15.蚯蚓
今日は一日、何とも出くわさんかった。
日が暮れようとしている。
随分と腹が減った。
「何かなかったかな」
袋には塩、油、大蒜に、唐辛子。
直接食えるのは大蒜ぐらいだ。
しかしなんだか勿体ない気がする、袋に戻す
「むう」
茸を探すが、毒ばかりであった。
草はいくらか見つけたが、腹が膨れる程は採れん。
小川はあるが、魚も居らん。
「仕方ない、寝るか」
良い場所はないかと探す。
ふかふかな土を見つけた。
寝床を敷かんとすると、穴がいくつか空いていることに気付く。
蛇がいるかもしれん、少し掘ってみる。穴掘りは手慣れたものだ。
「駄目だ」
蛇は出ず、大きなミミズばかりが出てきた。
こういう日もあるだろう。諦めて、横になる。
目線の先。土へ帰らんと、ミミズがうねうね動いている。
じっと、眺める。
ミミズか。ミミズ。
「……」
食った。
泥の味がした。純粋たる泥だ。
とにかく臭い。最悪の食感がする。飲み込めん。吐き出す。
「駄目か……」
魚であれば賞味もできようが、人である。
今度こそ諦め、また横になる。うとうとしだす。
明日は何か見つかるだろう。駄目なら大蒜でも食おう。
しかし、今日は随分、歩いた。……。
……。…………。
飛び起きる。
ミミズ。そうだミミズだ。
私はこいつの食い方を、知っている。
そうだ、奴だ。カリガネの奴だ。
鬼のカリガネが、確かに言っていた。
二人で釣りをしていた時、確かに聞いた。
「主ァ知っとるか? 実はミミズって食えるんじゃ。縦に割いて、土を出してな? ようく洗って素揚げにするんじゃ」
「鬼も釣れるかもしれんな」
「ウハハハハ! 酒の方がよく釣れるぞウハハハハハハ!」
鬼は嘘をつかんという。
しかしくだらん冗談は言う。
あれは冗談だったかもしれん。確かめねばなるまい。
土を掘る。ミミズ、十数匹。
爪で割いて、開く。小川で入念に洗う。泥はもう嫌だ。
既に日は落ちた。火を起こし、これでもかと洗った。
貰った油。あまり無駄遣いは出来ん。
鍋を傾け、底を深くし、少しだけ使う。
思えば初の揚げ物だ。
油を沢山使うし、火の加減もよく分からんから、手を出さなかった。
しかし物は試しだ。やってみる他ない。
「ふむ」
やはり火加減は分からんが、大分熱くなった気がする。
ミミズを入れると、油が弾けた。ばちばち音がする。
料理人は音で具合を判断するという。耳を澄ます。
分からん。適当に油から出す。
そして、塩。
私は人より塩を信用している、塩は確かなものだ。
確かなる塩を振り、ミミズの素揚げを、食う。
「む? むう……ふむ」
驚いた。食える。
泥の味はもうしない。塩の味だ。当たり前だ。
食える、食える。鬼は嘘をつかなかった。
揚げては食い、揚げては食って平らげた。
多少焦げたのもあったが、初めてにしては上出来だ。
「ああ、大分マシになった」
やはり塩と鬼は信用できる。
奴を見つけたら礼を言おう。
そして食ってやろう。




