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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
二。
14/24

14.鶏

 上から襲われるとは思わなかった。

 斬らんと見据えてぎょっとした。女が二人、空から降ってきた。

 確かに女だ。しかし手足が鳥だ。驚いた。鳥女だ。



 一羽斬ったら、片割れは驚いてどこかへ飛んでいった。

 石を投げたが、外れてしまった。もう追えん。

 まじまじと殺した鳥女を見てみる。



 顔は中年の女のようだ。人間の顔をしている。

 胴も人のものだ。乳房をまるごと露出している。

 痴女ではなかろうか。



 手。どう見たって鳥だ、手羽だ。

 足。どう見たって鳥だ。鶏と同じだ。

 こんな奇怪な魔物、見たことがない。



 考える。

 まず間違いなく、人ではない。食える。

 しかし顔が人間のものだから、食いづらい。

 猪頭も少し迷ったが、あれよりも抵抗がある。




「まあいい、食おう」




 鳥な部分だけ食う。

 羽を毟るは一苦労だ。

 粗方除いたら、火で炙る。

 鶏の手羽と比べ、肉があまり無い。ほぼ骨だ。

 老鶏なら良い出汁が出るだろう、煮ることとする。



 足は鶏に比べ、大分肉が多い。

 食いごたえがありそうだ。煮る。



 そして、塩だ。

 そう、今の私には塩がある。

 有難うイワン。有難うマラーニャ。鍋にぶちこむ。



「あっ、そうだ」



 周囲を探索する。

 イワンに教えてもらった、食える草を探す。

 名前は分からんが、ひとつ見つけた。ぶちこむ。




 鶏の吸い物が、出来た。

 汁。美味い。大変に美味い。

 鶏汁が不味い訳ないのだ。こいつは真理だ。


 手羽。これはほぼ骨だが、軟骨も多い。

 軟骨は好きだ、歯応えが良い。

 硬骨も細いので食えた。美味くはない。


 足。ほとんど鶏である。

 非常に柔らかい。煮凝りの食感に近い、美味い。

 しかし爪が邪魔だ。先に切り落とすべきだった。


 草。韮のような味がする。少し甘い。

 これは良いものを教えてくれた。名前は知らんが韮とする。



「御馳走様。美味かった」



 野料理も随分出来が良くなってきた。

 未だ焼くと煮るしか出来んが、形になっている。

 やはり塩だ。塩がいい。有難うイワン。有難うマラーニャ。




 食い終わったら、穴を掘る。

 連日穴を掘っている気がする。

 美味いが面倒だ、もう襲ってこないで欲しい。




「ん? 鳥女……。…………あっ」




 思い出した。

 もしやこいつ、迦陵頻伽(かりょうびんが)ではないのか。


 浄土には翼を持った、大変に美しい女がいると聞いた。

 得も言われぬ声で歌うとも聞く。それが迦陵頻伽だ。


 だとすれば、大変なことをした。

 貴き浄土の生き物を、殺してしまった。

 どうせ地獄行きの身とて、浄き存在を殺していい訳がない。

 申し訳ない、申し訳ないと、顔を覗き込む。




「……」




 美しくは、ない。

 乳も丸出しだ。やはりただの痴女だ。

 痴女とて死ねば仏だ。埋めて弔った。

 もう穴は当分、掘りたくない。


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