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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
二。
20/24

20.肝

 目が悪ければ、目を食う。

 足が悪ければ、足を食う。

 さすれば悪きは改善すると、そう聞いた。


 腑が傷ついた、なら腑を食えば早く治ろう。

 しかしどの腑が傷つけられたんだかよく分からん。

 分からんが、なんとかなろう。



「これだこれだ」



 馬の肝。

 血を造るにはこいつが一番だ。

 大蒜を擦らねば。そう思ったが、流石に面倒だ。

 そのままかぶりついた。



「うん、うん」



 存分に美味いが、やはり薬味が欲しい。

 やはり塩ぐらいは振らねばならん。塩を振る。

 欲が出た。結局大蒜を擦った。美味い。



 腹を撫でる。食ってる間、血は大体止まった。

 しかしまだ調子が悪い。腑はまだ治ってないと見た。

 肝を平らげたあと、馬の腹肉を直接に食らう。



「ん、悪くないな」



 まるで鬼の喰い方だ。奴もよく熊にかぶりついていた。

 しかし凝った料理もちゃんと出来る奴だった。

 奴のすき焼きは絶品であった。



「ううむ」



 随分調子が良くなったので、考える。

 やはり殺される程の粗相を犯したとは思えん。ならば殺すつもりで招いたのだろう。

 とすると、刀を奪うつもりだったに違いない。確かに値打ち物ではあるが。



「罪なやつだな、お前も」



 刀は抗議するように瞬いた。

 まあ、こいつが悪い訳でもない。

 悪いのは人が心だ、世間に擦れてゆがむ道徳だ、いわば浮世だ。

 死ねば仏、埋めてやろう。



 埋めてから、少し寝た。

 起きてから、一度荷を確認した。

 馬の肉はほとんど食ってしまった。足が二本残るばかりだ。

 そして角が一本。売れればいいのだが。

 舌肉は今食った。




「行くか」




 街を目指す。

 すぐに着くだろう。

 パンは、買えるだろうか。


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