えばいい、食えるものを探す。



「ふむ」



 袋には干からびた蕨もどき、一束。

 蕨に似ていたので採ったが、なんの山菜なんだか分からん。しなびて一層わからん。

 からからの何かを、かじってみる。

 草の味がする。



「うん、うん」



 美味くはないが、良い苦味がある。猪頭と共に煮るべきであった。

 何本か食った。血は造れた気がする。容易なものだ。

 目眩もなくなった。傷も塞がった。



「星が、綺麗だ」



 寝転び、不明な草をねぶりながら、星が美しいと嘆息する。

 齢二十になってようやく、自然なる美しさが分かってきた。

 齢三十にもなれば、泥濘の美しさとして悟れるかもしれない。

 齢四十あたりには、浮世とて美しく思えてくるだろうか。

 かくて五十に往生すれば、さぞや良き人生だろう。


 年経る楽しみ胸に、まだ温かい血溜まりの中で寝た。

 極楽、極楽。


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