20.肝
目が悪ければ、目を食う。
足が悪ければ、足を食う。
さすれば悪きは改善すると、そう聞いた。
腑が傷ついた、なら腑を食えば早く治ろう。
しかしどの腑が傷つけられたんだかよく分からん。
分からんが、なんとかなろう。
「これだこれだ」
馬の肝。
血を造るにはこいつが一番だ。
大蒜を擦らねば。そう思ったが、流石に面倒だ。
そのままかぶりついた。
「うん、うん」
存分に美味いが、やはり薬味が欲しい。
やはり塩ぐらいは振らねばならん。塩を振る。
欲が出た。結局大蒜を擦った。美味い。
腹を撫でる。食ってる間、血は大体止まった。
しかしまだ調子が悪い。腑はまだ治ってないと見た。
肝を平らげたあと、馬の腹肉を直接に食らう。
「ん、悪くないな」
まるで鬼の喰い方だ。奴もよく熊にかぶりついていた。
しかし凝った料理もちゃんと出来る奴だった。
奴のすき焼きは絶品であった。
「ううむ」
随分調子が良くなったので、考える。
やはり殺される程の粗相を犯したとは思えん。ならば殺すつもりで招いたのだろう。
とすると、刀を奪うつもりだったに違いない。確かに値打ち物ではあるが。
「罪なやつだな、お前も」
刀は抗議するように瞬いた。
まあ、こいつが悪い訳でもない。
悪いのは人が心だ、世間に擦れてゆがむ道徳だ、いわば浮世だ。
死ねば仏、埋めてやろう。
埋めてから、少し寝た。
起きてから、一度荷を確認した。
馬の肉はほとんど食ってしまった。足が二本残るばかりだ。
そして角が一本。売れればいいのだが。
舌肉は今食った。
「行くか」
街を目指す。
すぐに着くだろう。
パンは、買えるだろうか。




