17.火酒
「次の街まではまだある。俺の家に寄っていくといいよ、旅人さん」
「有り難い」
「肉もいくつか持つよ」
「有り難い、有り難い」
きっといい縁に違いない。
胴を担ぎ、脚肉を預け、ついていく。
全て持っていきたかったが、手が足りん。
頭は埋めてやった。舌肉と角だけ拝借する。
「……その角はどうするんだい?」
「次の街で売ろうと思う。立派な角だ、いくらかはするだろう」
「……ふうん、そうか」
「肉も売れればいいな」
歩いて十分程。
街道を少し離れた林の中に、一軒家。
「少し待っててください。事情を話してくるんで」
ここから随分待たされた。
歓迎されてないやもしれん。
が、なんとか通された。
「歓迎しますよ、倭人さん」
「いやあ、初めて見たよ倭人。ははは、ゆっくりしてってよ!」
奥方。丁重に挨拶をする。
二十そこらの息子。丁重に挨拶をする。
随分嬉しそうに迎えてくれた。有り難い。
「ツバクラだ。名を教……」
「おい、早速酒を出してやってくれ。一番いいのを出すんだ」
「ええ、ただいま」
名は分からんかった。
また聞こうと思ったら、酒が出てきた。
酒。
酒は良い、人類の友だ。
が、ここらの酒はちと強い。無色透明なのに、喉が焼けるようだ。
慣れんが、友なのでいただく。
「イケる口かい? どんどん飲んでくれ。ちょっと早いが飯にしよう」
「そうだ、馬肉を使ってくれ。脚を一本やる」
「ははは、こいつぁいいや! 食おう食おう!」
馬肉は焼かれた。
刺しが良かったが、焼いたのも美味い。
焼きすぎで少し硬いが、まあよかろう。
肉の脂と辛口の酒は合う。いい気持ちになってきた。
「ほら、どんどん飲んでくれ! 遠慮するな旅人さん!」
注がれる。
注がれれば、飲む。
飲み干せば、また注がれる。
そいつをまた、飲む。
「強いなあ、倭人は」
「いや、しかし、大分酔った」
「時間はたっぷりある。夜まで飲もうじゃないか」
「私ばかり飲むのもよくない。そちらも」
「いいんだ、いいんだ。こっちはこっちで飲むから。ほら。ほら」
思えばまだ日中。
昼から酒とは随分贅沢だ。
カリガネと飲み比べした時以来だ。あれは楽しかった。しこたま吐いた。
奴もこの地で、酒を飲んでいるんだろうか。
何を飲んでいるのだろう、誰と飲んでいるのだろう。
会えたら、死合う前に旅の話を聞かねばならん。こちらも色々話したい。
友の姿が脳裏に浮かぶも、いつしか酔いでどこかへ消えていった。




