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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
二。
19/24

19.刀

 腹を刺された。

 包丁のようだ。深々と刺さっている。

 腑まで達しているかもしれん、血が止まらん。

 腹から抜くと、随分と勢いよく血が吹き出した。



 賊でも入ってきたか、斬る。

 そう思ったが、刀が見当たらん。

 ならば首を折ろうと、相手に近づく。

 暗きを凝らして見ると、家の主人であった。驚いた顔をしている。



「まだ死なないのか、こいつ!」



 私は何か粗相をしただろうか。

 考えても分からん、何故殺されねばならん。

 なにか誤解があったのかもしれん。



「おい、何故殺そうとする。言え」



 主人は喋らず、首を絞めてきた。

 頭をひっぱたいてやったら、目を回して倒れた。

 まずは理由を知りたい。事を決めるはそれからだ。



 腹にさらしをきつく巻く。血が染み出してくる。

 調子もおかしい。やはり腑が傷ついている。

 血も随分失っている。何か食わんといけん。

 理由を知る、刀を取り戻す、血を造る。やることが多い。



「おい、何故殺そうとした。刀はどこへやった。何か食うものはないか。言え」



 主人はやはり喋らない。

 みっつ一遍に喋ったのは良くなかった。

 もう一度頭をひっぱたいてみる。やはり喋らぬ。

 腕でも折ろうかと思ったが、痛めつけるは性に合わんのでやめる。



 一旦落ち着き、優先すべき順を考える。

 理由は、後から聞けよう。聞けんなら聞けんでも、まあ構わん。あとで考える。

 血も、まだ保つ。数刻は死なんはずだ。戦うにも問題ない。いくらでも素手で殺せる。



 ならば、刀だ。あれを盗られるはまずい。何をしでかすか分からん。

 私でなければ言う事を聞かん奴だ。きっと人を斬るに違いない。

 思っている矢先、居間から悲鳴が聞こえた。




「ああああああああ!」




 息子が、奥方を斬っていた。

 刀身が、緋色に光っている。

 既に魅入られている。話も通じんだろう。



 取り返さんと一歩踏み出すも、腹の痛みで少しとどまってしまった。

 その間、血相を変えた主人が飛び出した。止めるまもなく、息子へ駆け寄った。

 そしてそのまま、斬られてしまった。



 息子は、襲いかからんと近づいてくる。

 が、私を認めると足を止めた。

 ぶるぶる震えたかと思うと、突如己が首に、刃を突き刺した。

 血飛沫をあげ、そのまま果てた。

 皆、死んでしまった。








 落ちた刀を拾い、叱り飛ばす。



「なんてことをするんだ。また肥に突っ込まれたいか」



 脅すも、刀身はいまだ緋な光を帯びている。

 消沈するかと思いきや、様子が違う。



「……なんだ、護ったとでも言いたげだな」 



 一層、強い妖光を発した。

 護ったつもりらしい。ならば護られたのだろう。

 峰を優しく撫でてやって、静かに鞘に納めた。 



「むう」



 それにしても、随分な事になった。

 腹の血は、未だ止まらん。

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