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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
二。
24/24

24.艮

「……」


「……っ。…………」



 よろず屋。人集り。

 衆目の先。売った角が、売られていた。

 厳重に、硝子窓に入れられ、売られていた。



 桁が、ふたつ違う。

 三千万。

 三千万?



「……三千万?」


「……まあ、なんです。そういうこってすな」



 買い叩かれた。

 腹が立たんと言えば、嘘だ。

 しかし桁が並外れている、怒りも失せる思いがする。



 そして合点がいった。

 殺されかけた理由が、分かった。

 知らずに三千万を持っていた訳だ。襲われもしよう。



「……まさか文句はないでしょうな。こいつも商売、そうでしょうお嬢さん」


「……うむ。そうだな、その通りだ」



 商いとは血を流さぬ合戦と聞く。

 海千山千の怪物を打ち倒すには、知識だ、情報だ、駆け引きだ。

 己が負けたは己が為だ。致し方あるまい。



「……文句を言いに来た訳ではない。地図を買いにきた。一番精巧な奴を、くれ」


「地図? ああ、はい。地図ね……地図は結構高いですよ。まあ、大負けに負けてあげますが……」


「そうだ、この椀と……ああ、包丁もあるじゃないか。あとはまな板、まな板をくれ。とりあえずこれだけでいい」


「ん? ああ、はいはい。椀と包丁と……。ええと、しめて八万……」


「何、二桁もまけてくれるのか。有り難い。有り難い。そうか、二桁もまけてくれるとは思わなんだ」


「……」


「いやあ、いい店だ。こんな立派で精巧な地図をそんな値段とは。うむ、うむ。受け取ってくれ、八百だ」


「……まあ、いいでしょう」


「あ、この鍋もくれ。平べったい奴」


「……はい」


「この毛布も。二枚だ。あとこの調味入れも……卸し金はないか、ないのか、じゃあええと、こいつも……」


「はいはい……」





 風来、女ひとり。

 地図と、椀と、包丁と、あとまな板やら何やら色々背負い。

 食いに喰われに、艮を目指す。

一区切

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