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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
二。
18/24

18.血

 随分酔った。

 呂律は回る。しかし目も廻る。

 この目眩は嫌いじゃないが、これ以上はいかん。



「ああ、すまん限界だ。もう、寝る」


「ええ。今寝床をご用意します、少々お待ちください」


「ああ、有難う、有難う」


「どうだい、最後にもう一杯」


「ああ、もらおう、うん」



 最後の一杯を傾ける。

 不意に息子が聞いてくる。



「なぁなぁ倭人さん。その刀は値打ち物なのかい? ここらじゃ珍しいや」


「ああ、これは妖刀だ。危ないぞ」


「洋刀? 倭刀だろう、知っているよ」


「だから妖刀だ」


「いや、洋刀は両刃だろ。そりゃ倭刀だって」



 この息子とは話しが噛み合わん。

 こちらが酔っているせいかもしれん。

 もう判然とせん。会話を打ち切る。




「寝床のご用意ができました。ゆっくりおやすみください」




 部屋に通され、衣服も脱がずに寝台に倒れた。

 ああ、いい気持ちだ。たらふく飲んだ。



「ああ、そうだ」



 大小差したまま寝るはよくない。外す。

 そういえば息子が興味を持っていた。

 なんの気なしに、抜いてみた。

 刀身が薄っすら、緋く光った。

 綺麗な光だ。



 この刀は、血を吸う。

 吸うと、毀れた刃が直る。

 手入れがいらん。何人も斬れる。とかく便利だ。


 持ったばかりの頃は、随分悪さをしようとした。

 意思に反して、人を斬ろうとするのだ。

 手が勝手に動くは全く参った。無辜な人を殺すところであった。


 あんまり悪さをするので、一度肥溜めに突っ込んでやった。

 刀は暴れた。暴れる刀を初めて見た。そのまま三日暴れるに任せた。

 四日後、ようやく静かになった。それからは従順になった。



「たまには飲ませるか」



 悪い刀だが、礼はせねばならん。

 己の血を、少し吸わせてやる。酒の味がするやもしれん。

 緋の妖光を灯らせ、美味そうに吸った。こいつも酔うんだろうか。

 自分でも舐めてみる。鉄の味だ。酒の味はせん。



「悪さをしたら、また突っ込むからな」



 余程嫌だったのだろう。

 反省するように、妖光は消えていった。

 峰を撫でたら、嬉しそうにまた光った。

 鞘に収めて、そのまま寝た。

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