12.鬼
「また来い。もてなそう」
「ツバクラさん、楽しかったわ。とても」
「つびゃきゅらあ」
塩を貰った。大蒜まで貰った。唐辛子まで貰った。
油も貰った。布地まで貰った。新たな袋まで貰った。
有り難い、有り難い、有り難い。
「恩を返せぬ、困る」
「構わん。いいからまた来い」
「必ず寄ってね」
「有り難い、有り難い。マラーニャ、これを」
「これは? 何を包んであるの?」
「大蜥蜴の角と、鱗だ。二束三文だろうが、売って足しにしてくれ」
「まあ、ありがとう」
「そうだ、道を教えてやる。ついてこい」
「有り難い、有り難い」
イワンに従い、西へ向かう。
四、五日歩けば、もっと大きな街があるという。
「ここまでだ。気を付けていけ」
「助かった。良い縁だった。では」
別れを告げる。
告げた所で、思い出す。
イワンは物知りだから、知ってるやもしれん。
「そうだ。鬼を見なかったか」
「鬼とはなんだ」
「鬼とは……鬼とは鬼だ、鬼としか言えん」
「それじゃわからん。特徴は」
「背が高く、赤黒い肌をした、快活な女だ。声がでかい。額に角が一本ある」
「亜人の類か? 見たことないが、そいつを探しているのか」
「ああ。友だ」
「異形の友人か。おもしろいもんだ」
「昔、殺し合いをした。引き分けて、大層仲良くなった。一年ほど、共に過ごした」
「……殺し合い?」
「悪い奴だった。人を攫って喰うのだ。しかし話してみると、なかなか楽しい奴だった」
「鬼は人を喰うのか」
「友になってから、もう喰わんと言った。そんならいいと、私も許した。それからは熊を喰っていた」
「……。そいつが、ここにいるのか。なんでまた」
「海を渡りたいと頻りに言っていた。熊にも飽きたようだから、とうとう渡った。面白そうだ、私も後から行く、そう約束したが、少し遅くなってしまった」
「そうか。出会って、二人で旅を続けるのか」
「いや。こちらで会ったら、また本気で死合おうと、そう約束している」
「……。友人じゃないのか?」
「大事な友だ。一番の友だ」
「なのに殺し合うのか」
「親友だから、殺し合わなければならんと思っている。お互いに」
「……わからん」
「死合って出来た縁だ。そういうものだ」
「……。友を殺した所でどうするんだ。食うわけでもなかろうに」
「ん?」
考えたこともなかった。
鬼は人ではない。なれば食える。
食えるが、友を食うのは、どうだろう。
第一、ほぼ人の形をしている。気乗りしない。
しかし奴は以前、散々人を喰っている。
こちらも鬼の一人や二人、食わねば公平ではない。
それに、血肉にしてやった方が、奴も喜ぼう。
「よし、食ってみよう」
「……。食うのか」
「ああ。食う」
私が負けたら、その時は喰ってもらおう。
土に還るもいいが、友の血肉になる方が楽しそうだ。
己が肉はどんな味だろう。美味ければいいのだが。
奴とて久々な人の肉だ、きっと嬉しかろう。
「良い気付きを得られた。重ね重ね感謝する。有難う」
「……まあいい。また会おう」
「達者で」
風来、女ひとり。
食いに喰われに、また歩く。
一区切




