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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
二。
13/24

13.黒麦

 賊に襲われる。

 一人目は突きで殺した。

 二人目は袈裟で殺した。

 三人目は首を折って殺した。

 四人目は逃げた。石を投げたら、頭が潰れた。

 五人目は命乞いをした。慈悲だ、苦しまぬよう首を両断した。


 先の町からさほど離れていない。

 大恩ある夫妻が出くわす可能性もある。

 他に仲間がいれば大変だ。念入りに仲間も殺しに行く。


 四人目が逃げんとした方角、煙が立っている。

 根城に違いない。そちらへ向かう。

 それにしても賊の多い地域だ。取り締まって欲しい。






 思った通り、他に賊が七名。火を囲んでいる。

 不意打ちを食らわそうかとも思ったが、間違いがあったらかなわん。

 一応問答してみる。



「賊か」



 何も言わずに襲ってきた。

 賊らしい。斬り殺していく。



 賊の中に二人、華奢な女がいた。

 仲間のようだが、間違いがあったらかなわん。

 こいつも問答してみる。



「賊か」


「ひ、人質です」



 人質らしい。刀を収めた。危なかった。

 収めた途端、襲ってきた。

 賊らしい。殴り殺した。



 賊をいくら殺したとて、食える訳ではない。徒労だ。

 それに如何な人からも奪わんと決めている。奪えば己も賊になる。

 やはり徒労に違いない。違いないが、恩は返さねばならん。

 これでイワン夫妻も安心だろう。



「あっ」



 よく見ると、焚き火でパンを炙っている。

 パン。私は好きだ。先の家でも馳走になった。故郷にはなかった。

 硬かったり、柔らかかったり、物によって千差万別だ。それが面白い。

 手を伸ばす。



「む?」



 ふと思う。

 この炙ったパン、食うは奪うに当たるだろうか。

 逡巡する。パンは食いたい。しかし賊には堕したくない。

 どうしたものか。





「……よし」





 食った。美味い。

 これは奪うには当たらん。漁った訳でもない。

 第一、食える物を食わんで放置するは冒涜だ。

 こいつを食うは賊を殺した者の義務とも言える。私は義務を果たした。



「美味い」



 このパンは硬くて、黒い。

 噛めば噛む程、麦の味がする。

 黒麦とかいうやつだろう。船旅中に教えてもらった。

 塩を少し振ってみる。これも悪くない。



「さて」



 十二人。

 穴を掘るは容易ではない。

 焼いて弔うにも、そこまで強い火は起こせんだろう。

 少し考えたが、良案が浮かばん。

 やはり掘るしかあるまい。素手だとかなり大変だ。




「ああ、疲れた」




 日が暮れた。

 随分でかい穴を掘った。

 やはり徒労だったと、残りのパンを食べる。



「うまいなあ、パン」



 一度パンの作り方を聞いたが、難しくって忘れた。

 パンを作れる人間は上等な人間に違いない。

 もしやこれも、賊の誰かが作ったのだろうか。

 なれば惜しいことをした。



「寝るか」



 次の街は大きいらしい。パンを沢山買おう。

 そのためには、何か売れるものを探さねばならん。

 また大蜥蜴が出ればいい、そう思いながら寝たら、夢に出てきた。

 蜥蜴と一緒に、パンを食った。美味かった気がする。

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