14.鶏
上から襲われるとは思わなかった。
斬らんと見据えてぎょっとした。女が二人、空から降ってきた。
確かに女だ。しかし手足が鳥だ。驚いた。鳥女だ。
一羽斬ったら、片割れは驚いてどこかへ飛んでいった。
石を投げたが、外れてしまった。もう追えん。
まじまじと殺した鳥女を見てみる。
顔は中年の女のようだ。人間の顔をしている。
胴も人のものだ。乳房をまるごと露出している。
痴女ではなかろうか。
手。どう見たって鳥だ、手羽だ。
足。どう見たって鳥だ。鶏と同じだ。
こんな奇怪な魔物、見たことがない。
考える。
まず間違いなく、人ではない。食える。
しかし顔が人間のものだから、食いづらい。
猪頭も少し迷ったが、あれよりも抵抗がある。
「まあいい、食おう」
鳥な部分だけ食う。
羽を毟るは一苦労だ。
粗方除いたら、火で炙る。
鶏の手羽と比べ、肉があまり無い。ほぼ骨だ。
老鶏なら良い出汁が出るだろう、煮ることとする。
足は鶏に比べ、大分肉が多い。
食いごたえがありそうだ。煮る。
そして、塩だ。
そう、今の私には塩がある。
有難うイワン。有難うマラーニャ。鍋にぶちこむ。
「あっ、そうだ」
周囲を探索する。
イワンに教えてもらった、食える草を探す。
名前は分からんが、ひとつ見つけた。ぶちこむ。
鶏の吸い物が、出来た。
汁。美味い。大変に美味い。
鶏汁が不味い訳ないのだ。こいつは真理だ。
手羽。これはほぼ骨だが、軟骨も多い。
軟骨は好きだ、歯応えが良い。
硬骨も細いので食えた。美味くはない。
足。ほとんど鶏である。
非常に柔らかい。煮凝りの食感に近い、美味い。
しかし爪が邪魔だ。先に切り落とすべきだった。
草。韮のような味がする。少し甘い。
これは良いものを教えてくれた。名前は知らんが韮とする。
「御馳走様。美味かった」
野料理も随分出来が良くなってきた。
未だ焼くと煮るしか出来んが、形になっている。
やはり塩だ。塩がいい。有難うイワン。有難うマラーニャ。
食い終わったら、穴を掘る。
連日穴を掘っている気がする。
美味いが面倒だ、もう襲ってこないで欲しい。
「ん? 鳥女……。…………あっ」
思い出した。
もしやこいつ、迦陵頻伽ではないのか。
浄土には翼を持った、大変に美しい女がいると聞いた。
得も言われぬ声で歌うとも聞く。それが迦陵頻伽だ。
だとすれば、大変なことをした。
貴き浄土の生き物を、殺してしまった。
どうせ地獄行きの身とて、浄き存在を殺していい訳がない。
申し訳ない、申し訳ないと、顔を覗き込む。
「……」
美しくは、ない。
乳も丸出しだ。やはりただの痴女だ。
痴女とて死ねば仏だ。埋めて弔った。
もう穴は当分、掘りたくない。




