13.黒麦
賊に襲われる。
一人目は突きで殺した。
二人目は袈裟で殺した。
三人目は首を折って殺した。
四人目は逃げた。石を投げたら、頭が潰れた。
五人目は命乞いをした。慈悲だ、苦しまぬよう首を両断した。
先の町からさほど離れていない。
大恩ある夫妻が出くわす可能性もある。
他に仲間がいれば大変だ。念入りに仲間も殺しに行く。
四人目が逃げんとした方角、煙が立っている。
根城に違いない。そちらへ向かう。
それにしても賊の多い地域だ。取り締まって欲しい。
思った通り、他に賊が七名。火を囲んでいる。
不意打ちを食らわそうかとも思ったが、間違いがあったらかなわん。
一応問答してみる。
「賊か」
何も言わずに襲ってきた。
賊らしい。斬り殺していく。
賊の中に二人、華奢な女がいた。
仲間のようだが、間違いがあったらかなわん。
こいつも問答してみる。
「賊か」
「ひ、人質です」
人質らしい。刀を収めた。危なかった。
収めた途端、襲ってきた。
賊らしい。殴り殺した。
賊をいくら殺したとて、食える訳ではない。徒労だ。
それに如何な人からも奪わんと決めている。奪えば己も賊になる。
やはり徒労に違いない。違いないが、恩は返さねばならん。
これでイワン夫妻も安心だろう。
「あっ」
よく見ると、焚き火でパンを炙っている。
パン。私は好きだ。先の家でも馳走になった。故郷にはなかった。
硬かったり、柔らかかったり、物によって千差万別だ。それが面白い。
手を伸ばす。
「む?」
ふと思う。
この炙ったパン、食うは奪うに当たるだろうか。
逡巡する。パンは食いたい。しかし賊には堕したくない。
どうしたものか。
「……よし」
食った。美味い。
これは奪うには当たらん。漁った訳でもない。
第一、食える物を食わんで放置するは冒涜だ。
こいつを食うは賊を殺した者の義務とも言える。私は義務を果たした。
「美味い」
このパンは硬くて、黒い。
噛めば噛む程、麦の味がする。
黒麦とかいうやつだろう。船旅中に教えてもらった。
塩を少し振ってみる。これも悪くない。
「さて」
十二人。
穴を掘るは容易ではない。
焼いて弔うにも、そこまで強い火は起こせんだろう。
少し考えたが、良案が浮かばん。
やはり掘るしかあるまい。素手だとかなり大変だ。
「ああ、疲れた」
日が暮れた。
随分でかい穴を掘った。
やはり徒労だったと、残りのパンを食べる。
「うまいなあ、パン」
一度パンの作り方を聞いたが、難しくって忘れた。
パンを作れる人間は上等な人間に違いない。
もしやこれも、賊の誰かが作ったのだろうか。
なれば惜しいことをした。
「寝るか」
次の街は大きいらしい。パンを沢山買おう。
そのためには、何か売れるものを探さねばならん。
また大蜥蜴が出ればいい、そう思いながら寝たら、夢に出てきた。
蜥蜴と一緒に、パンを食った。美味かった気がする。




