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風来、女ひとり  作者: 頭いたお
一。
12/24

12.鬼

「また来い。もてなそう」


「ツバクラさん、楽しかったわ。とても」


「つびゃきゅらあ」



 塩を貰った。大蒜まで貰った。唐辛子まで貰った。

 油も貰った。布地まで貰った。新たな袋まで貰った。

 有り難い、有り難い、有り難い。



「恩を返せぬ、困る」


「構わん。いいからまた来い」


「必ず寄ってね」


「有り難い、有り難い。マラーニャ、これを」


「これは? 何を包んであるの?」


「大蜥蜴の角と、鱗だ。二束三文だろうが、売って足しにしてくれ」


「まあ、ありがとう」


「そうだ、道を教えてやる。ついてこい」


「有り難い、有り難い」



 イワンに従い、西へ向かう。

 四、五日歩けば、もっと大きな街があるという。



「ここまでだ。気を付けていけ」


「助かった。良い縁だった。では」



 別れを告げる。

 告げた所で、思い出す。

 イワンは物知りだから、知ってるやもしれん。



「そうだ。鬼を見なかったか」


「鬼とはなんだ」


「鬼とは……鬼とは鬼だ、鬼としか言えん」


「それじゃわからん。特徴は」


「背が高く、赤黒い肌をした、快活な女だ。声がでかい。額に角が一本ある」


「亜人の類か? 見たことないが、そいつを探しているのか」


「ああ。友だ」


「異形の友人か。おもしろいもんだ」


「昔、殺し合いをした。引き分けて、大層仲良くなった。一年ほど、共に過ごした」


「……殺し合い?」


「悪い奴だった。人を攫って喰うのだ。しかし話してみると、なかなか楽しい奴だった」


「鬼は人を喰うのか」


「友になってから、もう喰わんと言った。そんならいいと、私も許した。それからは熊を喰っていた」


「……。そいつが、ここにいるのか。なんでまた」


「海を渡りたいと頻りに言っていた。熊にも飽きたようだから、とうとう渡った。面白そうだ、私も後から行く、そう約束したが、少し遅くなってしまった」


「そうか。出会って、二人で旅を続けるのか」


「いや。こちらで会ったら、また本気で死合おうと、そう約束している」


「……。友人じゃないのか?」


「大事な友だ。一番の友だ」


「なのに殺し合うのか」


「親友だから、殺し合わなければならんと思っている。お互いに」


「……わからん」


「死合って出来た縁だ。そういうものだ」


「……。友を殺した所でどうするんだ。食うわけでもなかろうに」


「ん?」




 考えたこともなかった。

 鬼は人ではない。なれば食える。

 食えるが、友を食うのは、どうだろう。

 第一、ほぼ人の形をしている。気乗りしない。


 しかし奴は以前、散々人を喰っている。

 こちらも鬼の一人や二人、食わねば公平ではない。

 それに、血肉にしてやった方が、奴も喜ぼう。



「よし、食ってみよう」


「……。食うのか」


「ああ。食う」



 私が負けたら、その時は喰ってもらおう。

 土に還るもいいが、友の血肉になる方が楽しそうだ。

 己が肉はどんな味だろう。美味ければいいのだが。

 奴とて久々な人の肉だ、きっと嬉しかろう。



「良い気付きを得られた。重ね重ね感謝する。有難う」


「……まあいい。また会おう」


「達者で」




 風来、女ひとり。

 食いに喰われに、また歩く。


一区切

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